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交わらぬ世界

お久しぶりです。そう言えば僕の好物は納豆なんですよ。

『なんということでしょう……圧倒的な力で初出場の青年がD組の頂点に到達した!』


『もう……そろ……』

「まだ先はある。あまり同調する(はしゃぐ)と能力がばれちまうだろ、アゼタ」


 決勝戦が終わった時、右手についている小手が一瞬どす黒く光るが、元の赤銅色に戻る。予選で能力をばらしてしまうのはよくない。ちなみに相手は『数百倍の攻撃力でカウンターを行う』能力だと思っていたようだ。変色も、カウンターの倍率を調整しているのだと勝手に認識していた。


 ちなみに予選なのだが、相手に参ったと言わせた方が勝利というシンプルなルールだった。大した苦戦もなく突破できたし、何なら舐めプしても勝てる試合ばかりだったのでもう少し力を温存しておけばよかったと軽く後悔した。ドラグレアとニムカはニクスの一時間以上前に決勝に進出している。全く見てなかったが10秒以内に倒してしまっていたようだ、ニクスは正直、勝てるビジョンが全く見えずに内心わたわたしている。


「うん、まあ今のあんたなら突破できるよねー」

「……いい……戦いだった……」


 ニクスが組合メンバーの固まっている席に戻ると、見物しているライシスが膝に頬杖を突きながら笑う。もうやることを終えたといった顔で平然と座るドラグレアもほめてくれる。ニムカはどこかに行ったらしく、行方不明だ。

 と、フィラファスがホットドッグを渡してくる。ニムカからの差しいれだそうで、ニクスは力士の様に手刀を斬るとかぶりついた。この手作り感のない味もなかなかおいしいものだ。


「次の相手は……ドラグレアと、アクトレムって人ね。予選Bをニムカに続いて突破したのね」

「……彼に…………不意打ちは無理……上から……狩る」


 ドラグレアはまだ先だ、目を閉じると寝てしまった。さらに、ライシスがフィラファスの後ろに回って本選表を確認する。ニクスの相手ももう決まったようだ。ニクスの性格を知っているからだろう、注意を飛ばす。


「ニクスと当たるのは……レイヴァーって子ね。女性だけど容赦しちゃだめだよ」

「運が良かった、その子は手の内ばらしまくってるから徹底的に止めるわ。出番だ、頼むよ」


『最初はお前だ。途中で変わってもらおう』


 あ、そう。とニクスは言うと、下に降りていく。ライシスは、彼の顔にカビが現れ、全身を駆け巡っていることに気が付いた。



 実況解説の声が響き渡ると観客席から怒号のような歓声が沸き起こり、耳が少し痛くなる。相手は黒い髪に青い目の女の子で、顔立ちがそこそこライシスに似ていることに気づいてしまった。戦いにくい。


「やっぱお前早く出ろ」

『賢明な判断だ』


 お互いに握手すると、距離を取る。レイヴァーが口を開く。


「あなた、登録試験の時にいたわね。とんでもない力を持っているのはわかってるわ!」

「本当にどこで誰が見てるかわかんねえなぁ……ハンデにはちょうどいい。俺の記憶ごと消し飛んでくれ」



 ――「『モードX』」


 左手に白、右手に黒の光が灯る。両腕をX字に交差すると、黒いらせん状のエネルギーがニクスの周りを動き、むき出しの腕と足には黒い基盤模様が大量に入ると、そのそばから消えていく。目の色も灰色から緑と赤のオッドアイに変色し、黒に赤っぽいメッシュが入っていた髪は色彩が逆転して赤髪に黒メッシュという出で立ちになった。右手にしかついていない小手も両手に現れる。そして、背負っている槍が収まっている包はぱっと消えてしまった。


