2.宿にて 3
ソフィアとアリアの仲間達
ふむ。確かに綺麗な正六角形だ。……けど、ソレが何か?
「普通の人は2〜4なんだけどね。振動数は。しかも綺麗な形にならないから法術……白でも黒でもちゃんと形に成り辛いんだけどね。こんなに綺麗なのは初めて見たよ」
感心しているヴィオラさんの説明にソフィアが付け足した。
「普通は綺麗な形にならないのよ。それに6って完全数だから……どんな魔法も使えるわよ」
ふふん。なんか自慢したくなってきたぞ。
『◎……そだね。だからくっついていると心地良いし』
『○眠たなってくるし』 『☆楽やし』 『★心地ええで〜』
ひっついていた人形達が眠たそうな声を頭に響かせてまた、目を閉じてひっつき直した。
「どゆこと?」
問うアタシにソフィアは困ったような顔で、ヴィオラさんは笑いを堪えるような顔で応えた。
「その子達は精霊だから……ね」
「そうそう。そうね。アリアの振動数は精霊並みに綺麗だって事だよ。かははは。それにしてもノーラがワタシに引っ付かないのは初めて見たよ」
しっかり笑い出すし。ノーラが昔、ヴィオラさんにくっついていたって事は……ヴィオラさんは土の精霊と仲が良いのかな? ま、兎に角、アタシが黒魔法が陣形態まで憶えたのは素質だって事ね。
「ところで……ヴィオラさん。何しに人間界に来たの?」
アタシの問いにヴィオラさんはちょっとだけ表情を固めて……すぐににっこり笑って応えた。
「一言で言えば婿捜し。寺院から出されちゃってね。故郷に帰ったんはいいけどさ、まぁ、なんか居場所が無くてね。婿取って子供でも作ろうかなと」
んむ? 寺院を出た? ソフィアとは事情が違うのかな?
「寺院を卒業したの?」
「ん〜。ちっょと違うかな。新人が多数入ってきたんで、ある程度のレベルに到達したのは出された……という感じかな。まぁ、教育担当尼僧として残る手もあったんだけどね。アンタみたいのは国に帰って来たるべき魔王との戦いに備えなさいってさ。でも、魔王が復活するとは限らんし……」
んんん? 魔王が復活しない? 光の杖を持つ尼僧……つまりソフィアが光の杖を掴めたから魔王が復活するって周りに言われて家族と引き離されて寺院に入れられたのに?
そうそう。言い忘れたけど、ソフィアが旅をしているのは別れさせられた家族を捜すため。引き離されたときに浄化の術で記憶を消されたんで実際に家族と出逢っても、判るかどうか判らないという状態になっているんだけど。それでも、家族を捜す旅をするために寺院を出てきたんだけど……
魔王が復活しないんなら……ソフィアが家族と引き離されることも記憶を消されることもなかったんじゃない?
なんか腹が立ってくる。
「なんで? 復活しないの? それならソフィ姉ぇは……」
別に魔王の復活を期待している訳じゃないからね。ソコ、勘違いしないように。
むっとしているアタシに驚いたように真顔に戻って……ソフィアをちらっと見てからヴィオラさんは説明を続けた。
「ん〜 アリアの気持ちも判らなくはないけど……みんな、魔王の復活って言葉というか事柄に捕らわれすぎているような気がするんだよね。実際、光の杖を持つことが出来た人は過去千年間にも何人か居たみたいなんだけど……実際、魔王は千年間、復活していないし……」
なにぃ? 掴めた人がいた? つまりぃ……え〜と。……どゆこと?
「その掴めた人はどうなったの?」
「判らない。寺院の歴史書にも詳しく書いてなかったしね」
ヴィオラさんにとっても謎らしい。
続けて聞いた話によると……光の杖は年に1回程度は寺院に届けられて、修行していた尼僧達が持つ事が出来るかどうかを試されていたらしい。ちなみに三大修行尼僧でもヴィオラさんは全然ダメ。ラディアさんで数瞬、ネメシアさんで数息程度の間は持つことが出来たらしいけど……
アタシなんかが触ったら……指先だけでも痺れて数息は何も持てなくなるぐらいの威力というか法力があるのさ。この光の杖は。
「多分、寺院の中で持つことが出来たというのは世間には広めずにそそのまま寺院関係者の秘密という事にしていたみたいなんだよね」
秘密にしたい相手というと……寺院関係者ではないよね? 魔王関係者に判らないように……という感じだろうか? でも、なんか引っかかるな……
「さて、話はコレでお仕舞。もう遅いから眠りましょ」
と、切り上げて、ヴィオラさんは小深鉢の霊精を一気飲みした。
「ん〜。やっぱソフィアの霊精は純度が違うね。暑さボケした頭と身体に染み渡るよ」
そういや、ヴィオラさんって三大修行尼僧の1人なのになんで山賊に負けてたんだろ?
暑さボケ? それだけなのかな? ま、関係ないけど……
読んで頂きありがとうございます。
これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。
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