MORAL
早速、ISDPCのメンバーが呼び出され会議が行われた。
ことの端末が話され、議論が今後の方針に移った。ヴァルやエフゲニーはロシア人として祖国に裏切られたような気持ちに浸っていた。議論にはさほど参加しなかった。議論はまず総士の発言から始まった。
「キメラウィルスに関する管理体制の評価という名目でのWHO査察と大統領令による全面協力の方針が出ることで、グレゴリーへの接触とグレゴリーのいる国立研究所への立ち入りは合法的に行える。しかし、ここから何をするかだ。」
まず総士は作戦の目的を羅列した。1つ目はグレゴリーとエスパー達の関係を調べること。2つ目はキメラをはじめ中国との共同研究で得られたウィルスとそのワクチンについて情報提供を受けること。
最初のものについては、グレゴリーが敵なのか味方なのかを判別することが重要で、敵で有る場合、その場での戦闘も考え得る。またその場合、研究室内にある様々ウィルスを研究所外に漏らさないような戦い方が必要となる。二つ目については、グレゴリーが敵だった場合かなり難しい為、武力行使となる可能性がある。いずれにしろ、グレゴリーが敵だった場合、その場で処理するにしろ、後日改めるにしろ、かなり不利な状況で戦う羽目になる。そして、敵はエスパーである可能性が高い。グレゴリー自身はエスパーでないと思われるが、その周りはわからない。
だからこそ、奈意斗はここに同行する必要があった。また、内部からのハッキングによるデータ取得を目的としてヴァル、サイコメトリーによる情報収集が必要な為にユナが同行し、ロシア軍からの付き人としてドーベルマンが同行することになった。
グレゴリーとの接見と並行して、もう一つの準備があった。それはリンザーから指摘した。
「今回の件もそうだが、我々は敵の情報が少なすぎる。特にアメリカに渡ってからの情報は無いに等しい。アメリカに対し査察団を送る名目で情報収集しとくことも必要だろう。」
リンザーがそう言った。ドーベルマンもその意見に同調した。しかし問題は米大使館への根回しだった。この点をうまく交渉できる人材は、ロシア駐在のWHOにはいなかった。そこでアメリアがその任についた。総士もISDPCのリーダとして帯同する。
ちなみにロシア軍はホテルでの惨劇への対応で忙しい最中だったが、特にアメリカの要人に被害者が出た手前、事態の説明を早急に求められていた。当然、隠蔽工作が必要であった。この点は大統領自らが行なっていた。ここについても、解決しておく必要があった。
アメリカがエスパーとつながっていることも考えなければならないが、ロシア自体についても同じだった。実際にミホは奈意斗の居場所を特定した以上、どこかにスパイがいるかもしれない、そしてそれはあの日奈意斗達がロシアに来ることを知っていた大統領と国防長官、そしてホテル警備の任にあっていた一部の軍高官だった。エフゲニーはそれについて、調べを進めることにした。
「よし、みんな初の任務だ、生きて帰ろう」
総士はそう言ってみんなを鼓舞した。この時、凱や麻由香については触れなかった。彼はこの時、自分の中に彼らを思う気持ちが全くなかったことに気がついていなかった。彼は仲間というものをその程度に考えていたのだ。
それから一週間後、
奈意斗は研究所までの道のりをドーベルマンと過ごした。ドーベルマンの軍用車は、最初になった時同様快適だった。ドーベルマンは、長い沈黙の後少しだけ喋った。
「君は、けしてただの人殺しでは無い。」
奈意斗は少し笑った。この表現では人殺しである点は否定されていないからだ。でも、ドーベルマンが励まそうとしたことはなんとか感じた。不思議だった、相手の気遣いに気づいて嬉しくなるなんて初めてだった。
