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旅立ちの日

後書き、読んで貰えるのか分からないのでこれから前書きにお知らせとか書きます。

今日はないです。カクヨムの方にもう数話投稿しているので追いつかせます

 ぶん、ぶん、ぶん。 長い棒がうなりをあげて行きかう。そのたびにぶら下がっているリンゴの皮が剥けていく。が、ほんの少し果肉が吹っ飛んでいく。ほどなくして、手を止めたニクスは地面に落ちた果肉を見つめる。アリが一匹、二匹と集まってきた。少し大きめなので運ぶのに手間取っているようだ。くるりと棒が回転すると果肉が二つに分かれる。ようやく持っていけるサイズになったようだ。アリは二匹がかりで運んでいく。


「体力がついた……って言っていいのかな?」

「ああ。未熟だが、確実にお前は進歩したよ。腐らず1年、よくぞやり切ったな」


 彼は自分をそう褒めた。思わず笑みがこぼれる。16歳を迎えたニクスの姿は見違えるようになっていた。肩の筋肉は盛り上がり、腕には余分な筋肉や脂肪など、かけらほどもついていない。ここまでこれたのは、今隣で腕組みをしながらこちらを見ている男の存在無くして語れない。最初の一言が、ニクスを大きく変えたのだ。


――話はさっきバアさんから聞いた。俺が稽古をつけてやる。



「本当にありがとう。最初は冷やかしだと思ったけど、いろいろ教えてくれたおかげで今の俺がある!」

「もともと冷やかしだぜ。『レベル1のまま15歳になった可哀想な子がいる』と噂に聞いてどんなもんか見に来たら、俺の一番好きな努力家タイプだったからな。肩入れしちまったのさ。ちょうど色々あって暇してたし」


 そう笑う二十代後半の男。彼は冒険者をしているという。名前はアージス。後で知ったのだが『不敗まけなしの男』の異名をとる凄腕の現役冒険者だ。


「さて、これでバアさんの所へ行ってみるぞ。一年前のステータスは覚えているな?」

「ええと……」


 体力が1、攻撃がカンスト、敏捷が普通だったはずだ。能力は『浸食する力』のフレーム2である、『真菌カビを操る能力』を持っている。今は定着したものを侵して自分ごと死滅させる特性を生かし、風呂のカビ掃除に使っている。これチートに見えるが、弱点として操り切れていないので少しづつ自分の体も浸食されているし、ほかの要因(主にレベルと体力)で病弱気味になっている。特に咳と鼻がひどく、しばらく前までご飯の味が分からない程だった。


「来たね。さあ、上」

「あ、はい」


 ヴィアドラに急かされ、慌てて上裸になると額に指が当てられ、紙に文字が浮かぶ。ステータスは……。


 体力:4.9

 攻撃:ERROR

 敏捷:60


「おおっとぉ!?」

「なんと……まぁ誤差だろ、こんな細々と数値化できるのはこのバアさんくらい」

「お黙り、クソガキ」

「えっへへ、サーセン」


 じろりと睨まれて頭を軽く下げるアージス。その顔からは反省の色が全く見られないが、そんなことよりちゃんと伸びていて非常にうれしい。思わず顔がほころぶ。実際0.1はこのまま怠らなければ到達までそう時間はかかるまい。

 と、自分たちのいるベンチの置かれた広場に一人の男が小走りに近づいてくる。


「アージスさん、あんたの連れって人たちが来てる。あんた仲間は作らないって聞いたことがあったが……」

「昔の話だ。今は幼馴染と一緒に動いてるんだよ。ちなみに聞くけど、一人は身の丈くらいの弓を持ってたか?」

「ああ、弓かはよく見てないけどなんか持ってたぞ」

「なら連れだ。それじゃあニクス、俺は迎えが来たみたいだから行く。堅固で暮らせよ。名前が俺のところまで来たら飯でもおごってやるよ」


 そういいながら、傍らに荷物が準備されていたのを俺は見つけた。それを気楽にひょい、と担ぐと彼はすたすたと歩きだす。ニクスは、今までの感謝を込めて深いお辞儀と共にこう言った。


「今まで世話になりました! すぐ追いついてやるからな!」


 ―――

 アージスは村の入り口で大きく手を振る細身の男の前に立つ。村人の情報通り、巨大な弓を持っている。背丈はアージスより少し高いくらいだ。彼自身もそこまで低くなく、180は超えている。


「あれが例のレベル1か?」

「努力家だもんで、少し仕込ませてもらった。わがまま言って悪かったな」

「気にすんな。俺もちょうど療養してたしおあいこだろ。この先で氷結ゼロガールと待ち合わせしてるからそこまで行くぞ」

「ニヴルをそう呼ぶなよ。同郷なんだからな?」


 へいへい、と生返事を返しながらアージスの少し先を歩くのはカリオート。彼と共に行動し、『弓の極致』の二つ名を持つ、恐ろしいほど遠距離戦に長けた人物である。二人は村を出てしばらく歩くと、ああ、見えてきた。


 透き通るような白い肌に黄緑の瞳を持つ女性がこちらをまじまじと見た後、満面の笑みで手を振っている。二人共にも手を挙げてそれに応じると、カリオートの左腕が凍り付く。ついでに表情も凍り付いた。

 彼女はこちらまで走ってくると、腰に手を当てて彼をずいっと睨む。先ほどは社交辞令みたいなもので、相当ご機嫌斜めのようだ。


「あんたねえ、人を氷結なんたらとか呼んどいて何か言うことは無いわけ?」

「あ、ニヴル。お久しぶりデース」

「話をすり替えんな! それにしらじらしい!」


 ノーガードでみぞおちに痛そうな一撃をもらい、地面に倒れて白目をむく親友にあきれながらもアージスも再会を喜んだ。


「久しぶり。1年、すまなかったね」

カリオート(へなちょこ)は仕方ない、あんたが噂の子を育てるって聞いて、私も実はあるを一年仕込んでたのよ」

「俺は卵をふ化させて1齢幼虫にしただけだよ、お前のが教えるのは圧倒的にうまいだろう」

「謙遜すんなって、お前適正と真逆の職に就いたじゃんか」



 うるせえ、とまたみぞおちに一発ぶち込む。カリオートはひっくり返った。いつまでも進まないので荷物と同じ感じで担ぎ、歩き出す。最後に振り返ると誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。


「ニクス、お前は強くなる。レベル1でもお前の力はとうに常人を超えてるよ。自信を持って歩くといい」




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