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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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24.遺跡への……

 ソフィアとアリアの仲間達

24.遺跡への……

 叫んだ後で……何故か冷静に戻った。

 アタシに今、できること。それは……足掻くことだ。藻掻くことだ。今、できることを全部してやるっ!

 身体の姿勢を入れ替えて背中から落ちるのを真っ正面に変えた。

 頭の先に地面が見える。迫る地面を睨み付けて……アタシは術を放った。爆空陣。純粋な風の術の陣形態。圧風が落下速度を落とすはずだ。ほんの少しだけでも……

 けど…… 術は効かなかった。いや、発動しなかった。

「なんでよぉおぉぉぉぉっ!」

 叫び声が地面に反射してアタシの耳に届いたとき……視界の隅に影が……しかも3つ?

 直後に……地面が爆発して……視界は真っ暗になった。


 目を開けると……見覚えのある姿があった。

「グレ……イさ……ん? げほっ……げふっ」

 気持ち悪い。やっぱり何処か打ったようだ。起きあがれない。

「大丈夫。衝撃が大きすぎたようですが、大した怪我はありません。暫く横になられていたら、楽になりますよ」

 たぶん……あの影の一つはグレイさんだ。ということは……朝からずっと後ろを付いていたんだな。見守るために。そしてアタシが落ちるのと同時に崖から飛び降りて……助けてくれたんだな。

 ふと、見れば……グレイさんの額から一筋の……紫色っぽい血が流れ落ちている。

「ありがと。グレイさん、怪我したの? 血が出てるよ」

「あ……いやぁ。私の術とノーラさんとウェンディさんの術がぶつかってしまって……最弱の私の術が弾かれたという……まぁ、私が未熟者という証ですよ。気になされずに」

 そか。ノーラとウェンディも助けてくれたんだ。ちょっとだけ目を動かすと……頭の横で心配そうに見ているノーラとウェンディもいた。そしてその後ろにネメシアさんも。

「ありがとね。どじったアタシを助けてくれて……」

『○気にせんと。も少し巧く助けられたんに。慌ててしもうて……』

『◎……大丈夫。少しだけ休んだら歩けるようになるよ』

 空の青さが染みるなぁ……心の中に。

「そういえば……グレイさん。教えてくれる?」

 身体はまだ動かない。でも頭は動く。何処か怪我したのかを……不安をかき消そうとアタシはどうでも良いようなことをグレイさんに尋ねた。

「アタシね……術を放ったんだよ。風の術。なんでか発動しなかったんだ。……何故かな?」

 多分、慌てて呪文でも間違えたのかも知れない。でも……確かに放ったんだ。

「それは……放ったのは風の術ですよね?」

 グレイさんは……地面の砂を一掴みしてみして……アタシに見せてくれた。磁結晶か霊結晶の粉かな? なんかキラキラと虹色に輝いている。

「この砂は……霊結晶が砕けてできた砂。風の術が発動できなかったということは捜している遺跡は土の精霊の縁の遺跡……精霊神殿かもしれません。コレが古の神殿の石柱などが砕けてできた砂だとすれば……風の術は無効化されますね」

 そうか……土の精霊の……神殿かぁ。じゃ相剋の風の精霊の術は……効かないね。

「なんだ……だったら……土爆陣にしとけばよかった」

 だめだな。その術じゃアタシの身体へのダメージが大きすぎる。

「ははは……そんな強力な術は使わないでください。私まで吹き飛ばされてしまいますから」

 グレイさんって良い人だな。どうでも良い愚痴を冗談にしてくれる。ギザキさんが信用するわけだ。

「それにしても……」 ん? 何か真剣な面持ちだな……

「陣形態なんて……凄い術を知っておられるのですね。感心しました」

「ん? ん〜強くなりたかったからね。小さくても手軽に強くなるには剣術よりも魔法術の方が手っ取り早いからね。店というか家にあった古い魔法術の本を読み倒したんだ」

「なるほど。古魔術ですか。ならば強力な分、精霊界の力を多めに使いますからね。精霊の機嫌を損なわないようにしませんと……」

「ふ〜ん。そうなんだ」

 やっぱり、グレイさんって白魔導師としてもかなりのレベルだったんだろうな。話し方に澱みがない。

「しかし……何故にそこまで憶えられたので? 大抵は魔法術呪文は知って唱えられたとしても発動するところまでは到達しませんのに……」

「強くなりたかった。それだけだよ。そうしたら……襲われても……に迷惑かけずに……」

「……誰にです?」

 あれ? 誰にだ? どっちかというと魔法術を憶えた所為で家族には迷惑かけていたような気が……それなりにというか、かなりするけど……

 応えられないアタシを気遣ってか……グレイさんは話を変えた。

「しかし……貴女の調査能力には驚きました。半日で対象箇所の半分を踏査するのですから」

「ふふん。遺跡調査は本職ですからね。お任せあれ……あれ? ノィエだ」

 崖の上にノィエの姿が見える。何か叫んでいるけど……聞こえなくても言っていることは判る。

 やっとこさ動くようになった左手で手を振る。「大丈夫だよ」って言っても聞こえそうにもないから……

 ふと……アタシの目の前に小さな光の珠が上空から現れて……ふっと消えた。

「おや? ソフィア様とエァリエスさんも来られたようですね」

 視線を町の方角へと変えると……崖の上にソフィア達の姿が見える。今のは……ソフィアの探索用ウィスプだな。アタシを捜してくれたんだ。きっと……

 二人とも息を切らして……髪が乱れている。元気になったらまた梳かしてあげよう。

「では……このままソフィア様の所へお届けいたしましょう。ノーラさん、ウェンディさん、ネメシアさん。アリアさんについていってもらえませんか?」

 と、アタシを抱き起こすと……ノーラとウェンディをアタシの上に乗せ、ネメシアさんに近付き……グレイさんは何やら呪文を唱えた。

 途端に……アタシ達の身体を虹色の大きな球体が包み……空中にふわりと浮いた。

「では……私はノィエさんと一緒に帰りますから」

 虹色の球体は……ゆっくりと上昇して……ソフィアの方へと運ばれていく。

 グレイさんはと見れば……崖をすたすたと歩いて登っていく。垂直な崖をだよ? あれは岩蜘蛛の術なんだろうけど……あそこまで使いこなす人は初めて見たような。

 と、ネメシアさんが真剣な面持ちになっている? 首を動かすと……崖の中腹に洞窟。そして洞窟の両側に……石柱のリレーフ……の刻みかけ? 洞窟の奥深くまでは古い呪紋様が刻まれている。石柱のリレーフとして刻まれた呪紋様……それが記憶にある闘技場の石柱の呪紋様と結びつき……不意にそれぞれの呪紋様の意味が理解できた。一瞬に。

 (そうか……『幻は古の……』)

 アタシの中で何かが一つの糸になって繋がった。



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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