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オールランダム

前作を見てくださった方、ブクマ、点数入れてくださった方、ありがとうございました。


またもカクヨムとなろうでの掛け持ち投稿です。


満を持して(大嘘)執筆させて頂きました。今冬にはコミケ出したいなぁ……などと思っております。では、よろしくお願い致します。

 ――残念だったね、キミ


 男にも女にも聞こえる、非常に中性的な声で突然呼びかけられた。何故自分はこんな真っ暗闇の中立っているのか。しかし口から出たのは別の言葉だった。


「残念? 何が?」

 ――君は世界からはじき出されてしまったんだから。要は死んだのさ。

「ウッソだろお前!?」


 そう叫びながら顔を触り、両手を見つめる。なんともない、いつもの体だ。何をふざけた事言っているのかと憤った。が、声の主の姿は全く見えない。そんな俺を制すように声は言葉を続ける。


「嘘じゃないよ。先に僕のことを教えてあげよう、僕に名前はないが、すべての生物は僕に対し『創造神』という認識を持っている。話を戻すけど、君はまともな死に方ではなかったということもあってね。まぁ、そこでだ。君はどんな世界でも良い、全てを運に任せる覚悟があるかい?」


 その声が言い放った言葉だけ見ると信ぴょう性は全くないが、不思議と納得できるのだ。これが全生物の持つ共通認識ということなのかと思う。


「何をするつもりだ?」

「知れたことを。2度目の生のチャンスを与えよう、と言っているんだよ。今言ったことを条件にすればそう難しくはないからね」


 まともな死に方ではないとは、いったいどう死んだのか。滑稽なのか、壮絶なのか。何となく前者の方だと思ってはいるが。そこで俺は考え込んだ。この声はなんの意図があって俺を蘇らそうとするのか。


「別に、気まぐれだけど? それにしっかり訂正しよう。蘇らせる訳じゃない。死人を生き返らせるのはルール違反だし、そのルールを作った存在として自分が模範を示さないとでしょ。君は最初からやり直すんだ、人生そのものを。



 ……さあ決めろ、時間が惜しい。創造神たるこの僕でも時の流れには逆らわない。君と会話している今、この時間でいくつ世界を作れるだろうね」


 その声に急かされるように俺は答える。


「分かった、その条件でお願いする!」

「決まりだね。しかしなんで敬語とタメ口が混ざってんだ?」

「癖です」


 そんな間抜けな会話を最後に、暗闇の奥に光がみえる。明かりに酔う虫の様に光に向けて歩き出した。誰かの声はもう聞こえない。光が大きくなるにつれて足も早まる。


 と、忘れてた。もう一つ、と声が後ろから追いかけてくる。


「人生をやり直すということは、受精卵からスタートってことだからね。生まれたとしても捨て子になるかもしれないし、腹から出ることなく逝く可能性もある。家の状況も最高かもしれないし劣悪かもしれない。それだけは記憶にとどめておいてくれよ。あと前の世界の記憶は全部消えるからね」

「了解。次の世界では社畜は嫌だ!」


 俺はそう怒鳴ると、光の中に飛び込んでいく。それを見届けた声は笑いと共にこう言った。


「君は苦労するなぁ。僕はそういうの、大好きだからね」






 ――――結論から言うと、家は貧乏ではなかったものの、物心つく前に父親が死亡し、母親は女手一人で俺を一人前の少年に育て上げた。俺の名前は、ニクス。今日で15歳だ。この国では15歳になった日に能力や潜在能力などを評価されて適職を紹介してもらう。二割くらいは紹介された職と違う職に就くが、大体紹介された職が天職となり引退まで続ける。


「次、ニクス! ニクス・テラーロック!」

「は、はい!」


 同じ日に15歳となった数人の列の一番後ろで待っていた自分にもついに出番が来た。緊張した面持ちでカーテンに覆われた部屋へと入る。中には椅子が二つ向かい合っており、片方は空いているがもう片方には白髪の老婆が座り、こちらをじっと見つめている。この老婆はよく知っている、男勝りな性格で父親の様に自分を見てくれたのだ。名前は、いつもばあちゃんと呼んでいるのでうろ覚えだがヴィアドラだった。俺は席に着いた。座るや否や、老婆は口を開く。


「今日はあんたの適正を見極めて進むべき道を示す、それだけさ」

「はぁ……」


 ピンと来ていないニクスに老婆はみんなそうだ、と頷く。


「それじゃあさっと終わらせるよ。上、脱ぎな」

「え? あ、わかりました」


 言われるがままに上半身裸になる。左胸と右腰にうっすらと太い傷跡が残っている。それを見た老婆は顔を曇らせると、こう続けた。


「まだ消えんか……のう、七つでこんな傷を負うなんて惨い……じゃが、皆がつてや能力で『奴』の行方を追ってくれている。ニクスよ、くれぐれも修羅道に落ちるでないぞ」

「わかってます。でも俺は憎いです」


 意味深な会話に、今まで気づかなかったが近くで控えていた、鎧を装着した兵士が居心地悪そうにもぞもぞとした。


「気を取り直して、やるよ」


 指で俺の額に触れると、彼女の前においてある紙に文字がすらすらと浮かぶ。五分ほど続け、指を話すと老婆はそれをこちらに見せてきた。


「とんだステータスだね。体力が常人の10分の1なのに常人の100倍の攻撃ができる。基本を10として見ているから、体力は1だけど攻撃は999……振り切ってるね。そのくせ敏捷が普通とは……しかし能力は最初からフレーム2ね、これは浸食……細菌か。ずいぶんピーキーじゃない? しかし足を引っ張るものがレベルだね……1は新生児と同じだよ。こればっかりはゴキブリを倒したりするとこから始めないとまずいかも。とにかくあと一年、何も考えずに体力を鍛えなさい。10は無理でも5くらいに。そうすればあんたの親父と同じ狩人に不合格スレスレでなれる」


 狩人とは、冒険者と並んであこがれの的とされる職だ。未開の地やダンジョンを調査、攻略することが主な仕事の冒険者とは違い、旅人たちにとって敵性存在となるモノを排除したり、村を盗賊やモンスターから守ったり、災害の際に人命救助を行ったりと『人』と密にかかわるお仕事だ。狩人は人気の分母数も多いが実は冒険者のほうが多いこともあり、輪をかけて人気となっている。


「ほんとですか? 俺も親父みたいにみんな守れるのか! やるぞ! でもどうしたら体力なんか鍛えられるんだ? やっぱり走るの?」

「あんたはもともと物干し竿とか竹の棒とかの扱いはうまかったから槍を学びなさい」


 彼女からそんな助言をもらい、槍を極めようと息巻くニクスであった。それからというもの、一年間ひたすらに走り込み、重りを付けた棒を振った。体力1は伊達じゃなく、軽いはずの棒を振っても5分程度で動けなくなる。レベル1も足を引っ張りトレーニングが進まない。レベルは心の成長や経験と体が培う経験が一定を超えることで上がるのだ。

 ニクスの、このレベル1は相当特殊らしく1から2に上がるためには常人が1から10に上がるための経験を積まないといけない。これがなかなか曲者で、この世界の人間が一生を終えるまでの平均レベルは20と非常に低く、100まで到達した人は歴代で一人しかいないそうだ。


 しかしニクスは腐らず、上がるんだか上がらないんだかわからないレベル2を目指してひたむきに頑張っている。果たしてニクスはこの絶望的ステータスを覆すことはできるのだろうか。



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