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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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23.遺跡探検へと 3

 ソフィアとアリアの仲間達

 驚くしかなかった。ノィエの家族って……闇の眷族、いや魔王を崇める勢力達の手によって撒かれた毒によって死んでしまったことをアタシは黙って聞いていた。唯一生き残れたのがノィエだけ。姉のノェアさんは寺院に修行していたから難を逃れたらしいけど……

「だから……信じられなかったの。闇の……魔王と闘うって人がこんな所で……修行と関係なさそうな事をしているなんて」

 まぁ……そうだね。ソフィアの事情を知らずに光の杖を携えた尼僧の存在だけを知っていたら……そう思うよね。

「大丈夫。修行なんてモノは何処でもできる。実際、今、誰彼と無く治療しているのも修行の一つ。自分の都合だけを考えているんだったらそんな事しないでさっさと旅立っているわよ。それをしないで……アチコチで……頼まれたら頼まれたコトを必要充分以上に応えてきた。頼まれなくてもね。それがソフィア。ソフィ姉ぇの性分。大丈夫。魔王が復活したって……一番に駆けつけて一撃で倒すわよ。きっと。それだけの実力があるって認められたから寺院を出て旅することを赦されているんだから」

 闘技大会でのソフィアの闘いを見ているだろうから……ノィエも実力は判っているはず。

「ん。そうだね。魔王を倒す、世界を救うってコトは……みんなを救うってコトだものね」

「そ。ソフィ姉ぇがここにいるってコトは魔王が復活していないって事。復活する兆しもないって事。居なくなったら……黙って居なくなったら……」

 そうか。アタシは自分の言葉で……何日か前の……あの夜の自分の気持ちが判った。でも……何か違う気も……している。

「そうか。ここにいるって事は世界がまだ平和だって事なのね」

 ノィエはアタシの気持ちも知らずに……アタシが言いたかったことだけは判ってくれた。

「ん? どしたの?」

 ノィエに尋ねられて……アタシは自分の戸惑いがなんなのかを考えるのを止めた。

「ん。何でもない。兎に角っ! ソフィ姉ぇは歴代の光の杖の所持者の中でも史上最強っ! ってヴィオラさんもここにいるネメシアさんも太鼓判を押してくれているし。ここにいるコトを心配しなくても良いってコトだけは確かだ……とアタシは思うよ」

 実際、法術の威力とかを見ても桁外れの桁が想像以上に違うことだけは確かだ。

「ん。判った。私が自分の事だけで考えていたみたいだね」

「そりゃ仕方ないわよ。誰だって自分の事から推し量るしかないんだから……あ、そうだ。今話した事はソフィ姉ぇには内緒ね。約束してよ。自分の事をあまり周りに話さないんだ。最近は……」

 そうだ。それは最近のコトだな。アタシに逢ったときには直ぐに話してくれたんだけど……近頃は黙って武器屋さんを捜して……黙って次の町へと旅している。

「判った。約束する。話してくれてありがとう」とノィエは飛びきりの笑顔で応えてくれた。

 ん。流石はお姫様らしい雰囲気が漂うお嬢様だ。穢れを知らない少女ってこういう笑顔なのよって言わんばかりの眩しい笑顔だ。

「ありがと」負けずに飛びっきりの笑顔で応えてみたけど……眩しさでは自分でも負けた気がしているのはきっと気のせいだろう。


「ふぁ〜 良い天気だな〜」 昼を済ませ、横になる。

 ノィエは「なにか探してくる。木の実か果物、薬草とかあるかも知れないし」と山の中へ。念のためアェリィとサーラに同行して貰ったから問題はないだろう。

 ウェンディはアタシの頭のあたりで微睡んでいるし、ノーラは何か岩の周りの地面をスコップでほじくり返している。

 ネメシアさんは宿にあった水筒……無論、旅人用に常備している売り物を今朝、買ったのさ……から霊精を出してゆったりと飲んでいる。

 空を流れる雲がゆっくりと駆けっこしているような初夏間近らしい天気だ。

「しかし……なんか気になるなぁ」

 もう一度、地図を出して空を背景に眺める。

「ここが石柱。ここは何も無し……」と指でなぞっていく。……と

「あれ? これって……」

 起き上がって……もう一度なぞる。間違いない。意味不明な呪紋がある石柱の洞窟を繋げると……

「七芒星? いや、封印呪紋様?」町の反対側は調べてないけど、こっち側の洞窟と町の中心部の位置関係は封印呪紋様の半分に見える。

「町の中心? ! ということはアレは……」

 脳裏に浮かぶ闘技場にある石柱。よく判らない呪紋様がある石柱が……封印呪紋様の中心だ。

 崖際に行き、町を見る。

「あれ? あれは……」町の南側の通りの終わりの広間の下。崖の中腹に窪みが見える。

「アレ……洞窟かな? ネメシアさん。ネメシアさん?」

 問い掛けたネメシアさんは……アタシが指さす方を見ずにアタシを見つめていた。

 ……悲しげな顔で微笑んでいた。そして唇は『やっぱり判ったのね』と……

 アタシはその顔の意味も言葉の意味も判らず……ちょっとたじろいて後ろに一歩……と、足が空を踏んで……

 「あれ? なんで? 此処には地面があったはず……」と思う間も無く……アタシは崖から下へと……落ちていく。吃驚したネメシアさんを崖上に残して……

 落ちながら……「あぁ。大怪我するな」と何故か冷静だった。

「いや……大怪我で済めばいいほうだな」とも……

 でも何故か……ソフィアとエァリエスさんの顔が浮かんだ。

 そして慌てて……誰かの名を叫んでいた……



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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