26.遺跡の中へ 2
ソフィアとアリアの仲間達
次の間は……直ぐにあった。
手前の床に刻まれた大文字は『力』。
一歩進むと……床一面の砂が固まり……巨大な猛獣……虎のような獅子のような……兎に角、猫系の猛獣の姿になった。
「ん。じゃ、此処はワタシだけで……」
すっと前に出たヴィオラさんが人化の魔石を外してアタシに預けて服をささっと脱ぎ……直後に相手よりはちょっとだけ小さな猛獣へと姿を変えた。
出逢ったときは『猫』っぽかったけど、今の姿は……まさしく魔獣。
いや精霊獣。
牙も鋭く、爪も鋭く長い。だけど爪も牙も相手が砂の身体で役に立たない。通り抜けるだけだ。
「ヴィオラさんっ! 七芒星っ! 7箇所の七芒星を咬み抜いて……咬み伏せてっ!」
床の古文様には『咬み伏せよ』とある。
つまりは相手の身体に幾つかある七芒星だけは咬み付くことができる……ハズ。
すかさずヴィオラさんは咬んで相手の身体を背中から床に叩きつける。
最後は喉の七芒星。
咬み伏せると……猛獣は砂に変わって消えていった。
「なんだ。大したことはなかったね」
って人化の魔石を付けてあげて戻ったときのヴィオラさんの言葉……は兎も角っ!
早く服を着てくれないとギザキさんがノィエに首を曲げられて呼吸困難に成りつつあるんですけどっ!
グレイさんはさっさと後ろを向いて……エァリエスさんのギロ目睨みをさっさと避けていた。
先に進むと……元の場所。最初の部屋に戻った。
皆は不思議がっていたけど、アタシとネメシアさんには既知だ。
『古き光りより』だから西から戻るわけだな。……どういう理屈というか機関なのかは知らないけど。
今度は北へと進む。
南へ行ったら出口というか元に戻るからね。
次の間は……やはり砂の床。
一歩進むと……砂が数体の女性? の姿となり……手に持つ杖でアタシ達を押し戻す。
ギザキさんとエァリエスさんが瞬後に対応していたけど……殴っても剣で斬りつけても相手は元の姿に戻る。
七芒星は……額というか眉間にあるけど打ち抜くだけじゃダメだ。
「みんな、下がって。ココはアタシの出番」
アタシの声にエァリエスさん達は後ろに下がる。
相手は追ってこずに……部屋の真ん中あたりで佇んでいる。
部屋の手前の床に刻まれた大文字は『術』。
ソフィアやヴィオラさんのほうが法術としては遙か上の実力だけど此処はアタシじゃなきゃダメなんだ。
何故ならば『術』の文字の下に小さく書かれてある単語は『攻撃』。
攻撃呪文は黒魔術。つまりはアタシの出番だ。
見てらっしゃい……と力んだらちょっとだけ眩暈がして……床にへたり込んでしまった。
うぅ。か弱い乙女だなぁ。アタシは。
ふと、視界に筒が差し出された。見れば……水筒。
ネメシアさんが『しっかりとね』みたいな感じで差し出している。
え〜と、この中は……確か霊精?
ふむ。飲めということならば飲んでやろうじゃない。
法力の源なんだし。虹色に煌めく液体を一気に飲み乾した。
って、飲んで……後悔した。ちょっとだけ。
何というか……舌先が痺れてその痺れが全身を駆けめぐって、脳天に抜けていく感じ。
きつい炭酸水を全身の毛が逆毛立つぐらいの稲妻仕立てにした……そんな感じた。
こんなのよく飲んでいるな〜……とはいえ、法力的には力が漲ってきているような……んむ。何はともあれやってやろうじゃないっ!
ふぅと一つ深呼吸をして有りっ丈の力を込めて術を放った。
「岩硬鋭牙陣っ!」
地面から無数の硬い岩の牙が天井に届かんばかりに顕れて砂人形達を呑み込み……砂埃に包まれた。
やはりこの場合は土系の呪文だろうね。
……と、自己満足に浸っていたら、かくんと膝が抜けた。
うぅ。やはり、この集まりの中ではアタシが最弱だな。
砂埃が収まって……見れば、砂人形の女性達が何事もなく佇んでいる。
ありゃ? 失敗?
とちょっとだけ目を丸くしていたら……先頭の砂人形の方が小さく拍手? しているような? で、程なく全員が深々と会釈して、アタシ達を「どうぞ」と言わんばかりに部屋の奥へと導くように脇へと並び立った。
ふふん。どんなモノよ。
と威張りたかったけど、床にへたり込んだまま。
ソフィアに起こされて……「お疲れさま」とヴィオラさんが抱き上げて奥へと進んだ。
奥は……広いホール。
そしてホールの壁一面に今となっては見慣れた特徴的な呪紋様。
精霊ノギの精霊契約文書にあった象徴文様。
その呪紋様の中にあるのは……巨大な石像だった。
読んで頂きありがとうございます。
これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。
感想などいただけると有り難いです。