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絶凶ふたたび

バスタードがようやく出てきました。好きなキャラだけど……

 一回戦を終え、組合メンバーのいる場所ではなく観客席の端に座ったニクスは、この場所が円形のフィールドを見渡せることを知っていた。初めてカビを人間に使用した時の事だ。


 ジョーヴェという危険人物は、ここからこのフィールドを見ていた。ターゲットが誰だったのかは分からないが、この位置は何をするにも絶好の場所だったのだ。

 先程の魔道具のようなものは何だったのか。しばらく前からキーワードのようにアゼタの口から発されている「前世の記憶」が関係しているのだろうか。



 ニクスはゆっくりと目を閉じると、アゼタがいるあの液体の中でもう一度目を開けた。よく見ると、前と違って円柱状のフレームが見えた。声は相変わらずの遠めから聞こえてくる。


『何を迷ってる』

「あの武器はなんだ? 俺はあれを知らないからお前のだろ?」

『だから言ったじゃないか。お前の前世の記憶だと』


 何度聞いても、いつも同じ返答しか返さない。まるでそうプログラムされているかのようだ。ニクスは周りをもう一度見ようと、目をぎゅっとつぶると開ける。観客席にある時計を見ると、先ほどから20分も経っていた。時間がたつのははえぇな、と独り言つと組合席に向かった。


 ――――――


「こ、これは……!!?」

「アー。手加減ガ出来ナイノハ、悪イ癖ダ」


 余りの惨状に片言で喋る独特の形態を持ち、圧倒的な破壊力でフィールドをめちゃくちゃにする奴など、一人しかいない。


 ニクスが組合側に戻ると、フィラファスをはじめとしたメンバーたちが一番端っこのブロックを厳しい顔で見ている。数人は鬼のような形相で見ており、ただならぬ雰囲気を醸していた。


 ライシスの隣が空いていたので座ると、小声で何をしているのか聞いてみる。


「な、なぁ。何があったんだ?」

「アレ見なよ、ニクス。あんたにも関係があるでしょ……」

「おん? ……何……でいる……?」


 一番端から奴はこちらを向くと、ニクスを挑発するように両腕をクロスさせた。


「あの野郎……世界中でお尋ね者のはずだろ! なんで堂々と参加できてるんだよ!?」

「偽名に決まってんでしょ。それにあのパワーは能力由来の物じゃない様ね」


 叫ぶニクスを抑えながら、ライシスは淡々と分析を続ける。彼女は《《幸い》》なことに、奴の攻撃を受けたことが無い。組合襲撃の時以外は一切、手を出されていないからこの場の誰よりも冷静に見ることができるのだ。


 と、フィラファスたちがニクスを手招きする。その顔は各々が怒りや恨みをすべてニクスに託す、そういった強い意志の顔だった。


「俺たちもお前も、バスタードに人生を狂わされた。だが俺たちは場外乱闘することができない……お前に任せる、奴はどんな汚い手を使ってくるか分からんからこちらもイカサマするぞ。『超再生』」


 そういった一人の拳が軽く当たると、ニクスの体に二重らせんの何かが入ってくる。フィラファスとベクターがニクスの顔に触れると、大量の魔力が流れ込んできた。無限の力と吸収した能力が駆け巡り、槍を持つ手に力が入る。


「……絶対倒してくるから」

「死にそうになったらすぐにリタイアしろ。この闘技場にのこのこ出てきたのが最後だ、奴はここから出ることなく殺す。連絡はもう取れてるから安心して暴れてこい」


 珍しく早口でドラグレアが注意を飛ばしてくる。なんだよちゃんと喋れるじゃん。


 観客席から飛び、フィールドに着地するニクスに対し、悠々とした足取りで向かってくるバスタード。あろうことか鼻をほじくっている。


「なめてんのかクソ野郎」

「ソリャア、オメエダロウガ。カビノ盾ヲ展開シナイノハドウイウコトダ? 第一形態デ余裕ダナ、クソガキ」


 片言の状態=第一形態ということだ。実際、あの阿修羅ポーズになっていないことを考えると本当に舐め腐っているようだ。


「いーや、お前は嫌でも本当の姿をさらすことになるぜ……ついでに愚かさもな」



 開始の合図すら待たずにフィールドの半分を黒く覆ってしまう。バスタードは笑うと、腕をクロスさせて見えない壁を作り出した。


「Xシールド」

「馬鹿が!」


 ニクスは両手を突き出すと、先端がとがった触手のようなカビがうねりながら襲い掛かかる。バスタードは後退しながらシールドにうまくカビをぶつけていく。ジャンプするとさっきの後退の時に拾ったのだろう、いくつもの小石を猛スピードで投げつけて撃墜してしまった。流石に踏んできた場数が違う。



「ソレダケカ?」

「そういうところが愚かだってんだよ。第一ラウンドはナワバリ争いだ」


 ニクスも後ろに飛ぶと全身が真っ黒になり、カビの海に踏み込むと地面と一体化する。とたんに地面を覆っていたカビが一瞬で割れ目に吸い込まれて消える。


 バスタードは止まると、当然のように地面を殴りつける。地面が吹き飛び、衝撃波で地割れがいくつも起きたがそこに隠れたはずのニクスがいない。



 観客席の下から先ほどの触手が飛んでくる。同時に反対側から元に戻ったニクスが飛び込んでくる。カンストパンチを食らえ。


「ヤルジャネェカ、イカサママデシテ勝チニ来ルトハ成長シタ……ダガ俺ガナニモセズニ此処ニクルワケネェダロ」


『ガラ・タエナ・アキセリ』


 バスタードが腕を上げると、はるか彼方から何かが飛んでくる音がする。赤熱した両刃の剣がカビを焼き払うとバスタードの手に収まる。ニクスはすんでのところで屈み、水平の斬撃を交わした。また距離を取る。バスタードの声がしっかりとしてきた。何とか引きずり出せたか、三面六腕を。


「こっちも借りてきたのだ、聖剣をな」


 赤く輝く半透明の聖剣。それを見た時、アゼタの声が変わる。


「アレは……俺に変われ、一度休んでろ。なんで《《こっちの世界の技術》》をもってる」

「おい、それって」


 言い終わらないうちにニクスの姿が反転した。腕をクロスすると、アゼタの声でバスタードに質問する。


「その刀身は『半導体セル』だ、俺たちの世界で太陽光パネルに使われてるものをなんでお前らが持っているんだ!」

「……お前がクソガキの能力か。その口ぶりだと能力に転生した別の世界の人間だな?」


 世界は動きだす。






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