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ニクスの憂鬱

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 ――暗闇でうずくまる影が一つ、あった。


 腕がなくなり、それに加えて思うように体が動かない。六腕で均整が獲れていたバランスが崩れてしまったからだ。何をするにも身体が震え、痛みで思わず声が出る。


 撤退時にニクスがアージスに抑えられた瞬間、奴の体から何か黒い物体が飛び出したのを見た。カビの分身でも最後っ屁に残したのだろう。が、追ってはこなかったことからあのカビには何か別の力が、例えば『意思』のようなものが存在しニクスの命令よりも強い強制力を持っていたと考えるのが妥当だろうか。


 少し気になる奴がいる、と言って出ていったボーレアウは未だに帰ってこない。いったいどこで道草を食っているんだ。やっとこさ立ち上がったバスタードの意識が突然薄れた。口からは自分の考えていることとは違う発言が押し出されていて困惑する。


 ――久しぶりに人格が入れ替わったようだ。


「危ない……『奴』を出す訳には行かない。恐らく彼は予想外の強敵に倒されたのだろう、私にはわかる」


「私には……私は、私のやることは1つだ。打って出る、そして勝つまでだ」


 腕のあった場所が青く光ると少しづつ再生していく。長くかかるだろうが綺麗に落とされたため、傷跡が残る程度ですむだろう。なぜなら自分は人間では無いから……


 ――――

 ニクスはどこかへ消えてしまったアゼタを探してあちらこちらに聞き込みを続けていた。ボーレアウを倒したその上で彼を持って行きながら行方不明になるとは何を考えているのか。あいつと一緒に居たとは言えその思考を理解していたとは言えないニクスとしては怒り心頭だ。


 特徴は自分の暴走時と同じ顔で髪色であること、異形の合体武器を持っている事。そしてニクスよりも確実に強い事が上げられるが、それ以外の情報はまだ無い。


 ハンデは抱えてないように見えるので、その時点で大幅に差がついている。


 モヤモヤしながらもギルドにかえり、フィラファスに事を報告する。もうずっとこうやっているため、手馴れた調子でさっと必要と思われる情報を伝える。


「……で、そのアゼタはニクスから分離していた、そしてもう一人のあなたとしてどこかへ行ってしまったのね」

「ボーレアウを倒したのは俺も見ました。でもそいつを連れてこの街を離れました」


 まさか、気が変わって敵側に着いたのかしら。と心配そうな顔をするフィラファスではあったが、ニクスは何となくそうでは無く彼には彼なりの思惑があるのではないかと直感的に思っていた。と言うよりそうでなくてはこの街に来る直前に報告のあった、一つの奇行の説明ができないのだ。


「それと、ここ来る前に一つ先の森で出会った冒険者グループに接触してたらしいです」

「聞いてるわ。突然冒険者になって何年かを問うてきて、答えたら霞のように消えたって」


 一年程度の新米のグループだったので、もしかしたら経験が浅いことを理由に有益な情報を得られないと思ったのだろうか。もしくは、自分の強さと照らし合わせて遠く及ばないと判断し、ここまで来てニクスに喧嘩を吹っかけたとも取れ、根っこはあまり変わってない事が伺える。むしろ暴走側の人格とも言えるため荒っぽいのは据え置きのようだ。


「悪い奴じゃないですが……危険な奴ではあります。俺の中に潜んでた間もずっと何か思考していたので、何をやらかすか分かったもんじゃない」

「心外だな」


 ギルドは入口を入ると真ん前にカウンターがあるのだが、いた。高い天井に、何も使わず逆さまに立っているアゼタが。


「ボーレアウを倒してやっただろ? 感謝するんだな、お前じゃ延々引き伸ばされて何処かで返り討ちにあってただろうし」

「お前、ならなんでアイツを何処かやったんだよ!?」

「何処にもやってねー、隣の一種に渡してきた。この街には一種組合が無いだろ? あ、正確には《《無くなった》》か」

「その情報はまだギルドマスター以外に伝わっていない、どこから手に入れた!?」


 何故か持っているはずのない情報を持っているアゼタに驚愕した様子でフィラファスが声を張り上げた。


「……ノーコメント。おっと、これを渡しに来たんだよ。話を逸らさないで貰えるか」

「逸らしてんのはお前だろ! どこから聞いたと言ってんだよ!」


 ニクスの言葉はガン無視しながらフィラファスに向けて1枚の厚紙を投げる。それを受け取ると何か仕込まれてないか疑いの目で魔法をかけ始めた。


「なんもしてねえよ。それは俺を信用してもらう為の前金、みたいな物だ」

「これは……! ……本当なの?」


 血相を変えたフィラファスに無言でうなづいたアゼタは、もうひとつ話し出す。


「おいニクス、お前が力に溺れる事のないように警告しとく。カビの意思は薄れただけで残ってる。んで、お前が《《そうなった》》時は殺しに来るからな」


 俺の体を俺自身で壊すのはしのびないからな、と真顔を崩さずに話終えると帰ってきたライシスに向き直った。彼女はニクスから聞いていたのでアゼタの存在は知っていたが、容赦なく魔導書からロープが飛んできた。


 が、アゼタが手を動かすとロープが輪切りにされて床にバラバラ落ちる。いつの間にか例の武器が握られていた。フィラファスはライシスを諌めると、アゼタに話す。


「その強さがニクスの根源ね? すると今この子は弱くなったと言う事?」

「確かに根源だが、ニクスはすぐ俺に追いつくよ。少なくともあんたらがいれば道も踏み外さないはずだ」


 引き続きそいつをよろしく。と報告通り霞のようにギルドを後にした。敵か味方か分からないまま何処かに消えたが、ボーレアウを逃がした訳じゃなくて安心した。


 フィラファスは厚紙をグシャグシャに潰すと暖炉に投げ込んでしまった。結局何を書いてあったのかは分からないが一般には出せない事なのか。




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