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美味しいからじゃないかな
「なんかこれ食べ物っぽいよ」
「言われてみれば美味しそうかもです」
卓上には、乳白色の臓器のようなものが置いてあった。
巨大な魚か何かの白子のように見えなくもない。
「鳥の肝臓っぽいね」
「エスちゃんもたまに鳥捌きますけど、こんな肝臓見たことないですよ」
「ちょっと特殊なものだね。飼育してる鳥に無理やり餌を食べさせて肝臓を太らせたみたい」
「呪術か宗教的なアレなんでしょうか……」
「美味しいからじゃないかな」
「手間かかりすぎじゃないです?」
「手間に見合う味なんじゃない」
「まあ、そんなに言うなら食べてみましょう。焼けばいいんですかね」
「内臓だし火は通したほうがいいと思う」
「じゃあちょっと焼いてきます」
ウラジミールが皿とナイフとフォークを卓上に並べ終わると、キッチンの方から香ばしい匂いが漂ってきた。
ほとんど間を置かずに、空のフライパンを持ったエストラゴンがキッチンから現れる。
「あれ。あのお肉どこ行っちゃったの」
「内臓だって言うから念入りに焼いたら、溶けて無くなっちゃいました」