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Don't stop nics

おまたせしてごめんなさいね

 畔田がニクスを見ている時、ニクスも畔田を見ていた。その髪色は、その目は。


 ――ある日を境に突然アゼタと会話出来なくなった。彼の人格だけがぽっかりと抜け落ちてしまったかのような底知れぬ喪失感を感じながら、今日も生活している。


「あれは……!?」

「ニクス、どこ見てるの?」


 ライシスの問いかけに、慌てて窓を指さすニクスだがもう遅い。既に彼は姿を消していた。

 変な態度に首を傾げる彼女だが、ふと気づいたのか聞いてくる。


「あんた、ちゃんとカビを制御出来るようになったね」


 せめぎ合うもう1人がいないから、と言うのは間違いない。これに関してニクスは成長などしていない。


 机を離れると外に出る。どこかにまだいるかもしれない。彼の正体を知らなければならない。聞きたいこともある。


「あ、すいません。この辺に俺と同じ顔の奴がいませんでした?」

「おお、そうそう! 真っ直ぐ街を出て言っちまったよ。ほんとに双子みたいに似てたなあ……髪色だけ違うか」


 向かいにある雑貨屋の店主に話を聞く。もう何年か居るのですっかり顔なじみだ。彼からの依頼も受けに行ったことがある。



「また来るかもしれないんで、その時は教えてください」

「おうよ」


 来たんだし何か買ってけよ、と冗談交じりに言われるがあいにく、必要なものは現状ない。笑って流すと組合に帰った。


 明くる日、大型の魔獣を討伐するために、商店街を離れて数日がかりで3つ先のまちへ向かう途中に立ち寄ったサイテアという街で、また彼に会った。


 すれ違った時のあの目は間違いない。背中に声をかける。


「おい! あんた!」

「何かな?」


 ゆっくりと振り返ったその顔は、たしかにニクスが鏡写しになったような感じだ。が、背中には巨大な剣が盾に納まっており、その盾自体も何かしらの改造が加えられているらしく縁が盾らしくない鋭さを持っている。まるで先端の広い大鉾だ。


「46-RR グリペアII。気になるだろ、この武器。落ちてた盾を改造して剣を納めた……かさばるのは戦いに不向きだからな」

「ふぉ、ふぉーて? ……そんなことよりお前、なんでこんなことになってる?」

「暴走した時、俺だけお前からはじき出されたんだよ。正確なことはよく分からねえが、俺は俺、お前はお前として生活をするべきだと決められたようだ」


 本当にそれ以上分からないらしいアゼタの言葉を聞くが、剣が煌めくと頭に振り下ろされた。すぐさま槍を滑るように動かすとガードした。アゼタは終始無表情だ。


「なにすんだよ!」

「俺がいないお前がどの程度なのかって……気になった。俺はお前より遅いぶんしっかり学ばないとだからな」


 人をかき分けて一種組合の人達が来た。アゼタは再度剣を振ると、凄まじい風圧が起こり、砂埃が目に入ると皆目を手で隠す。


 煙幕が晴れると、そこには槍を持ったニクスだけが取り残されていた。


「ニクス君、今のは? 奴らの仲間か?」

「いや……化け物だ」


 バスタードら以外にも脅威が生まれてしまったようだ。それも、連中よりもずっと強い。

 ずっと体の中にいた時から、相手に一撃も与えさせずに撃退していた強さがある。ちょっと浮かれ気味だったニクスの顔を引きしめる、良い刺激物だ。


 ニクスはこの街で1晩過ごした後、依頼者の居る街へ向かう。どこかで彼と戦うこともあるだろうが、その時は勝てるよう鍛錬を怠らないようにせねば。


 一方アゼタの方はというと。


「お前、面白いな。俺たちと組まないか?」

「たしかボーレアウとかいったな? 俺もニクスと同じ扱いでいいぜ」


 街を出たところで絡まれていた。剣を軽く握ると、鞘として収まっている盾の部分にロックがかかり、盾と一緒に引き抜いた。盾の先をボーレアウに向け、流線型の弾が発射される。伏せて躱すが、服が飛び散る。


「くっ! なんだこりゃ!」

「46-RR グリペアだ。自慢の武器でな、声に出して読みたい名前だ」


 盾と一体化して相当重いはずなのに、軽々とそれを振り回す。たまに剣が2本に分裂しているような恐ろしい挙動を起こし、ボーレアウはさすがに撤退しようとする。


「逃がさねえよ」


 彼も二刀の短剣を抜くが、目の前で紙くずのように刃の部分だけ切り落とされ、盾の先が眉間に向けられた。


「なんだ……なんなんだお前!」

「面白いやつだ」


 爆煙と共に地面が燃え上がった――




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