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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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27.精霊への 2

 ソフィアとアリアの仲間達

「そうさ。精霊ノギ。ワタシはアンタの末裔のヴィオラ・ノラネだ。そっちの幽霊もアンタの末裔のネメシア・ノラゼ。末裔が……聖アィルコンティヌ寺院で修行した末裔が御先祖様に呪いなんかかけないよ。誤解は精霊に相応しくない。さっさと改めてくれない?」

 あの〜 精霊に対して馴れ馴れし過ぎると思うんですけど。

 幾ら血縁だとしてもね。

「闘ったというのが問題だというならば、私にも責任がある」とギザキさんが前に出た。ギザキさんも物怖じしないタイプだったんだな。魔獣なんかと闘って聖宝の一つや二つ持っていそうな頼もしさだ。

『誰だ? 名乗れいっ』

「我が名はギザキ。本名はギーザ・ワルト。無論、私も相手を斬ってはいない。グレイ、ノィエは闘ってもいない。精霊。貴方の怒りを此処にいる者達に向けるのは理不尽だ。改めていただきたい」

「そうよ。幾ら精霊だからといってもその怒りは理不尽だわっ!」

 あらら。ノィエまで割り込んで来ちゃった。

 これだから世間知らずのお嬢様は……

『その小さいのは誰だ?』

 困惑気味の問いかけだな。精霊も手に余るのかな?

「私はノィエ。ノィエ・ノート・ワネル。ノ・トワ城の城主よっ!」

 おーい。フルネーム言っちゃってるぞ〜

 まぁ、呪いをかけるような人間は此処にはいないからいいか。って、城主だったの?

 随分と天真爛漫な城主さんだ。

『ノ・トワ城だと? 其方が城主だと?』

 精霊さんも困惑しきりだ。

 しかしソフィアが直した城がそんなに有名だったとは……

 もう一度行ったら宝物とかを捜してみよう。

「闘いが問題というならば、アタシにも責任がある」

 何故かエァリエスさんが精霊の悩みを無視してずいっと前に出た。

 まぁ……『理不尽な怒りを先に収めろ』という意味の行動なんだろう。

 エァリエスさんも曲がったことが嫌いなんだろうな。

「アタシも審判としてだが闘技場に立ち、そして失格者達を止めるために闘っている。序でに言えば……」

 後ろにいるグレイさんに視線を投げた。

 グレイさんはあたわたと慌てていたけど、意を決して前に出ようとした。が、エァリエスさんが先に言葉を続けた。

「コイツも暴漢を抑えるために手を出している。闘技場の脇だけどね。そういうのも問題なのかい?」

 エァリエスさんの斜め後ろでグレイさんが転けていた。

 出鼻を挫かれる。という場面を実際に目の当たりにしたんだけど……かなり滑稽だ。

『誰だ? その薄汚いのは』

「失礼しました。私はグレイ。白魔導師の職を辞し今は人形遣いとして生を無為に過ごしております。ところで……」

 すすっと前に出たグレイさんは恭しく礼をしながらも……精霊を見る目は……何処か鋭い。何か決意しているような……

「先程『我が剣』と仰りましたが……それは」

 グレイさんはすっと手でネメシアさんを指してから言葉を続けた。

「……あの剣のことでしょうか?」

 そう言えば『我が剣』って……呪いをかけたとかも言っていたな。

『そうだ。我が魔王を倒した証。我が牙と爪とで魔王の牙を封じた剣。何故に呪いと穢れに塗れ……今はまるで魔剣。其処までの穢れと呪いを施した者を……我は赦すわけにはいかぬっ!』

 精霊の怒りが見えぬ威圧となって嵐のように吹き荒びアタシ達をたじろがせた。

 ……いや、たじろいだのはアタシとノィエだけだ。

 グレイさんも、ギザキさんも、ネメシアさんも、ヴィオラさんも、そして、勿論、ソフィアは凛然として精霊を見つめている。

 エァリエスさんは……戸惑っている感じたけど……

「あれは……その剣は……魔剣ではないのか?」

 ……そうだ。その剣は魔剣だとエァリエスさんから聞いたんだな。

『違うっ! 我が聖戦での証。我が威信の証っ! 血塗り、穢れさせ魔剣としたのは人間達の本意かっ! ならば、次なる争いには我は人間の陣営に加わることは……』

『お待ち下さいっ!』

 別の声が頭の中に響いた。

 天使の如く、妖精の如く、天から響いたかのような清らかな声。

 この声は……

『我が祖先。精霊ノギよ。我が名はネメシア。ネメシア・ノラゼ・エムル。末裔の一人。そして聖なる光の陣営の一人として闘うことを誓った尼僧。プラチナム・ランスの称号を持ち、浄化の術を基本魔法とする者。そして……』

 ネメシアさんは……すぅっと前に出て……そのまま石像の正面まで空中に漂い浮かんだ。

『落命し、法力の残り火でここに辿り着いた者。我が残る法力の総てを持って……』

「やめてっ! 消えちゃダメッ!」

 思わずアタシは叫んでしまった。

 ネメシアさんは……ちょったとだけ振り返って……にっこりと笑った。

 まるでこれからすることが……運命。

 その運命を享受するかのように。アタシ達に『心配しないで』と囁くかのように……

『我が法力の総てを持って、この剣の穢れを祓い、呪いを浄化して参りました。そして、これで……』

 ネメシアさんは両手で捧げ持つ剣の柄に手をかけて……すらりと抜いた。漆黒の……まるで闇を顕すかのような暗黒の刀身が異様さを霞として放っていた。


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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