出合いは童貞らしく
「おーい、下田!今回こそ、飲みに行くぞ」
「え、でも」
「でもじゃねーよ。お前、今日は空いてるって言ってたじゃねーか」
うっやってしまった。一昨日、大山先輩と飲みに行くのが面倒だったから先延ばしにしてしまった。
「あ、はい。今日なら……」
「お、ついにか。お前、何回誘っても来なかったからなー。よし、じゃあ今日はいいところ行くか」
「いいところってなんですか」
「まー行ったらわかるよ。とりあえずついてこい」
「は、はい」
「ここだ」
「えっここって、風俗じゃ」
「そうだ、どうせお前ヤッたことないだろ、もう20過ぎなんだから、ここですましとけ」
「えっでも」
ぐいっと引っ張られ店に連れて行かれる。
「ここに座っておけ」
「はっはい」
はーこんなに急に……初めては彼女って決めていたのに。こんなのあんまりだ。
「2時間コースで」
先輩が勝手にいろいろ進めている。俺は震えながらツイッターを見る。全然集中できない。
「お客様、こちらへ」
俺はとぼとぼと歩き、色々説明を受ける。何言ってるか頭に入ってこない。
「楽しんでこいよー」
先輩が言ってる。
個室の前に着き、
「こちらです。では」
「あっありがとうございます」
僕は、重い手をドアノブに掛ける。
ガチャ、
「えっ」
ベッドの上には、とてもかわいい女性が座っていた
嘘だろ、もっとこうゆうのって化け物がくるんじゃないのか。こんなかわいいなんて聞いてないんだけど!!
「こんにちは」
落ち着いた声でそう言われた。
「こ、こ、こんにちは」
「まーとりあえず、座って」
「あ、はい」
僕はカチカチな体のままたどたどしく座った。
「何歳?」
「え?あっ年齢ですか?2、24です。」
「おー、同い年じゃん。名前は?」
「しっ下田太輔です。」
「へー、私は若草美怜。よろしくね」
「よっよろしくお願いします」
「じゃあまず、これでも飲んで落ち着いて」
彼女はお茶を出してきた
温かいお茶だった。
僕は、改めて顔を見る。やはり、かわいい。こんなかわいい子とできるなんて。想像しただけでも、あそこが元気になりそうだ。でも、でも、やっぱり
「あ、あの僕やっぱ帰ります」
「えっなんで?私気に障るようなことしちゃった?」
「そ、そうじゃなくて。僕初めては恋人とがいいので。 今日は、その先輩に連れてこられただけなんで。こんなお茶とか出して頂いて申し訳ないのですが」
「ふふっじゃ、じゃあ、せっかく2時間コースなんだしもう少し喋ろうよ」
「えっ、まー話すだけなら」
「そーと決まればこれからは敬語禁止ね。同い年なんだし」
「わ、わかりましっ、あ、わかった」
「じゃーそーだなーなんの仕事してんの?」
「IT系の仕事をちょっと」
「へー。で、その先輩に無理やり連れて来られたってことね」
「こんな僕みたいな人にかまってくれから、悪い人じゃないんだけどね」
「ふふっ、下田君も大変だね」
彼女はあどけなく笑う彼女を見てると、緊張が解けてくる。落ち着いて見ても、本当にかわいい。黒髪ショートでモデル体型だ。
「私もこの仕事の前はファッション系の仕事してて、ほんと大変だったわー」
「あっそーなんだ。上下関係厳しそう」
「ほんとそれ。先輩がねー……
いつのまにか、僕らは友達のように話していた。
そんな会話をずっと続けていたら、いつの間にかお茶が冷たくなっていた。
「あっごめん。ホントに何もしないまま2時間経っちゃった」
「いやいや。こっちから望んだことだから。逆にごめん」
「あっあのさ。ライン交換しない?」
「えっ」
まさかの言葉に驚いた。
「でも、そーゆうのってだめなんじゃないの?」
「そーだけど、下田君面白いから、プライベートでも遊べたらなーなんて思ったりして。だめかな?」
「いやいや、そんなことない。逆にこっちから交換したいぐらい。」
「じゃ、しよーよ」
「うん」
「どうだ、たのしかったか?」
大山先輩が言った
「あの、ごめんなさい。せっかく、先輩がおごってくれたのに、ビビってできませんでした」
「な、なんだとー!」
「まーそれもお前らしいな」
「申し訳ありません」
「大丈夫だ。また連れてってやるから」
「えっ、それはちょっと」
「ガハハー」
先輩は大声で笑った。
家に帰りスーツを脱ぎ捨てスマホに目を向けるとラインが来ていた。ん?珍しいな。公式アカウントか?
見てみると、
「来週の日曜遊びませんか?」
うそっ。若草さんからだ。
ほんとに来るとは思わなかった。ただの形式的なやつだと思っていたから。
ていうか、女子から、お誘いがくるなんて人生初めてだった。
実際、若草さんと話していると楽しかった。
だから、僕は、手を震わせながら
「いいよ」
と送った。