しかし、ドーベルマンとしては奈意斗が人殺しという点が否定できるわけではなかった。彼自身も麻由香と同じように、奈意斗の本性が殺人者だと思っていたのだ。だが、ただ人を殺すことに快楽を覚えているわけではないことが最近わかっていた。
「サイコキネシスは普通、意識のある人間には使えない。しかし君はあの時意識が朦朧としていたとはいえ、まだ自分の意思で動いていたハリーにサイコキネシスを使えた。」
ドーベルマンに言われるまで気づいていなかったが、たしかにそうだった。
「しかし、前例として強い怒りのもとで、他者の意識を抑え付け、サイコキネシスを使った例がある。そのトリガーは怒りだった。わかるね、君は大切な人を殺されて怒ったのだ。理不尽に対し正当な怒りをぶつけたんだ。けしてただ人を殺したかったわけではない。」
ドーベルマンはそう言ったが、奈意斗の気持ちは複雑だった。自分はあの時、人を殺したかったのかもしれない、その疑念は結局今となってはわからない。ただ信じたかった。あの時サエは奈意斗がここにいると思ったまま死んだ。少なくともあの瞬間、ここにいたと信じたかった。
別の車両にはユナとヴァルが乗っていた。2人は会話に困っていた。同じくらいの歳ではあるのだが、考えてみればほとんど初対面で、かつお互いに外国人であった。しかも、活発なユナに対しヴァルはオタク気質な性格だった。
ヴァルが話を始めた。
「好きな食べ物は何?」
ユナは驚きすぎて逆に何も言えなくなった。ヴァルはそんなユナを見て逆に困ってしまった。しばらくオタオタした後、ヴァルは再度トライした。
「君は、」
と言ったのと同時に、ユナが喋り出した。
「ラーメン、それからチャーハン、後マーボー豆腐」
ユナの方も沈黙に耐えきれなくなって、とりあえず答えたつもりだった、あまりにハキハキと強めに答えた為、ヴァルも驚いて腰が浮いたほどだ。
2人はお互いに間が合わないのだと諦めた。
諦めたら少し楽な気持ちになって、ヴァルは話し始めた。
「君はどうしてドーベルマンの元に来たんだい」
ユナはちょっと救われた。最初からそういう話題を振って欲しかったと思うのだった。
「私は記憶がないの」
ユナはアメリカとロシアが日本で偶発的に戦端を開いた後の町で見つかった。身よりも無く行き場もなく、そのままある日本人夫妻に引き取られて過ごした。その意味で、彼女は日本やロシアに感謝をしていたと同時に、自分が役に立てることはやろうという心持ちでいた。
自分の話が終わるとヴァルにも聞いた。
「僕はロシア人でロシアに忠誠を誓った、ロシアの為なら死ねるよ、何だってできる。そう思ってた。」
そう思ってた、が過去形な意味をユナは理解していた。
「やっぱりショックなの?」
「この国は、いつだって世界の悪者だった。でも僕はこの国が負けたからそう言われていると思ったんだ。この国にも素敵な場所は沢山ある、素晴らしい人間は沢山いる、だから次は勝てるような強い国になれば、この国が強いとわかれば、世界はきっと見る目を変えるって思っていたんだ。」
ヴァルは目をキラキラさせながら語っていた、しかし話を一旦終えたヴァルはそのまま俯いた。
「でも、それはもうできない。この国は間違った。例えエスパーから世界が救われても、この国はまた嫌悪の対象になるだろう。大量殺人の国として後世に語り継がれるんだ。そんな歴史なら無いほうがいいと、ちょっと思ってるよ」
それを聞いてユナは恐ろしくなった。自暴自棄のようなヴァルを見て彼が任務に迷っていることを悟ったのだ。何も言ってあげられなかった。祖国に落胆し、生きる糧を失った気持など想像もできないからだ。
もしかしたらサイコメトリーで読み取れるかもしれないが、それは嫌だった。そんな気持ちわかりたくもなかった。
ヴァルは、自分の言ったとんでもないことに気づき、取り繕う為に話し出した。
