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芸術家の考えることはわけ分かんないし
机の上には、一枚の絵のようなものが乗っていた。
左右対称の、インクをぶちまけたような図案。
「絵画なんでしょうかこれは」
「かもね。芸術家の考えることはわけ分かんないし」
「ウラちゃんは何の絵に見えます?」
「蝶々かな。エスちゃんは?」
「頭を鉈で割られた犬に見えます」
「病んでるね……」
「魔法使いですから」
「分析してみようか。えい」
ウラジミールが軽く手をかざすと、絵が淡く輝く。
「……医療器具だって」
「医療器具?」
「うん」
「どこを治療するんですかこれで」
「えーっと……頭の病気?脳みそ?みたい」
「あ、あれじゃないですか。デスマスクみたいな」
「魚拓みたいな?」
「そんな感じです。症例としてかち割った脳みそを記録した紙なんじゃないですかね」
「じゃあ、エスちゃん大正解ってことかな?」
「このエスちゃんに間違いはあり得ませんよ」