表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

14、死神

14、死神



永遠の愛を誓う言葉に『死が二人を別つまで』と言うが…………


生も死もないこの世界で、どうやって別れればいいんだ?


「トパーズ!?それを早く言わんかい!」


嫌な予感がした。トパーズが茜の魂なら…………莉奈が危ない!


すると、クォーツが言った。


「ここは俺が何とかする。お前は行け」

「逃がしてくれるんか?さすが俺やな」

「違う。どうせガーネットからは逃れられない。せめてお前だけでも……今は自由でいればいい」


そんな死んだ目をして言わないでくれ。茜を今でも愛しているというクォーツの目は、とても絶望的な目をしていた。それが自分自身だと思うと複雑な気持ちになった。


しかし、すぐにガーネットは俺の目の前に戻って来た。


「どこへ行くつもり?」

「いや、その……回復がてら散歩でも……」

「回復なんていらないでしょ?」


は………………?


すると、突然ぶん殴られた。


「いっっっ!って~な!何すんねん!」

「回復する必要なんか無いわ。これから死ぬまで私に痛めつけられるんだから」


その笑顔が恐ろしかった。その隣で無表情のクォーツを見て、さらに背筋が凍るようにゾッとした。


感情を無くし、ここまでの顔になるまで…………?


「空の青さ知るは魂の光、海の碧さ知るは深き闇の灯、地の蒼さ知るは万象の癒し。その力を持って癒したまえ」


回復の呪文を唱えながら、莉奈に回復呪文を教えた時の事を思い出していた。何故かその時、自分の回復するイメージではなく、思い浮かべたのは莉奈の笑顔だった。


「それならこっちも魔力の続く限り耐えたるわ」


こんな事なら、僅な時間でもあの時莉奈の手を取って置けば良かった。もう二度と会う事もな………………


ズドーーーーン!!


「何!?」

「何や?」


何か大きな塊が空から落ちて来た。砂煙から出て来たのは……


巨大なネズミ!?


「ラル!助けに来たよ!」


に乗った莉奈!?


「お前なんでこんな所に!?」


このテネブラエはSランク以上で入る事を許される。


「これが本物のチートだよ!」

「おお~!どんな手使ったか知らんがこれがホンマのチートか!」

「え?違う違う!これがチート」


は…………?


莉奈は懸命に巨大ネズミを指差していた。


「こちら、ジャンボアルマジロのチートちゃん」

「いや、名前にチートってつけたらアカンやろ!」

「チートちゃん、こう見えて何気にSランクなんだよ?」


何のSランクだ?重量?重量か?


「知ってました?アルマジロって完全に丸まらない種類の方が多いんですよ?」

「そんなん知らんがな!」

「そこは、なんでやねん!でしょ?」


ここでダメだしか?感動の再会は?あの感動はどこへ行った?


