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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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21.思わぬコト 1

 ソフィアとアリアの仲間達

21.思わぬコト

 そんなこんなで夕飯前。

 精霊契約文書を含む古文書の巻物はソフィアに預けて、厳重に結界処理して貰った。

 勿論、他の文書とかの意味はソフィアの翻訳付で書き写し完了。殆どは別の遺跡のだったのは……収穫とも、無駄だったとも言える。

 さて、そろそろ夕食の時間かなと思っていたら、ドアをノックする音。

「はーい。もう出来たの?」

 支配人あたりが用意が出来たことを知らせに来たのかなと思って開けてみたら……エァリエスさんとグレイさんだ。グレイさんは細長い杖を手に……腰にも短い樹の棒を差しているのは……昨夜までにはなかったような出で立ちだな。

「あれ? こんばんは。どしたの?」

 馴れ馴れしくエァリエスさんに尋ねると……意味ありげに微笑んで後ろに隠れるようにしているグレイさんを……お尻に蹴りを入れて無理矢理に前に押し出した。

「こんばんは。……何?」

「いやぁ……用と言うほどではないんですが……ちょっと調べましたモノで……何かのお役に立てるかなと……」

 ……と差し出した樹綿の荒巻紙。何だ? と、手に取り開けてみると……自作らしき町の周辺の見取り図に何やら☆や★や◎のマークが書き入れてある。

「これは? マークの所に何かあるの?」

「いゃあ……この通り、私も元白魔導師ですので手頃な杖になるような枝か朽木を捜して町の周りを探し歩きまして……洞窟の入り口やら石柱の倒れたのやらを見つけたのを記しておいたモノです。確か遺跡をお探しだとお聞きしたモノですから……少しでもお役に立てるかなと……」

 照れたような……奥のソフィアを怖がっているような……細い声で地図の説明をしてくれた。

「グレイさんっ! ありがとうっ! これで明日から調査できる。誰も知らないって言うから闘技大会が終わるまでは何も出来ないかなと思っていたところなんだ。ソフィ姉ぇっ! グレイさんが下調べしてくれたよっ!」

 嬉しくてソフィアを呼んで……しまった。グレイさんはソフィアが苦手だったんだ。

 ちらりとグレイさんの様子を横目で確認すると……慌てて逃げようとするのをエァリエスさんに襟首を捕まれて止められていた。

「グレイさん。アリアの手伝いをしてくれたようで……私からも礼を述べさせていただきます。本当にありがとうございます」

 グレイさんはソフィアの前から逃げようとしていたけど……きちんと礼をされてグレイさんは……廊下に平伏して返答した。

「いえ。この白魔導師崩れにソフィア様から礼を頂くなど……恐れ多い。このとおり差し出がましいことをして……」

 平伏したグレイさんの前にしゃがみ込んでソフィアは続けて応えた。

「いえ。私が何者であろうと、貴方が過去に何をしていたのであろうと、あの地図をわざわざ造って頂いたという事実は事実。アリアの手助けであることには違いはありません。事実に対して感謝を述べるのは白魔導師としての義務。差し出がましいようですが感謝を受けて下さいませ」

 グレイさんは……僧服のフードを深く被って……額を廊下にこすりつけるようにして……もう一度、返答した。

「ありがとうございます。ほんとうに……このような白魔導師崩れに……僧籍を投げ出したことで謝罪……」

「いえ。謝罪するのは私の方です。貴方の身形だけで私は毛嫌いしていたようです。改めて申し上げます。ありがとうございます。この礼、受けて下さいますか?」

「勿体ない。勿体ない……すみません。何でも致します。致しますから……もう私に礼を述べるのは……」

 訳が判らんほどに畏まるグレイさんの言葉が切れたのは……エァリエスさんが頭を小突いたからた。

「えぇいっ。鬱陶しいっ! ソフィアがこうして礼を述べているんだから、受けときゃ良いんだよっ! ソフィア、アンタもそれまで。手書きの怪しい地図1枚でそんなに丁寧に礼を言うことはないっ! 以上っ! なんか文句は?」

 ん。いいな。エァリエスさん。こういう気っ風が良いところは昔から……

 ……って、何の話だ? 逢ったのは2、3日前だぞ?

 しかし、グレイさんはソフィアを怖がりすぎだよね。ソフィアがグレイさんをジト目で睨んでいたのがそんなに怖かったのかな?

「さっ! 晩御飯の支度も出来て居るみたいだから。下に行くよ」

 エァリエスさんの気っ風の前にはアタシの疑問も何処かへ飛んでいきそうだ。


 食堂に行くとギザキさんとノィエが既にいた。

 ん? 頭の端というか額の端に小さな呪符を貼っている。どしたの?

「その呪符は?」と尋ねるとノィエが「仕方ないのよ」という感じで応えてくれた。

「午後の試合で相手の苦し紛れに投げた小剣がかすめて……変な軌道をしたのは確かだけど」

「ははは。ちょっと油断しただけだ。気にしてくれてありがとう。大したことはないさ」

 それは何より。って、アタシが聞きたかったのは傷に何で呪符なのかということなんだけど……まぁ、いいや。貼ったであろうノィエと貼られているギザキさんが納得しているのであれば。ノィエも白魔導師の心得はあるはずだし。治癒の効果がある呪符なんでしょ。きっと。

 そんなこんなでその日の晩餐はちょっとだけ微妙な雰囲気だった。

 ヴィオラさんとネメシアさんは上機嫌。御先祖さんの嫌疑が晴れた……というか、それぞれの過去に受けたらしい理不尽な仕打ちの根源の嫌疑が晴れたんだし。極めて当然。グレイさんはまだなんか感涙に噎んでという感じ。何がそんなに心動かしているんだろ? んで、エァリエスさんはそんなグレイさんを「鬱陶しいな。ホントに」という感じで軽くジト目で睨んでいる。ソフィアはと見れば「いい人みたいで良かったけど……完全には信用してないわよ」という感じでジト目睨みが軽い流しジト目に変わった程度で……ま、睨んでいるのではないけどね。アタシの隣のギザキさんとノィエは……御節介女房と無頼漢旦那というような夫婦会話を取り留めもなく続けている。

 まとまりがないな〜 ま、元からたまたま一堂に会しているだけだから……こんなモノだろう。

「ところで明日はどうするの? アリア」と徐にソフィアが尋ねてきた。



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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