「『さあ!! お前には消えてもらうぞ! 俺は奪い去るものだァ!」』


 前半はニクスの言葉だったが、人格は完全にアゼタに塗りつぶされ、後半の言葉はすべてアゼタが発したものだ。観客も、ニクスの変貌ぶりに驚いている。ドラグレアも不穏な空気を感じ目を覚ました。というか、フィラファスが真剣な顔で小突き回していたのだが。


「カビに乗っ取られた……?」

「いや……共存……しているようだ……」

「いつまでもつか分からないわ! 止めないと」


 フィールドに降りようとするライシスをベクターとフィラファスが制止した。二人とも無言で首を振る。目を閉じると座りなおすが、思わず両手を組んで祈ってしまう。



 レイヴァーが先に動いた。大剣を片手で軽々と振り回し、切りつけてくる。対するアゼタは瞬間移動じみた動きでかわし、腕を大きく振ると風圧で大剣を弾き飛ばした。


「『はっは、グリップが甘いぞ。もっと強く握らねえと」』

「うるさい!」


 バックステップで大剣を引き抜くと、構えなおすよりも早く地面にカビが展開する。黒いじゅうたんがニクスの後ろに扇状に広がると、カビの塊が針のようにとがる。



『「無限対空砲、攻撃開始!』」


 鉄がこすりあうような音を発しながら大量のカビの針が舞う。彼女は大剣を盾にするが、カビと接触した部分から腐り落ちる。液状化する鉄というあり得ない状態を目の当たりにしたレイヴァーは焦りの色を見せながら大剣を放棄する。


 が、まだ武器があるらしく大太刀を出現させた。それをみたアゼタはニクスに人格を返す。突然外見がいつもの姿にもどったニクスだが、彼が出ている時は消えていた背中の槍が返ってきた。地面に広がったカビもニクスに吸い込まれ始める。


「武器なら俺のが強いってことか……体力ぅ!」

『攻撃だけやってろ、ボディは俺が守る』

「せいっ!」


 大太刀で襲い掛かるレイヴァー。すさまじい速さで槍を引き抜くとぶん回す。正確に刃を合わせて力を分散し続ける。後ろに回り込まれるが、手を動かすと攻撃はカビの壁ではじかれる。


「ガードが堅い……!」


 ニクスは槍を掲げると、先ほどまで防御していたカビが槍に巻き付いて青く光る。するとフィールドが重力でひびが入る。その衝撃は観客席にまで及び、観客は思わずたちあがる。


「これがガレスの力! 真菌重槍だ!」


 そう叫ぶと槍を投擲する。流石にまずいと直感したらしく距離を取る。槍は空中で衝撃を発しながらレイヴァーの動きを押さえつける。片膝をつく彼女は、それでも「まいった」と言わない。ここで言ってくれれば技を使う必要がないのだが、とどめるとしよう。両手を大きく広げると拳を突き合わせる。




 ――この瞬間、ニクスは気づいていないが白衣のような服を着た影がうっすらと自分に重なっているのを多くの人が見ていた。


『俺とお前の記憶を結合する』

「おう! 思考武装! 起動確認完了!」

『撃鉄を起こせ、攻撃命令を!』


 ニクスの周りに大量の電流が走るとテレビの砂嵐のような奇妙なノイズが発生し、長い砲身やいくつもの銃身が付いている砲台と言ったものが、いくつも現れた。


 ――これは、決して交わらない世界の武器。


「これは……俺の記憶? いや、こんなの見たことがない。アゼタの記憶か!?」

『……一斉射撃! 終わらせろ!』


 あらゆる形の武器からあらゆる攻撃が放たれる。爆風と高周波でニクス自体も後ろに吹っ飛ぶ。発射すると同時に武器たちは光の粒子になって消えていく。



「参った……!」


 爆発の奥から小さく聞こえる。それと同時に浮いていた武器が全て赤い鎖に巻き取られ、黒くなると消滅した。


『レイヴァー、降参により戦闘終了。勝者、ニクス・テラーロック!』


 今の武器は、いったい何だったのか。誰も答えれるはずもなく一回戦を突破した。


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