「何だか使えない関西弁」

「使えない言うな!この関西弁は、莉奈が関西弁が嫌いやから……これはお前に嫌われる努力や!」

「はぁ?嫌われる努力?」


莉奈とそんなやり取りをしていると、ガーネットが一気に熱を帯びて、赤い目を光らせた。さらに触手が何本も伸びて、化け物のような姿になった。


「その……その……嫌われる努力は……私だけの……私だけに…………もうダメ……もう…………その女は生かしておけない!!」


何故かガーネットに火がついた。


炎上、炎上、大炎上。俺には全くこの女の着火点がわからない。


俺は化け物になったガーネットを攻撃しようとすると、クォーツにその攻撃を防がれた。


「お前……何考えてんねん!お前がそいつを庇う義理なん無いやろ?」

「俺は……茜を……アイ……シ……テル……」

「そんな目で愛してるって言うな!」


クォーツはガーネットの絡み付いた触手にその体を焼かれていた。


「莉奈……俺、今決めたわ。俺……死神になる」

「え?海賊王になる?」

「この状況でそんなボケいらんわ」


俺と莉奈はガーネットの攻撃を避けながら噛み合わない話をした。


「俺が悠希の代わりに死神になる」

「ラル!?何言ってるの?」

「そうすれば智樹の魂も取り戻して、悠希と共に現実世界へ帰れるかもしれん」


この兄弟三人全員、無事に現実世界に返してやりたい。そう思った。俺のように魂が分裂し、クォーツのように、こんな目にならないように……。


ヘマタイトはこう言っていた。


死神になるには、まずは殺せるはずの者を殺せるか。要するに、冒険者は冒険者同士は殺せない。しかし、村人やこの世界の人間なら殺す事ができる。それをやってのけた者が、やがて死神となってゆく。


そんなもの、ただの殺人鬼だ。


「元々死んだ人間を殺して何の問題がある?この世界では、現実世界の法では裁けぬ。奴らは自らの足でこの世界に来たのだから」


そうかもしれない。そうかもしれないが……悠希のように、甦りの水『purus aqua』を求める者も少なくはない。それは、また生きたいという者の願いだ。


ここは元々俺が始めた世界だ。俺が死神として終わらせるのが俺の役目だと思う。それが、俺がここにいる目的で、理由で、存在意義だ。そう思えた。


俺は今は冒険者。つまり、ガーネットは殺せる者だ。ここでガーネットを殺せば……


俺は死神になる。


「最初から決めてんねん。もし、俺が死神になる時は…………一番に殺すのは、お前やって」

「緑、あなたには死神と言う名前がとても相応しいわ。でもね?一番に殺されるのは御免だわ。私、そんなザコキャラじゃないのよ?」


俺が持っていた蒼の剣でガーネットを突き刺そうとすると…………


その体を貫いたのはガーネットでは無く、クォーツだった。


「お前……どうして?どうして最後までこいつを庇うんや?」

「庇う?それは違う。俺は茜に殺されたくはない」


それで……俺に、俺自身に殺されて満足か?


すると、クォーツは俺に少し口元を上げて、最後の一言を残した。


「ああ、満足だ。あいつの前で死んでやりたかった。これで、俺は自由だ」


そう言って、クォーツは跡形もなく消えた。


俺は現実世界の自分を思い出した。茜に神経をすり減らし、ひどく痩せ細り、毎日死にたいと思っていた。


「クォーツ!クォーツ!!」


消えたクォーツを探して、ガーネットが長い髪をかきむしり、ひどく取り乱していた。


「よくもクォーツを……エメラルド!」

「ラル!これを!」


莉奈がとっさに盾をよこして来た。その盾を構え、ガーネットの攻撃を受けると、お互いに強い衝撃を受けた。


「痛っ!なんやこの盾は?全然攻撃防げてないやん!」

「これ?『痛み分けの盾』だよ?リーちゃんとヌーベスで買ったの~!」


いや、観光でこんなの買う?普通盾買う?お土産に盾買われたら複雑な気分にならない?なりませんかね?


「喧嘩両成敗。衝撃を半分ずつに分けて、お互いに同じだけ攻撃受けるの。ウケる~!」


やめろ。ここでダジャレはマジでやめてくれ!


俺は弱ったガーネットの胸に、剣をつき立てた。


「ごめんな。茜。もっと早くこうするべきだった。俺がお前から逃げず、ちゃんと向き合っていれば…………」

「今さら謝るの?バカね。私はずっと待っていたのよ?この世界で、悪夢のようなこの世界で……あなたに殺されて死ねる時を……ずっと……ずっと待っていたのよ?」


そう言ってガーネットは、その体を突き立てた剣にその胸を差し出した。ガーネットがこっちに近づくほど、突き立てた剣はその体に食い込んで行った。


「だって……私……ずっと……あなたの一番が……欲しかったんですもの……」


すると、ガーネットの体が砂のように崩れ落ちていった。ガーネットは笑顔だった。


「緑……愛し……て……る……」


最後の一粒になるまで、ガーネットは笑顔だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