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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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23.遺跡探検へと 2

 ソフィアとアリアの仲間達

「速ぁ……」

 呆れるぐらいにノィエは山歩きに長けている。さっさと先に行っては道を探し当て……こっちが躊躇するような崖際とか段差をすすっと進んでいく。岩蜘蛛という山歩きの術を駆使してわしゃわしゃと……

 確認すれば……住んでいた城の周りの森やら山やらを一人で走り回っていたんだってさ。

「……跳栗鼠が果物を持ってくるわけだな」 山の化身といっても納得してあげよう。

「なにやってんの? 日が暮れるわよ。そんな速度じゃ」

 悪かったわね。こっちは町で暮らしている文化人なんだから。岩蜘蛛の術は……それなりにしか使えないのさ。序でだけど、ネメシアさんは……幽霊らしくふわふわと浮いて斜面や崖を何にも気にせずに付いてくる。在る意味、羨ましい。

「あ、あまり崖の際の石には乗らない方が良いわよ。幾ら大きくてもちょっと力をかけたぐらいで転げ落ちる事もあるから。危ないわよ」

 はいはい。山歩きのプロの御高説。有り難すぎて無視したくなるわね。

 ……実際、危ないから従うけどさ。



 そんなこんなで、探し当てた最初の洞窟は……ただの何の変哲もない洞窟。

 次の場所では遺跡っぽく石柱が立って……いなくて倒れていたし、石柱自体も削り作ったモノじゃなくて自然の柱状節理でできた石柱に呪文が刻まれたモノだったけど……ノィエでも呪文の種別が判らないし、浅い洞窟内部の呪紋様も遺跡とは結びつきそうにもない。ノィエと二人で恐る恐る剥がしてみたら……ちょっと光の粒が溢れたような感じはしたけど……洞窟が遺跡の入り口に一瞬で変わったっ! ……なんてコトは一切無い。念のため呪紋様をノートに書き写して次の場所へと……

 ……ふむ。無駄足が多いな。まぁ職業的に無駄足は宝物への糧なんだけどな。ちょっと落胆というか疲労の度合いが多いのは……アタシが期待しすぎている所為かな。


 地図にある印の半分を調査した段階で昼になったので、一休み。

 断崖絶壁上のちょっとした平らな岩の広場でお昼を広げた。(もちろんノィエ様の御指示に従い、際からはそれなりに離れた場所だ)

 黒蜂蜜と白チーズ、果物、焼堅瓜、パンだけの簡単なランチ。ちょっと足りないような気がするけど焼堅瓜が甘くて美味しかったから……ま、いいか。

「ふぅ。結局、今日は無駄足だったかぁ」 と嘆くアタシ。

「なんで? 午後もあるし、地図の印だって半分はあるんじゃない?」とノィエが突っ込んできたので地図を渡して崖向こうに見下ろす町を指す。

「アレがノギの町。アタシ達が居るところはここ。チェック済みの印と未調査の場所を示す印は判るよね?」

 ノィエは地図と印の位置を確認して……納得した。

「そか、町から東側は全部調査済み。残りは西側の山の中か……」

「そ。こっち側には未調査の場所は無し。戻るだけで時間がかかるから……残りは明日だね」

「なぁんだ。じゃ今日は無駄だったってコトね」

「ん〜無駄足と無駄は違うわよ」 と指摘するアタシをきょとのんとした顔で見る。

 きょとのんって表情は世間知らずの方々の疑問符顔なんだなと改めて認識。

「確かに無駄足だったけど無駄じゃない。こっちになにも無いということは、あっちには何かあるかも知れないってコト。つまり……」

「なるほど。情報として価値があるってコトね」とノィエは地図を丸めて返す。

 ちょっと違うけど。まぁ、いいや。微妙な意味で言い争っても仕方ない。

「それよりさ。私、聞きたいことがあるのよ」 ん〜微妙に真剣な顔だな。

「何? ソフィ姉ぇのこと?」 多分、そうなんだろうなと先回りしてみる。

「そう。やっぱり納得できないのよ。なんで旅しているの? 寺院で修行しているモノだとばかり思っていたから……」

 まぁ、そう思うよね。自分の姉様から何かしら聞いて居るんだろうから。

「ソフィ姉ぇはね……家族を捜して居るんだよ。魔王が復活する前に……逢うために」

 それからアタシは……ソフィアのことを話した。少しずつ。

 本当のお母さんと生き別れた事。武器屋さんの家族に迎えられた事。そして、一緒に育った姉妹の事。武術大会で姉さまが大人の部で、ソフィアが子供の部で優勝した事。それで王宮に招かれて……光の杖を掴んでしまった事。その後……家族と別れさせられた事……

「本当は……この町にも居なかったみたいだから……直ぐにでも旅立って次の町に行きたいんだろうけど……白魔導師でいないとね。出逢ったとしても家族の方に判って貰えないかも知れないから……白魔導師としての責務をいつも果たそうとしているんだ。今だって……頼まれもしないのに闘技大会で傷ついた人達を治しているし……ま、それは本来の性分なのかも知れないけど」

 アタシの話にノィエは……下を向いて黙って聞いていた。

「そう。……そうだったの」

「そういやノィエの家族って何処にいるの?」と何気なく聞いてしまった。考えも無しに……

「私の家族は……姉様しかいないわ。城のみんなは……死んでしまった。闇の眷族に襲われて……」

「え?」


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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