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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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27.精霊への 1

 ソフィアとアリアの仲間達

27.精霊への

 石像は地に伏せ付けられながらも何かを睨んで起き上がろうとしているような姿のまま固まったような姿。ただ……異様なのは石像に深々と突き刺さった石の槍? 遺跡の天井を突き破って、石像の首から左胸に向かって石柱のような槍が深々と突き刺さっている。そして突き刺さっている辺りが黒く変色しているのは……呪いの力の所為だろう。

「こ、これは……」

 ギザキさんが驚く。ノィエも声を出せずに驚いている。二人には何か似た様なことでもあったのかな? 「こんな所でも……」とか呟いている。ヴィオラさんも少なからず驚いていたようだけど、ネメシアさんとアタシとグレイさんは……予想していたことだ。

 町の周りの遺跡跡。アレはこの石槍を封じるための遺跡。若しくはこの遺跡を防御するための遺跡。それらを破壊して石の槍を石像に突き刺した。

 誰が? 決まっている。石像が顕している精霊。精霊ノギを次の聖魔大戦に参加させないが為の封印呪。つまりは精霊ノギの末裔であるヴィオラさんとネメシアさんを敵とする者。

 闇の勢力だ。

 ソフィアは黙ってみていたけど……ぎゅっと握った拳が震えている。エァリエスさんは……静かに眺めていたけど、少なからず怒っているようだ。

 「悪戯にも程がある。神殿を戯れに壊すなんて」と呟いているし。

 そうだね。どう見てもこの遺跡は精霊を祀る神殿遺跡。信仰の対象である石像を壊すなんて聖魔大戦を別にしても悪意に決まっている。

「つまり……あの石の槍は……? あの魔水晶の? 柱?」

 ノィエが誰と無しに問う。

「そう。上の……町の中央にある闘技場の石柱。この石像を封じ、さらには呪いで縛り付けるための……」

 アタシの推理を全員が黙って聞いている。と、アタシ達の後ろに従って入ってきた砂人形の女性達が壁際に並び立ち……床から低く立っている石筍の上に置かれたモノを手にとって音を奏で始めた。見れば持っているのは楽器。笛やら鈴やら……何体かが手持ち無沙汰に何もせずに立っている。

 (そうか……)

 アタシは荷物の中から……陶器の笛やら鈴みたいのを取り出して……楽器を持っていない砂人形達に渡すと嬉しそうな表情になって……軽く会釈して受け取って……たおやかな仕草で音を奏で始めた。

 砂人形達の演奏は……何処か儚げで、悲しそうで……でも勇ましげな……鎮魂歌のようだ。

 皆が黙って音に聞き込んでいると……どこからか光りが差し込んで……何処から? と捜すとそれは石像。石像の目が開き……金色の光りと共にアタシ達を睨んでいるっ!

『人間……そこな人間。オマエは誰だ?』

 頭の中に声が響く。これって……石像の? いや、精霊の声っ?

「私はソフィア。アコライト。アィルコンティヌ寺院より修行の旅を赦され、この町に参りました。基本魔術は浄化。称号はプラチナクリスタル。お見知りおきを……」

『オマエではない。侍女達に術を放ったオマエだ』

 んん。アタシのコトか。というか精霊だけあって偉そうだな。

「アタシはアリア。遺跡探検家。アチコチの遺跡を捜してるわ」

『遺跡探検家? 黒魔導師ではないのか?』

「違うわよ。黒魔法は自衛のため。独学で憶えたわ。選礼式で引いたのは……」

 ……なんだったっけ?

『自衛で? しかも独学で陣形態まで習得するとは……』

 構わず自分の都合で話を進める精霊さんだこと。まぁ、精霊でも驚くぐらいなんだから自慢して良いんだなと再確認〜

 ふふんだ。

『ならば聞くっ!』

 一際大きく精霊の声が響く。

 威圧感というか足元を揺るがすほどの聖霊の声に身が震えた。

 砂侍女さん達も演奏を止めてしまった。

『我が剣ばかりか我が身に呪いをかけるとはっ! これは人間界の真意かっ! さもなくば如何なる所存の所作かっ! 些末なる虚飾を廃し真意を述べいっ!』

 吃驚して声が出ない。

 え〜と。つまりアタシが呪いをかけたと……誤解してなさる?

 というか、アタシは人間界の代表だと?

 光栄すぎて固まってしまった。

「お待ち下さいっ!」

 一歩、前に進んで声を出してくれたのはソフィア。やっぱり頼りになる。

「私は光の杖の継承者。魔王との戦いの義務を負う者。我らの誰も貴方様に呪術を施してはおりませぬ」

『ならば何故に闘ったっ?』

 精霊の怒りは収まらない。

 なんだ? 闘ったって?

『闘技場で血を流す。流させるということは我が身への呪いの力を増幅させる。何故に闘い呪縛を増補したっ?』

 ……そういう仕組みだったのか。

 どうりで石柱に魔石があったわけだ。

「お言葉を返させていただきますが……我らは誰も血を流させてはおりませぬ」

 凛としてソフィアは言い返す。確かに……ヴィオラさんとギザキさんの2回戦目からは見てないけど……二人の戦い方からして相手の血を流してはいないだろう。

「そして私も後ろに控えるヴィオラも他の戦いで負傷した方々を総て治療いたしました。そして浄化も致しました。少なくとも……今回の戦い……闘技大会では血は……呪いは増補されてはおりませぬっ」

「そうだ。御先祖様。アンタの末裔が呪いをかけることなんかに手を貸したりはしないよ」

 ヴィオラさんが一歩前に進んで声を出す。

 頼もしいぞ。

『末裔だと?』


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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