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あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします
鎧とカビの霧を吹き飛ばされ、本体が露わにされたニクスに剣を指し示しながらディエールが言う。
「この剣はね、『太陽光を集約する性質』と『集めた太陽光を反射する性質』を持つ。つまり、虫眼鏡と鏡の性質を持つということ……材質はわからないけど、少なくとも金属じゃないからあなたのカビの影響も受けない。何より、本体も能力も共通して《《熱に弱い》》……! 常に私が有利なのよ!」
「おめえ、なんで俺と会ったことがないのに熱がりなのを知ってる?」
ディエールは「チッチッチ」と指を振ると答えた。同時に、先ほどまで光っていたから気づかなかったが、半透明でガラスの様にテカテカしている刀身に赤い光が集まりだした。再度のチャージを開始したようだ。
「生物を操作する能力の特徴よ、使い手の体質は能力に引っ張られる。過去に戦った人の中に、あなたと反対の体質、冷え性を持ってたコがいたわ。彼女は独自の『プランクトン』を生み出し、それが繁茂した水を操った。炎と水じゃ相性が悪かったけど……聖剣には勝てないからね」
どうやら奴は、聖剣に頼りっきりのようだ。そもそも、奴はすべての質問を肯定していたことから、本当のことを何一つ言う気はないと判断した。そんな聖剣の名前など聞いたことがないが、自身の弱点を看破した理由だけは事実だ。嘘と真実の混ぜ方が巧みすぎて、混乱してしまう。
「ニクス、何をしている!? どうぞ!」
突然、耳に仕込んである無線結晶というトランシーバーの役割を果たす石から声が入った。この声は今の実働部隊の隊長だったはずだ。
「アクシデントが発生しました、要注意対象のディエール・ガーヴェインに妨害されてます どうぞ!」
「ディエールだと!? ということは襲った奴は敵組織の一人だな。わかった。中の奴は我々が潰す、お前は奴をひきつけ続けろ」
「了解、切ります」
耳から無線結晶を引きはがしてズボンのポケットに入れる。すると、ディエールの周囲に散らばっている黒い塊が動き出し、ニクスの体内に戻る。顔を上げると聖剣を少し見る。光はまだ半分程度しか蓄積できていないようだ。
「くらいやがれ」その言葉を吐いた瞬間に槍を横に一閃する。カビの塊がディエールめがけて飛んでいくが、よけようともしない。全てすり抜けている。
「学習しないのねえ」
「うるせえぞ変態野郎」
槍を手放すと、目の前の奴とは反対の方向に蹴り飛ばす。槍は当然あらぬ方向に飛んでいくわけだが……
――槍が何もないところに刺さり、パラパラと割れた。割れた向こうの世界には、同一人物が存在していた。
「……そういうことだ」
「よくわかったじゃない。でも気づくのが遅かったわね」
背後がまぶしく輝く。ニクスは再チャージが完了したことを理解し、とっさに手で顔を覆ってしまった。
「お天道様は全部見ているのよ……《《お友達》》と一緒に裁いてあげるわ『ガラ・フレア』」
「ちくしょう……俺がァ! 死んでもッ! ライシスのとこには行かせねえぞォ!過淀流星砲!」
目は閉じたまま口を大きく開けると、体内のカビが全て収束し、十字の光と共に放たれた。放たれた黒い光線は分裂すると聖剣を持っている方のディエールの体を連打し、はるか上空に弾き飛ばす。
力の制御に失敗した。遠くには弾き飛ばしたのだが、遮蔽している木々がニクスのパワーで砕け散ってしまい、遮蔽物のない状態のままになってしまったのだ。
全てのカビを放出した瞬間、完全に体力を使い切ってしまった。それを見たどちらのディエールも満足げに笑うと、いつの間にか二つになっていたガラ・タエナ・アキセリィを振るう。ニクスは今度こそ死亡を覚悟した。こいつはバスタードより強い……。
「ちくしょう……」
――――否!! その大声で我に返る。
《貴様は生まれついてから今まで、『彼』を不承不承ながら受け入れ、あの問題児から協力を引き出した上に制することができた。素晴らしい行為だ……。今回はその器の広さに免じ、少し力を貸そう》
「お前誰だ! 上から目線で腹立つなぁ!」
ニクスは海中のようなオーシャンブルーの世界、いや、かろうじて液体だとわかる物質の中でゆっくりと沈んでいる。そして、水面には何者かが立っている。鎧武者だ。何となく、その鎧は『真菌の起動楼閣』の発動時に装備されるものに見えるが、細部のデザインは違うし色ももっと神々しい。こちらは真っ黒だがあちらはどうやら白銀だ。
《我か? 貴様が知って良い存在ではない。どのみちここでの記憶は消える……近いうちに貴様は過去の自分と折り合いをつける時が来る。可能性を狭めるな。過去から逃げるな。その『逃げ』が貴様からすべてを奪っていくぞ。
さあ、立ち上がる時間だ。行け》
沈んでいた体が急に持ち上がる。水面にいる人物にどんどん近づいていく。水から飛び出す瞬間、そいつは兜をはずした。首から顎にかけてしか見えなかったが、その首には大きく深い傷跡があった。
景色が一瞬にして戻ってくる。慌てて両側を見渡すが、そこはディエールも誰もいなかった。目の前には先ほど別れて行動していたはずの実働部隊がいた。後ろにはライシスもいる。おかしいな、さっきまでディエールと戦っていたはずなのに……。
「あれ!??」
「おい、大声を出すんじゃねえ! これから俺らは床下から突入する。お前は表の扉……いや、この感じだと敵は表の扉に寄りかかっているな。音でわかる。お前も床下から来い」
「了解……」
(おかしいな、作戦が変わっている……? いや、臨機応変なのはそうなんだけど……誰かと話していたような、そんな気がする)
?マークが大量に浮かびながら床下にうまく侵入できた。さあ、作戦開始だ。




