19.霊精と古文書 3
ソフィアとアリアの仲間達
結局、ウェンディも欲しがったので、外套着みたいな戦闘服みたいなのは全員。ま、ちゃんと余裕を見て買ってあるから問題なし。んで、サーラとアェリィも小物を欲しがったので、玩具の剣とかを外套着にセットで付けておくことにした。無くならないように紐で繋げることとして……
「ウェンディ。アンタは何か要らないの?」と確認。一人だけ何も道具がないというのも変だからね。
「ワタシは要らない。水糸があるから」
水糸? なにそれ? と、聞き返す前にソフィアが自分の荷物の中からそれらしきモノを取りだした。
「水糸ってコレよ。前に……とある場所で貰ったの」
受け取ってみると……なんだろ? 実際、感触は水。でもちゃんと糸になっているし……引っ張っても切れない。針でつついてみても……全然刺さらない。
「ん〜まぁ、それも法力を具現化したようなモノだから……大抵のモノは刺さったりはしないはずよ」
んむ? 精霊の道具とか亜人類とかの宝物みたいなのものなのかな?
普通の人(魔法グッズ好事家?)が見たら、金貨を大枚叩いて「売ってくれっ!」と懇願しそうなモノがあっさりと出てくるな。……と、アタシが冷静なのは何でだろう? アタシも魔道具、聖法具とかのモノを売り買いする古物商になるのが将来の目標というか予定だったりするのだから、こういうモノをみたら興奮するハズなんだが……
……ま、ソフィアと一緒にいて、こういう小物で興奮していたら心臓の予備が2、3個は必要になりそうだからね。
実際、誰も見たことがないという聖アィルコンティヌ寺院出身者が3人(うち1人は幽霊)もいて、魔王を打ち倒すという伝説の光の杖は……部屋の片隅に立てかけてあるという状況に慣れている。
ははははは。アタシも随分と大人になったモノだなと……なんか表現が間違っている気もするけど放っておいてね。ソコ。気にしない。アタシが納得しているんだからそれで良いの。
兎に角だ。色々と試してみると……どうやら糸で縛ることは出来るみたいだから、ウェンディの外套着(製作予定)の背中に袋を付けて水糸を格納。水糸の端を糸で縛って外套着に結わえておけば無くなることもないだろう。
「……というコトで良いかな?」
『★ん〜。一人だけ本物の魔道具というのは……』
『☆羨ましいというかずるいというか』
『○なんか負けた気がするというか……』
『◎……でも、水糸を使えるのはワタシだけだよ?』
「アナタ達ね。そんなことで喧嘩しない。もぅ……だったら……」
人形達の喧嘩をソフィアが止めて……それぞれの人形達に装備予定の小物を「ちょっと手を加えさせてね」と手に取り……何か掌の中で術を掛けた? ……みたいな感じで一瞬、掌の中で何かが光って……テーブルに小物を戻すと……何も変わってないような? はて?
「何したの?」
「ちょっとね、コレらを霊精でコーティングしたの。これで、この小物を使って法術を使ったら私の力も相乗して……強力になるわよ。コレで良い?」
『★☆○わ〜い。ありがとう〜』 「ホントに現金なんだから」
喜ぶ人形達(除くウェンディ)。呆れながらも落ち着いたソフィア。それを見ていて苦笑しているヴィオラさんとネメシアさん。……んで、アタシはなんだか理屈がワカラン。……のでちょっと呆けていた。
なんだ? なんか凄く異世界っぽい感じの法術集団だな(除くアタシ)。
陣形態という強力無差別攻撃呪文を使えるのが何を呆けているんだって? だってレベルというか、基本的に到達している位置が違いすぎる。幾ら高い山に登っても空の上には届かない。……そんな感じだ。
「ソフィ姉ぇ……」 何か言おうとしたんだけど……何を言おうとしたのかが自分でも判らない。
「なに?」 にっこりと笑い返してくれるけど……何を言おう?
「……あ、ウェンディがちょっと拗ねているみたいだけど……」
全然違うことを言っているな。でも、拗ねているっぽいのは確かだから……まぁ、いいや。
「なぁに。今度はウェンディ? ……仕方ないわね」……とソフィアはテーブルの上の待針を手にとって……さっきと同じように術を掛けてテーブルに置いた。
「アリアに繕い直して貰ったら、この針を全員で分けて持っていなさい。効果は同じだから。ね? 御願いね。アリア」
小首をちょっとだけ傾げ、両手を顔の前で合わせて……序でにウィンクされて御願いされてしまった。……なんか懐かしい可愛い仕草だ。って、「懐かしい」って何だ?
「ははは。そういう風に御願いされると弱いからなぁ。昔から……」
「昔から」って? 何を言っているんだ? アタシは?
「昔からって何?」 思わず声に出してみるけど……誰も応えられる訳がない。ヴィオラさんもネメシアさんも困った感じで微笑むだけだ。
……ソフィアはちょっとだけ吃驚したような顔でアタシをじぃっと見ていたけど。
ん〜 なんか変な風邪にでもかかりかけているのか? いや、きっと通常では有り得ない高等法術が日常〜という空間に浸りきって思考回路が短絡暴走でもしたんだろう。
うん。きっとそうだ。
「それはそうと……」雰囲気が袋小路に入った感じなので強制変更〜
「こういう古文書を手に入れたんだけど……ソフィ姉ぇ、読める?」
……と支配人から入手した古文書ををテーブルに広げ……ようとしてネメシアさんの儀礼用深杯に巻物の心木が当たって……倒してしまった。
「あっ……ごめんなさい。……あれ?」
ネメシアさんに謝って(ネメシアさんは『気にしないで』という感じで微笑みながら小さく手を振ってくれたのが嬉しいというより可愛かったぞ。もちろん)、直後に疑問符を口にしたのは……深杯から溢れた霊精が古文書にかかって……何も書いてなかった場所に新たに何かの文字を浮かび上がらせたからだ。
その文字は……見たことがある。ムーマ文字儀礼文様だ。……いや、ちょっと違う。
確かなのは……どっちにしてもアタシには読めないと言うことだけだ。
「コレは……」古文書をじっと見つめるソフィア。いつになく真剣な眼差しだ。
「……精霊紋様。儀礼文様の元になった紋様だわ」
「へぇ……そんなモノが? 寺院の図書にも何冊もなかったのが、こんな所に?」……と、覗き込むヴィオラさんの笑顔が変わって……真剣な顔というか……吃驚する直前のような表情のまま止まっている。
「……どうしました? ヴィオラさん」 ソフィアが尋ねても……止まったまま。ネメシアさんも気がつくと古文書をじっと凝視している様なんだけど……相変わらずに睫毛が長すぎて瞳は見えないんだけど、表情は硬い……
「ソフィア。アリア。御免、コレ借りる」と、ヴィオラさんとネメシアさんがなんか目を合わせて頷き合って……徐に深杯に残っていた霊精を古文書にぶっかけた。
途端に古文書から虹色の煙が沸き立ち……部屋を虹色の光で包み……樹紙全面に特徴のある何かの文様を浮かび上がらせた。
「コレは……間違いない」
「なにがです?」
「これは失われた精霊ノギとの契約文書。聖光契約文書だよ」
「えっ! 先の聖魔大戦直後に失われた『精霊契約文書』の一つ何ですかっ?」
なんか吃驚したままの表情で顔を見合わせる聖アィルコンティヌ寺院関係者様達。
……え〜と。話が何にも見えないんですけど。
読んで頂きありがとうございます。
これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。
感想などいただけると有り難いです。