4.ノギの町へと
ソフィアとアリアの仲間達
4.ノギの町へと
翌朝。
同じ宿から同じ目的地、ノギの町へと行く荷馬車があったので、乗せて貰って揺られている。乗る前にソフィアは五角形のサイコロを手に持って戒律とか規律とかを口籠もっていたけどヴィオラさんの「んじゃ、ワタシが『ノギの町までの護衛を依頼します』って事で」という一言で決まった。依頼を実行中とか、緊急事態対応中は規律とか戒律は関係ないことになるらしい。「しかたありませんね」と不承不承な感じだったけど……ま、そこは敢えて突っ込まずに置きましょ。調子悪そうだから、あんまり歩きたくは無いはずだ。実際、サイコロの結果の一つは『踵歩行』というつま先と踵を付けてながら歩くという……つまり一歩が靴の長さしかないという極めて移動速度が遅い戒律だったし。
ちなみにだ。アタシ達の目的はノギの町近くにあるという古代遺跡。その遺跡に在るであろう金銀財宝を探し当てるため。んで、ヴィオラさんの目的は……昨夜聞いたとおり、婿捜し。
「ノギの町で武術大会があるらしいんだよ。御先祖さんと同じ名前の町だから……良いコト在るかも。ま、伝承の聖宝の槍というか大長巻とかだかが失われるぐらいの御先祖さんだから御利益は怪しいけどね」
その優勝者若しくは上位成績者で、独り身なのを捕まえる計画らしい。
確かに、ヴィオラさんほどの美貌とプロポーションとアィルコンティヌ寺院出身者という経歴からすれば落ちない男は、恋人が居るか、既婚者か、戒律に厳しい僧侶ぐらいだろう。
いや、恋人が居たって、既婚者だって、僧侶だって、落ちてしまうかも知れない。
「もし……そうなったらどうするの?」
「かははは。面倒を起こす気はないから、そういうのはコッチからお断り」
ふーん。やっぱり寺院出身者だけあって真面目だな。
「……それよりさ」
悪戯っ子っぽい目でアタシを見て、ソフィアに気づかれないように小声で言った。
「ちゃんと白魔法とかの法術、教えてあげようか? 治癒の魔法とか……」
んんんっ! ひょっとして……昨夜の見てた?
「かはははっ! 折角、振動数が正六角形なんだから、憶えておいても損はないと思うよ?」
くぅっ……所謂一つの褒め殺しかいっ!
……って、ふと……視線を感じて振り向くと……ソフィアがジトっとした目でアタシとヴィオラさんを見ている。
ソフィアには出逢ってから色々と法術の手ほどきを受けているけど、なんか変なんだよね。治癒系のは、まぁそれなりなんだけど、攻撃系のはやたらとパワーアップしたのが出てくる。元々、途中をすっ飛ばして陣形態とか帯形態なんかが得意なんだけど、飛礫形態や鞭形態、矢形態も……なんか暴走したのが出てくるんだよね。槍形態なんか巧く形にならないし。でも、ソフィアを置いて他の人に教わってもね。更に暴走したらどうしようもなくなるし……
「ん〜〜〜。時間があったら宜しく」
「あ〜。そだね。時間があったらね。そうそう。ソフィア、アンタの右肩に傷跡があるよね。ワタシが癒そうか?」
「結構です。って、法力振動数が2のヴィオラさんじゃ私の振動数に合わないじゃないですか。無理に術をかけて貰ったら……法力量が多すぎて筋肉が弾け飛ぶかも知れないし」
なんか怖いことを言っているけど……ヴィオラさんが反論しないで頭をかいているところを見ると……事実っぽいな。
「ソフィアの法力振動数って幾つなの?」
話の方向を逸らそうとしれっと聞いてみた。
「私の振動数は1。浄化の術……というかこの杖の振動数が1らしいのよ」
「そういうこと。振動数が完全な1か7じゃないと持てないらしいよ。その杖は」
ふ〜ん。確かに杖の小口は七角形だし。……その辺の関係かな? 側面は四角じゃなくて三角形というのは……関係ないか。
まぁ、そんな他愛もないことを言い合いながら……昼前にノギの町に着いていた。
読んで頂きありがとうございます。
これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。
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