表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/49

決めるのは君

お久しぶりです、お待たせしました

「君は本当にイレギュラーの中よく頑張ってるよ。ふたつの人格を統合して、カビの能力の代わりに何か別の能力を贈ろう。普通の生活ができるよ


 決めるのは君だ、このままハンデまみれの生活でも良いし、僕の提案を受けても良い」


 畔田は考える。正直に言うとニクスの性格は《《真に弱い人間》》のそれなのだ。一見フレンドリーに見えて壁を作り、のらくらと壁の中には絶対入られないように知恵を回す。


 壁の中に入られるのを極端に嫌がり、常に裏方に回ろうとする。入られたくないから、一番懐に飛び込まれやすい戦闘行為を避けようとし、近付かれないようにある程度周りを突き放す。カビらしく湿っぽい奴だと思う。


 本来は自分の身体であり、なおかつニクスを体内から排除出来るかどうかは自分の一存だというのなら、答えはひとつだ。


 だが、条件をつけよう。畔田は顔を上げると答えを述べた。


「……俺を本体にしてくれ。だけど、ニクスと俺は切り離して欲しい。あいつの努力で獲得した、あいつだけが持つ権利のある成果を持ち逃げするのは元研究者としてのプライドに反する。俺は別の人生を生きるが、あいつもせっかく意志と身体を持ったんだ。好きにやらせてやってもいいのではないか?」


「君を殺したあの子は間違ってたようだね。そこまで言える人物がバラ撒くことを望むとは思えない」


 あのカビを作っても褒められすらしなかったが、死後に褒められて複雑な気分だ。そう言えば死んだ後に絶賛された画家も居たが、どんな気分だったんだろうか。少なくとも今の自分と同じか、かなり近いだろう。


「君には万一彼が世界に対して脅威を見せた時に彼を倒す能力を授ける。本体としての能力はどうする? 僕はオリジン、始まりの能力者。望むものはなんだい?」

「始まりだあ? ……そうだな、あんたから見て俺はどんなものが似合いそうだ?」

「君、服屋で連れに選んでもらうタイプだろ」


 やめようこの話。悲しくなってきた。


「うーん……お、君にうってつけの能力を見つけたよ。研究者の君なら応用の効く能力が最適だ。ああ、今度こそ前世の記憶は消させてもらうよ。二人ともあの世界の人間になるんだ」

「思い出したくもないから構わない」


 わかった。それじゃあね、と言われると闇にヒビが入り、ニクスの中で見ていた景色が開けた。


 キョドキョドしながら指を鳴らしたり、準備体操をしたりとしていると後ろから声をかけられた。

 そう言えば服は!? ……白衣ではない。パーカーのようでいて丈の短い服を着ている。


「ここ、うちの庭なんですけど……」

「え!? あ、失礼。どうも酔っ払ったみたいでね」


 急いで庭から出ると、不審そうな目に耐えきれずそそくさとその場を離れた。


 と、なにかにつまづいて転ぶ。木の根にでも引っかかったかと足元を見ると、それは奇妙な形をした盾だった。その盾に手紙が置いてある。ひろげると、こう書いてあった。


【これを最初に拾うのがアゼタ君であることを祈る。君の身を守る為に作った盾だ。対となる剣はあるんだけど折角だし、探してみなよ】


 君の人生に幸多き事を祈っているよ、と結ばれた文面と盾を交互に見る。よく見ると変な文字が上の平たい部分に向かって収束しているような模様だ。そこには大きな凹みがあり、剣を収納出来るようにされている。


「使いづらいな……改造しよ」


 森から出ると、ニクスの居る商店街が見えた。思ったより近くに見知った場所があり、なんだか少し嬉しくなった。


 ニクスはどんな様子かと思いながら組合に向かうと、街の人々がちらりとこちらを見、ぎょっとした顔をする。ん?


 一人が声を上げた。


「さっきニクスは帰ってきたよな……あんた、双子かい?」

「双子……? あぁ、よく言われるんだけどそっくりさんだよ」


 その言葉で鏡を見ずともニクスと同じ顔になっていることが分かる。ごまかしごまかし組合をちらっと見る。


「……!? おい?」


 ニクスは居た。居たが、アゼタには原型のないもやにしか見えない。一瞬目が腐ったかと思いながらゴシゴシこする。再び見ても、やはり黒いもやのままだ。周りの人の反応はと言うと、いつもの通りである。


 まさか自分だけあいつの正体を見ている? 持っている能力ってのは、能力を看破するという能力なのか? 強いが直接戦闘には向いていない。


 頭をひねりながらひとまず街を出ると、野宿をしに目覚めた森で一晩を明かした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