出会い、そして
いいペースだ!
件の呪われた村に巣食っていた、と言うより復讐の機会を狙っていた怪異の集結を確認した後、その足で今度は森の外周を進んでとある街へ来た。
この街はウチの組合があるネフィア商店街とそこそこ似ているが、規模はこちらの方が断然大きい。
大きいということで、当然組合も存在するようだが……この街から来た依頼は、『例の組織の1人が目撃されたので情報を集めておくこと』だ。見た目を目撃者の女性に、魔術越しに聞いたところ「お面を被って奇妙な声をだす不気味な人」と言っていた。
あの声と、未知の能力を思い出す。名前は確か、『童河岸』だった。まあ偽名だろう。
奴と自分たちの周りだけ時間の概念が歪まされていた事は良くわかったが、それ以上は全く分からない。
ほかのメンバーと比べても圧倒的な情報のなさ、例外でアクセローザは死亡しているので除外しているが、彼ですら『ウィルス』と分かっているのに。
――同時刻。ボーレアウの前には、童河岸がいた。
「お前はなんでそんな人の目につこうとするんだ」
彼は気持ちの悪い声でふふふ、と笑った。
「採点をしようかとね。100年前とどう良くなったか、あるいはどう悪くなったか」
「採点してどうするんだ。……というか、お前は人間なのか?」
「……」
彼は何か気になる物があったらしく、後ろを向いたが人間かどうかについては無視した。ボーレアウは、「おい」と何度か声をかける。
「ん? すまん、もう少しハッキリ言ってくれ」
「耳が悪いのか? まあいい、お前は人間なのか、と聞いている」
「そろそろ言っておくべきか? ……俺は人間だ」
嘘をつくな、と思わず言ってしまうが、彼はお面を外してもう一度答えた。
「我が名フリゲート・エイル。ボーレアウよ、お前らの先祖に当たる歴とした人間だ」
「……嘘だろ? アンタは……レーネ・アルクの戦いにおいてたった一人で城を落とした英雄じゃないか! 俺達の……先祖だと?」
この世界の歴史にのこる、レーネ・アルクの戦いとはこのミレース王国の隣にあるガルバ公国が仕掛けた物で、結果的にミレース王国が辛勝したのだが大被害を被ったと言う内容だ。そして、その戦において、一城を単騎で落とし、反撃の流れを作った英雄が目の前に居るフリゲート・エイルその人だ。
―――彼こそが唯一、Lv100を達成した男
「俺は……こちらの世界に《《干渉出来ない》》からウロウロしてる。俺の能力名とからくりを教えてやる」
―――――
ニクス達は街で買い物をしていた。例えば食品。旅の必需品である保存食は、この街は比較的安価で買うことが出来た。
特に、聞かれたので自分たちの職業を伝えると、店主らしい人が半額にしてくれた。その時の顔を、ニクスは忘れないだろう。
感謝に充ちた顔。社交辞令なんかではまず作れないほどの表情だ。
と、一人の女の子がこちらに走ってきた。ライシスは少し道を開けたが、ニクスは爆破事件の事もあってか、少し疑るように女の子の顔を確認しようとする。
女の子はぱっと顔を上げると、二人に助けを求めてきた。
「助けて! 怖い人に追っかけられてるの!」
それを聞いた途端、ニクスは女の子が走ってきた小道をじっと睨む。ライシスは女の子を撫でながらどんな人に襲われたのか聞いている。こういうのはニクスには向いてないから、彼女がいてくれて助かった。
『12時の方向、300メートル先』
「お、サンキュー」
気づかないうちに胞子が舞っていた。それが敵を感知したのだ。向こうから走ってくる足音も聞こえている。
ニクスはカビを長方形に展開すると、中心が窪んでいくつかの穴が作られる。その中にはカビで形成された『弾頭』がはみ出している。
「六連!」
過去に使っていたシャドーミサイルがたくさん増えたバージョンだ。まずは二発。黒い煙を吐きながら放物線を描いて飛翔した。
3……2……1、着弾。爆発がこちらにも見える。同時にばらまかれたカビを通して結果を見てみる。
「かわしたか、これは優秀っ!」
「煽らないの」
残り四発、全て打ち出すと二発分のカビをこちらに戻す。
すると、あの感覚が戻ってきた。カビが戻ってこない。また、放ったはずのカビ達も元の場所に収まっている。女の子の声が耳に届いた。
「お面を被った、怖い声の人」
「……童河岸か! ライシス、その子連れて近くの組合に駆け込んでくれ!」
「わかった! あんたはどうすんのよ!?」
「アイツの能力を解明する! でなきゃ余計被害者が増える!」
小道からチリン、チリンと鈴が付いた耳飾りの音がする。童河岸が、左耳に指を当てながら木の影から姿を見せた。
「まさか、ほんとに居たとはな」
「また会ったな、テラーロック。連れも元気そうじゃないか? 女じゃない方のな」
カビのことを知っている。こいつはまだ一部の人しか知らないことを何故か知っている。
ダメだろうが、ひとつ聞いてみた。
「その能力はなんだ?」
「……なんだ、と聞かれて答えるとでも?
戦いを分かっちゃいないな、この時代の人は…… いいか、戦いは情報だ。どんな勇者であっても『敵の情報』がなければ無駄死にするだけだ。それに、戦いに――――」
「卑怯って言葉は無い」
ドラグレアに教わった不意打ちだ。槍を掴むフリをし、履いている靴にカビを纏わせて飛ばす。視線がズレた瞬間、直ぐに間合いを詰めて攻撃開始だ。
「その通り、だからこれも当然『アリ』だ」
ニクスの足元が割れる。地面が崩れ、円柱の落とし穴が現れる。が、ニクスはカビで一瞬だけ足場を作り、踏み台にして槍を突き出す。同時に、後ろからカビのミサイルが放たれた。
ニクスの槍が攻撃前に戻った。が、ミサイルはそのまま襲い掛かっている。能力は、事象ひとつしかターゲット出来ないようだ。
この距離なら攻撃を戻されようがもう一度やれる。
もう一度槍を握り直し、袈裟懸けに斬りつけた。
――女性の声がこう唱えた。
「対象、『サイノカワラ』。増幅強化!」
「サイノカワラ……? うお!!?」
バチッと音がすると、ニクスの周りの景色が歪む。童河岸の隣には小柄な女性が居り、急に周りが電気を消したように真っ暗になる。
「ここは!? ライシス!?」
顔を素早くあげると、ここは故郷の村であることに直ぐ気がついた。燃えている。
「昔の……俺の村、なのか……!? 」