「こんど、ラーメン食べたい。日本の料理は初めてだ」
ユナは精一杯元気に頷いた、ユナ自身ラーメンが日本の料理かどうか曖昧だった。
アメリアと総士も別の戦いが待っていた。現在、国連職員、特にWHOは入国許可などいらないわけだが、それでもアメリカ宛に現在の状況を伝えて協力してもらうことが必要かと思った。今回の目的がエスパーの情報提供の依頼なら国家機密レベルの話を提供しようと頼むわけだ。以前会議て出てきた資料によればアメリカのNASAに一般には知られていない研究施設で実験が行われていたようだ。
そこに踏み込むにはアメリカと直接交渉する機会が必要だった。
しかし、それがうまく行く為の交渉材料がなかった。アメリカが許可するわけがない。アメリアは、もし少しでも望みがあるとしたら、キメラⅡの脅威ではないかと思っていた。
2人は奈意斗達が僻地にあるロシア国立科学研究所に向かったあとも、モスクワ近郊に残り大使館宛の説明文章を作っていた。
「そもそも、我々は政治家ではない。こういう仕事ができる人間もISDPCに1人ぐらい入れて欲しかったな。」
総士はいつの間にか愚痴を言っていた。
「多分、死んじゃったあの子がその役目だったのよね」
アメリアは凱のことを言っていた。操作は凱のことを思い出すと未だに嫌気持ちになる。麻由香のことを思い出せば尚更だった。正直1人で抱えきれないような苦しみを持っていた。
「なあ、アメリア」
総士はアメリアに声をかけようとした、しかしアメリアはそれを何となくなく避けるように、席を立った。
コーヒーを入れている。総士は言いかけたことを言わなかった。彼は無視されたのだ。無視されたことを認めることはプライドが許さなかった。何事もなかったことにする。それが彼の流儀だった。
アメリアは別に特別な意味があって無視したわけではなかった。ただ、今余計なことを言われるのは迷惑だった、時間はいくらあっても足りない。総士だからではなく誰とでも話したくないのだ。
大使館へ向かう人間はISDPCメンバー2人とその護衛という名目のリンザー、ロシア第3部隊のレビュリンとウラジルだ。第3部隊の2人は細かい事情は全く聞いていない。彼ら2人は不運と言えた、後からアメリアはそう思っていた。
「今回の殺戮に対するアメリカの怒りはかなりのものだ、大統領や国防長官も苦労している。向かうからすれば、大義名分を得れるかもしれないチャンスだからな。」
大使館を前にしてリンザーが言った。それはアメリアにもわかっていた。一方でロシア軍人やその他の要人も殺され、わかってるだけでも67名が殺された惨劇も、それだけで戦争になるとも思えなかった。ロシアはこの惨劇が所属不明のテロ組織によるものと主張をしていた。アメリカはロシアの管理、防衛体制の甘さを指摘して、責任を求めてきたことは確かだが、旧来は対テロの急先鋒であったはずこの国がいくら帝国化したとは言え、ロシアだけを表立って批判はできなかった。
アメリアの頭には既に、この所属不明のテロリストをうまく交渉の材料に使うことも考えていた。いずれにせよ、ISDPCはロシアの僻地と中央、それぞれでそれぞれの戦いをしていた。
ミホはシャワールームから裸で出てきた。成人の女性であり、モデルでもおかしくないほど美しい肢体を持ちながら、男性の前でもお構いなしにそれを披露する。彼女は子どものように無垢だった。
そんな姿を見ていたのは、エスパーの1人エリック・エンビードだった。エリックは基本的にロシアで活動することが仕事だった。今回ただきょうみがなすままにふらっと現れた彼女を家に招き入れて、シャワーを貸した。別に驚くことじゃないが血の匂いが酷かった。
エリックはなるべくミホを見ない。少しでも変な気を起こせば殺されるとわかっていた。しかしミホの方はお構いなしだった。
