画材じゃないでしょうか
「これは何」
ウラジミールが聞く。
エストラゴンの手には、小さなポーチ。
開くと、中には色々な小道具が詰まっていた。
「画材じゃないでしょうか」
親指くらいの大きさの円柱を引っ張ると、片側がきゅぽん、と抜けて中から赤い絵の具の塊のようなものが出てきた。
他にも小瓶のようなものに入ったクリーム状のなにか、固まった絵の具みたいなもの、粉みたいなもの、金属製の実験器具みたいなもの。
「謎が深まるね」
「うーん……この金属製のやつは何に使うんでしょうか」
「僕たちが素材の動物の目玉をくり抜く時の道具に似てるね」
「でもそれにしては強度不足な気も……角が丸まってるし、皮膚を傷つけないように出来ている気がします」
「もしかして、人に使うのかな」
「人に?」
「ほら、南の方に居るじゃん。旱魃になると顔に絵を描いて雨乞いする人達」
「ああ、なるほど。儀礼用の道具なのかもしれませんね」
「まさか日常こんなので顔に絵を描くほど暇でもないだろうし」
「でも、狩猟民族の人たちとか顔に模様描いてませんか」
「あれは刺青だからなあ。毎朝描いて落としてを繰り返すのは流石に」
「気が滅入りそうですねぇ」