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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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1.大猫娘と人形と…… 3

 ソフィアとアリアの仲間達

「判った。御頭は村にいる」

 痺れが消えかけた頭目は地面に這い蹲ったままやっと応えた。

「その村というのは?」

「そこまでは言えねぇ…… ぎゃおっ!」

 再び、電撃の鞭が……数条、振り下ろされて、山賊全員が魔氷結が砕け散ったままに地面で転げ回っている。

 ちなみに……魔法の鞭というのは実力というか呪力というか法力が高まるに従って一条から数条に形態が変わっていく。まぁ無数の鞭となったら陣形態と変わらんのも無理はないけどね。……って、なんで魔法術の説明してんだろうね。アタシは。

「さっさと言った方が良いわよ。幾ら殺生が禁じられている白魔導師でも『不慮の事故』でアンタ達が命を落としたとしても不思議じゃないわよ〜」

 見かねて、アタシがソフィアと山賊の間に割って入って……ついでに脅してみた。

 実際、鞭形態の術程度で落命するなんて事は滅多にないけどね。でも、このぐらい脅しておかないと先に進みそうにないし。

「いや。やっぱり言えねぇ。言ったら村八分だし。村から出されたら死んだも同然……」

 と、言いかけて山賊の頭目以下、全員が気絶した。……気絶したフリをしているのも数名は確認できるけど、脅し直しても同じ結果にしかならなさそうだ。

「どうする? ソフィ姉ぇ」

 ……と振返ると、ソフィアは自分の袋鞄に杖の先を入れて何か呟いている。

「ん?」

 疑問に感じるアタシに気づく様子もなくソフィアの唇は確実にこう言っていた。

「御願いね。アェリィ、空から近くの村を捜してみて」

 どういう意味かを問い掛ける間もなく、ソフィアは杖を空へと振り上げた。そして……空へと飛んでいったのは……というか杖の先を掴んでいたのは……緑っぽい帽子の人形。

 4歳祝いに貰う四力の精霊を象った人形の内、風の精霊の人形……

「え?」

 驚くアタシに気づいて……ソフィアは『あ……』というような表情で……固まってしまった。

 程なくして……空から人形が落ちてきて……視線をアタシに固定したまま、ソフィアが右手で人形を受け取ろうとして……失敗していた。

 地面に落ちた人形が頭をさすりながらソフィアを見上げて怒り出した。

『☆あたたたた……酷いやんかソフィア。ちゃんとアタシを受け止めてぇな』

 頭の中に声が響く。これって? ……何?

「ソフィ姉ぇ……それって……」

 白魔導師と動く人形がセットになっていると……大抵はこの世で嫌われ者の人形遣いを思い出すけど……

「あぁっと。信じて。御願い。私は人形遣いなんかじゃないから。ホントよ。信じて」

 取り乱すソフィアというのは初めて見るような気がする。……なんか異様に色っぽいのは反則だと思うんだけど。

「ん〜。ソフィア姉ぇが人形遣いなんかじゃないのは判っているけど……ソレは何?」

 アタシの問い掛けに応えたのはソフィアではなく……袋鞄からワラワラとでてきた人形達だった。

『★ほらぁ。やっぱ、心配すること無かったやん』

『○ソフィアは心配性やから、仕方ないやん。「人形遣いと勘違いされたらどぉうしょう」って、結局、取越し苦労やんか』

『◎……案ずるより産むが易しってね』

 4つの人形の内、碧い帽子の人形がアタシに近付いてきて……ペコリと頭を下げた。

「あ、ども」

『◎……ワタシはウェンディ。水の精霊の……ミダルって言うんだけど、意識の分身みたいなモノ。本体は氷の精霊の城にいるワ』

『★アタイはサーラ。本体は炎の精霊やで』

『○ウチはノーラ。土の精霊や』

『☆アタシはアェリィ。風の精霊というワケや。いたたた』

 ん〜。なんか、ソフィアに隠し子がいてソレを目の当たりにした感じ。……で、ちょいと思考回路が本来のスピードになっていない。……のは、暑さの所為もあるだろう。……という事にしておこう。……って、混乱しているな。充分……

 夢の中で『これは夢だな』と判っているような感じで、アタシはアタシが混乱しているのが判っているんだけど……どうやったら落ち着くのかがよく判らない。

 取り敢えず何か言わないと……

「んで、村はあったの? え〜と、アェリィで良いんだっけ?」

『☆ん。流石はソフィアの妹分。判るんが早い。村はあったで。この先で村への入り口への分岐点がある筈や』

「わかった。じゃ、ちょっと行ってくるっ!」

 未だ混乱しているような感じでソフィアはくるりと踵を返して……飛んでいった。

「え?」

 いや、表現としての『飛んでいった』のでは無く、文字どおり、空へと飛んでいった。

「そんな……飛べるなんて」

 呟くアタシに人形達が焦って説明し始めた。

『★いや、あれは金の竜のおっちゃんに貰った竜髭靴で……』

『☆この前、瘴気というか魔獣を始末したときに貰ったヤツで……』

『○違うて。竜のおっちゃんが出した試練をクリアしたときに……』

 人形達の説明はよく判らないけど、アタシが言いたかったのは別のことだ。

「……飛べるんだったら最初からアェリィを飛ばさなくても良かったじゃない」

『◎……そだね』 『☆★○確かに』

 やはり、呆けた感じで人形が同意した。


 それから暫くして……

 街道脇の山の中腹で何かが爆発した。

「ソフィ姉ぇだな」 『★そだね』 『☆間違いない』 『◎……可愛そうに』 『○誰が?』「山賊達に決まっている……よねぇ?」

 アタシが問い掛けたのは……後ろで気絶したフリをしている山賊さん御一行。

「あぁ……」 「こうなったら……仕返しにオマエを……」

 何か出来るわけがない。

 何故ならば……直後にアタシが放った雷襲陣で全員、痺れたからだ。

 ついでに……アェリィが放った電撃とウェンディが放った氷飛礫とノーラが放った石飛礫、おまけにサーラが放った火炎飛礫でメタメタにされてもいたけど。

「アンタら……強すぎ……」 今度は本当に気絶する前の頭目らしい輩の最後の言葉。

 そだね。アタシもそう思う。



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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