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折れる

更新空いちゃってごめんなさい!

 何のつもりだ、とこちらをにらむ組合長。その両目には、最上位のギルドに属する猛者を束ねる本気の炎が灯っていた。ガチギレさせてしまったようだ。が、そんなものはどうだって良い。

 どうせこいつは自分たちを力を誇示する人形にでもするつもりで、それがうまくいかなかったからもっともらしい理由をつけて『怒り』を正当化しているだけだ。


「戦いだと言ったはず、それにこの対戦カードはそっちが勝手に決めたものだ」

「ニクス」


 言い過ぎだとガレスに諭され、しぶしぶ後ろに下がる。彼女は組合長のほうを向くと、数枚の写真を胸の谷間から出す。ニクスはその動きにくぎ付けになった。ギャラリーたちも似たり寄ったりの状況だ。ガレスは、目を丸くしているニクスを見て「エッチねえ」と笑うと無表情に戻る。




 ――――そして、ウチの組合がこの祭りに応じた本当の理由が分かった。





「組合長……いえ、ペリドント。あんたは私たちに回ってくるはずの依頼を意図的に差し止めていたようだけど、何のつもりか説明しなさい」


「……ええ?」


「な、何のことだ!」


 その言葉を言い終わった途端、困惑するニクスと相手の組合メンバー。それと対照的に、ペリドントと呼ばれた彼はしどろもどろになる。ニクスはその写真を見ようと覗き込む。ガレスが見やすいように傾けてくれた。そこには見たことのない人と、目の前のペリドントがコソコソとお金を渡している場面が写されていた。


「これ、依頼を集約する業者の最高責任者なんだけど、お金を渡してるでしょ? この写真はね、あんたがガンドーの依頼に行くのと同じくらいにドラグレアが撮ったものなのよ。そして、ニクス達が捕らえた覆面の男が全て話した。それに、ライシスが炭にしちゃった以外の敵の死体の顔を確認したら、数人は業者の人間だった。あなたが一人残してくれたおかげで鼻っ柱どころか屋台骨まで折れちゃったってわけ」


 だから初めて会ったとき、彼はライシスに「妨害された」と発言していたのか。それに、彼の仕事内容も読めた。組合に依頼が回ってこない原因を突き止めるために動いていたようだ。当然の筋だと思う。周囲の人間も、こんな場所で明かされた衝撃の真実を飲み込めず、どよめきが大きくなっていく。抱えあげられている二人は、無言でペリドントの腕を振り払うとニクスの方に歩いてきた。ニクスはカビを解除すると、胞子に戻った黒い風がベルたち二人を追い抜いて行き、前よりずっと短時間で消える。

 当のぺリドントは、口角泡を飛ばしながら何かに怒鳴り散らしている。ほかの組合メンバーも、後ろの方で見ているフィラファスたちもその形相に唖然としていたが、彼女だけ我に返るとニクスの右側に立つ。結果的に彼女の望む結果になったことでニクスの株は上がりっぱなしだ。


「本当にあなたをスカウトして正解だったよ。でもまだ、世界を知らなすぎるからいっぱい人に出会って、助けて、守る。今回はまたイレギュラーだったけど……次は守れるような依頼を回すからね。これで依頼も元の流れに戻るだろうし」

「……帰っていいっすか?」


 大人の汚い話など聞きたくない。これでもまだ16なのだ。だが、ペリドントが顔を真っ赤にしながら立ちはだかる。暴いたガレスより、その前段階で逃げ道を絶ってしまっていたニクスのほうが許せないようだ。


「貴様さえいなければ……! ゆ、許さんぞ!」

「ベクターと同じくらいの年齢なのに、あの人と違ってただ歳くっただけなんだなぁ」


 どこかで「あいつ懲りねえな」という声が聞こえた気がした。ガレスも笑い、ニクスの後ろに回った。その言葉でさらに逆上したぺリドントは、まっすぐ突っ込んでくる。怒りのあまり能力も魔法も武器も、何も使わずに突進してくる。

 が、ニクスは迷っていた。友達を優先するつもりだからだ。主体性がないのは昔からだし、やるときにやればあとは巻かれとこうという考えが強い自分としてみれば、彼らの組合を潰すことになりかねないのは頂けない。一時的にでも職を失うということを考えると、拳を握ることができない。


「やって、ニクス」「熱いお灸をすえてやれ」


 いつの間にか奴から離れていたアレストとベルが今の気持ちを伝える。ニクスは思わず、「ほんとにいいの?」と聞いたが、二人は頷いた。なら、本気でぶっ飛ばしてやろう。


「ふっ!」


 地面を殴りつけると大量の破片が吹き飛び、一瞬浮き上がる。同時にニクスの姿が目視できなくなるほどの量の胞子がカーテンの様に地面を取り巻く。この二十日間の特訓の中で得たものは、真菌重槍と過淀流星群だけではない。いろいろな能力や技を再現、アレンジを加えて自分のものにしてきた。最終的には自分固有の技を編み出すための貯金というわけだ。これもその一つ。

 黒い小爆発が破片を押しだし、さながら誘導兵器の様にぺリドントめがけて飛翔する。


「シャドーミサイル」

「そんなものぉ!」


 上空に注意が向いたぺリドントのスキを突き、横を走り抜けると地面に突き刺さる槍を抜き取り、数歩前に出ると、カビの軌道が変わる。シャドーミサイルは奴の横や股下を潜り抜けてニクスの前でぴたりと停止し、緑色に発光すると、どこからともなく高い音が聞こえる。すると、突如発生した衝撃波で鉄柱や出店を支える杭などが抜け、カビに浸食される。ガレスを見たが特に何もしていない。もしかして自分?



 特に鉄柱は鉄分を媒介にする自分のカビと相性がよく、ニクスは少し元気になったのを感じた。


「行くぞ……! 過淀流星群!」


 槍を振ると隕石の様に飛んでいく。ペリドントはそのスピードに対応できず、最初に飛んだ一つに弾き飛ばされるが、流石の膂力だ。少し後ろによろけるだけだったが、その瞬間上空から大量に分裂した緑の雨が降る。周りの人々は逃げており、会場は始まる前より寂しくなりつつあった。あそこまで逃げれば当たらないだろう。ライシスの様に着弾点の操作はできないのが弱点と言える。


 出店や大掛かりな舞台などがその質量により粉々に崩れていく。当然ぺリドントなど無事で済んでいるはずがない。彼は直前までいた場所から数百メートル離れた場所で意識を失って倒れていた。彼も少しづつ黒くなって行っているが、感染したカビは解除したので大事には至らないはずだ。


 アレストとベルはどうするんだろうか。流石にやってしまったのはまずいのではないか? と思ったら別の一種組合が来た。フィラファスが「緑の場所は踏まないでください」と注意しているのが見えた。


「ようやく貴様の尻尾を掴んだ。……ちょっと君にも事情を聞かないといかんから、一緒に着いてきてもらうよ」


 数人がペリドントを運んでいく横で、ニクスは2人の組合員に挟まれて歩いていく。するとフィラファスが彼らに警告する。


「彼に手を出したら許さないよ」

「安心しろ、この子の力は想像を遥かに超えている。手を出そうとすればそこそこの犠牲を払わないと行けない。そんなリスキーな事を我々は望まない」


 こうしてニクスは、図らずして初めて知らない組合に行くこととなった。



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