スライムみたいですね、これ
「スライムみたいですね、これ」
エストラゴンが、森で拾ってきた灰色の何かを指でつつきながら言った。
成人男性の手のひらくらいの大きさで、弾力がある感触はスライムのそれに似ている。
ウラジミールは少し距離を取りながら、
「触らない方がいいと思うな……」
「大丈夫ですよ多分。そんなに危ないものじゃなさそうだし……うぇ、ひどいにおい」
「なんなのかな、これ。自然にできたものじゃないよね」
「また例の『漂着物』だと思いますけどねー」
「分析魔法でもかけてみる?」
「みますか。ウラちゃんよろしくお願いします」
「じゃあ、えい」
ウラジミールが短く呪文を唱えると、そのスライムもどきが淡く発光する。
「原材料は……植物だね。芋?」
「芋?何をどうしたらお芋がこんなんになるんですか。ていうか、え?食品?」
「どうなんだろう。構成材質はほとんど水分だね。熱量補給は期待薄かな。作り方は、えーと……原材料の芋科の地下茎を粉末状にして、水を入れたあとにこねる」
「ほうほう。パンみたいな感じですね」
「その後、灰を水に溶かしたものを混ぜて煮る」
「え、灰?」
「うーん、食用なのかは怪しいな……」
「手順が複雑すぎるし得られるエネルギーに見合ってない気がしますね」
「道具に加工するには強度が足りないし」
「呪術的な意味合いがあったのかもしれませんね。あとは……ぷるぷるでひんやりしてるから、夜道で人を驚かせるには便利かも?」
「今度、森に侵入者が居たら試してみようか」