「エリック、おんぶ」
服を着る前にミホが抱きついてきた。エリックは慌てふためきながら、ミホを振りほどき、彼女の為の服を投げつけた。
「何しにきたんだ」
エリックは自分の理性を保つために、少し怒り混じりに聞いた。
「うーん、奈意斗に会うために来たの」
「それは知ってる。何で会う必要があったら。」
ミホは少し考えて、さっきまでの明るい声が嘘のように低いトーンで喋った。
「私の心はあの子を知ってるの、私の私じゃない私が私に言うの」
エリックは彼女が何を言ってるかわからないが、そのまま話を変えた。ミホのロシアにおける世話役だったエリックはミホの好きなものを知っていた。
「ミホ、久々にリンゴでも食べよう」
ミホは嬉しそうに頷いた。
研究所に着くと奈意斗、ユナ、ドーベルマン、ヴァルは、研究所の事務担当という男、ケビン・カーンに迎えられた。研究所への立入査察はWHOからの依頼でロシアが許可した形だ。許可が降りてから短期間での可能性査察に普通であればかなりの抵抗があって然るべきだが、今のところバンデットは親切だった。
奈意斗達はまず、ケビン・カーンと複数人の研究者にからこの研究所自体の説明などを受けた。
今回の査察はあくまでキメラウィルスに関するものだから、主要研究者と所長のグレゴリへの面談、研究施設の内覧を行うことだった。表立ってわ。
本来の目的はユナのサイコメトリーによりグレゴリの本性を見抜くことだった。
ケビン・カーンは一同をキメラウィルス研究棟に案内した。キメラウィルス研究の主任となるラウル・リードが研究棟のドアを開けた。
「どうもどうも、死のウィルスの棲み家へ」
独特の言い回しと、あまりに高いテンションはなぜなのかわからないが、研究者らしいと言えばそうである。
リードはキメラウィルスの説明をしながら、研究室を次々と案内して行った。
キメラウィルスについては現在も動物実験を行なっているという。キメラウィルスは感染後潜伏期間は約1日で、その間も空気感染により周囲な広まる。
発症後すぐに高熱を発し、体に発疹ができ始める。赤い発疹はだんだんと身体中に広がり出血を伴うようになる。またその痒みから身体中を掻き毟り、血だらけになる人も多かった。感染後約4日で身体中を発疹が多い、5日目には高熱のため死へと至る。
ワクチンはグレゴリー博士の作ったアンチキメラのみだ。このワクチンによりロシア経済は世界で最も早く復興を遂げた。
現在行われている実験は生物兵器への応用ではなく、あくまでウィルスの産業利用を目的としているという点は、奈意斗達を驚かせた。リードの説明によればウィルスの大きな特徴は2つある。1つは免疫タンパク質をコードする遺伝子から生成されるRNAを破壊することで極端に人間の免疫タンパク質を減らすことができたこと、2つ目は自身のRNAの一部を遺伝子に転写するレトロウイルスとしての性質も持ち合わせていたこと。そして埋め込まれた遺伝子の働きはよくわかっていないことを話していた。少なくともレトロウィルスとしての性質は、それ単体で人間の生命に影響を与えていない。人工的に作られたことがこの構造だけ見てもわかるそうだ。しかし、このウィルスの性能を使い、例えば免疫機能ではなくエイズなどの遺伝子の発病を抑えるなど、医学的にはかなり活用が見込める。
リードは興奮気味に話を終えた。説明の最中ずっと彼は子どものようにはしゃいでいた。案内人だというのに幼稚園に来た子どものようだとユナは思っていた。
キメラウィルスを屋外に出さないため、研究棟自体が地下にあり、かつ非常時には完全閉鎖と焼却システムが働くという。
最新鋭の設備ばかりだが、あまりの閉塞感がユナを襲っていた。ユナがある部屋を見つけた。ロシア語は読めなかったが何かその部屋から感じとり近づいてみた。
小さなのぞき窓に目を近づけて、中を覗くと、そこには真っ白の部屋があったがそれ以外何もなく、人の姿は見えなかった。それでも中を覗き見回していると、突然に青い眼が現れ、逆に覗き込んできた。ユナは驚いて声を上げてしまった、そのまま仰け反って後ろに倒れそうになるのを、カーンが受け止めた。彼女はその瞬間にカーンを見た。カーンは微笑んでいた、微笑んでいた理由はわからないがその微笑みを不気味にしか感じられなかった。ユナはなんとか自分を取り繕って、笑顔を返した。彼女の感情を引き立てるのは、カーンの不気味さよりも青い眼だった。
もう一度彼女は窓の近づいて覗いた、するとそこには小さな金髪の女の子がいた、彼女は青い眼をしていた。
そこに、嬉しそうにスキップをしながら近づいて来たのはリードだった、
「彼女の名、ブルーアイズ、青眼というのです。ブルーアイズはキメラウィルス感染者ですが、抗体を持っています。天然のアンチキメラです」
彼の話では、アンチキメラはもともと彼女のような被験体の抗体タンパク質がヒントを得ているという。奈意斗は疑問に思っていた。ロシアでは感染者は殆ど出ていない、それは水際対策の成功があったという。しかし目の前にいる子は抗体を持った感染者だ、抗体を持った感染者がそんなにピンポイントに見つかるのだろうか。もしくは各国から集めてきたのか、どうやって抗体を持っていて発症しない人間を見つけられたのか、あの世界の混乱の中で。
ユナはブルーアイズをもう一度見た。ブルーアイズは部屋の中で飛び跳ねて遊んでいた。感染者とは思えないほどの元気さだ。彼女は保菌者であるため接触は許されない、だがユナは彼女を抱きしめたい気持ちだった。可哀想だと思う、こんなところに閉じ込められ、実験材料にされているなんてかわいそうだ。今や秩序があるわけではないが、彼は非人道的だとユナは思うのだ。ブルーアイズはユナに気付いた、歩きながらユナに近づいてきた、小さな窓越しに二人は見つめ合った。ブルーアイズは窓越しに指をかざしてきた、ユナも同じように指を伸ばした。
ブルーアイズは少し笑った。
「非人道的か?」
カーンが後ろから話しかけてきた。
「我々科学者は狂気の中にいる。彼女は我々の犠牲者であることは確かに認める。」
「認めたら何になるの、すでにウィルス抗体は回収して、ウィルスを死滅させることもできるのに、あの子は未だに保菌者扱いなの?治してあげられるのに。」
口論がエスカレートしそうになったのをドーベルマンが止めた。
奈意斗はユナの手を引いてカーンから引き離した。
「ユナ、ここで怪しまれてはダメだ、あまり喧嘩腰にならない方がいいよ。」
ユナは、奈意斗が一切少女に触れないことに苛立ちを覚えたが、言っていることが正しいことはわかっていた。だから大人しく従った。
ユナは先に進む中で、先ほど見たイメージを誰かに伝えたかった。
さっき驚いて仰け反ったとき、カーンに触った。あの時確かに恐怖を感じた。最初はいきなり覗き込んできたブルーアイズに驚いただけだった。しかし、驚いた時に脊髄反射で能力が発揮された。その手でカーンを触ったのだ、能力が発動し、サイコメトリーご開始された。サイコメトリーはカーンの身体に流れる思念を強く感じ取った。そこには、さまざまな実験室の映像があった。ブルーアイズもいた。それだけじゃない、たくさんの科学者がいた、そこで感じたものは恨み、そして支配するという目的、自分が平和でありたいという強い意志だった。カーンは自分だけの平和を願っていた、自分の心の平穏が欲しかった。彼の残留思念はそれを示していた。人への恨み、自分の能力に対する自信、そしてあのミホと同じ感覚、理解ができない感覚だった。
そう、つまりカーンはエスパーだった。