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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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18.情報 2

 ソフィアとアリアの仲間達


 部屋に戻るとソフィアの他にヴィオラさんとエァリエスさんも一緒にいた。

「ん? どしたの?」と尋ねてみると……ヴィオラさんが頭を包帯で巻かれて後頭部を押さえて椅子にへたり込んでいる。ヴィオラさんの後頭部をソフィアとエァリエスさんが覗き込んでいた。

「隣の闘技場から剣が飛んできて……」

「頭に当たったのよ。気をつけてくださいね」

 頭に当たった? 剣が? 大事じゃないっ! って、慌てているのはアタシだけだ。あれ?

「大丈夫なの?」

「大丈夫。ソフィアが手当てしてくれたから、もう血も止まっているし。この包帯も止血じゃなくて痛み止め。ソフィアの浄化の残響術を掛けて貰ったヤツだから。まぁ、今日の相手は手強かったし。それに飛んできたのを避けていたら……相手の剣が何処に刺さっていたやら……判らなかったからね」

 まぁ、飛んできた剣の攻撃は1回だけ。相手のは何回でも襲ってくるからね。でも……

「……でも、ヴィオラさんって、どんな攻撃でも軽く避けられるモノだと思っていた」

「アリアそれは言い過ぎよ」

 あっと……ソフィアが睨んでいる。確かに怪我人には言い過ぎだな。

「……ごめんなさい」 素直に謝ろう。間違いは直ぐに対応するのが一番だ。

「かははは。いいって。確かに油断していたね。複数攻撃にも対応出来なきゃ、寺院出身だといっても疑われてしまう。でも……」

 ヴィオラさんは小首を傾げて考え始めた。

「……なんか闘技場に上がると、頭がぼーっとするんだよね。障壁を張るのも躊躇してしまったし……実践と訓練との違いかな?」

「そんなことはないでしょう? ヴィオラさんだって精霊界での試練の経験が豊富じゃないですか。地の精霊界で岩人形千体相手に一人で立ち向って勝ったというのは寺院の語り種ですよ」

 ……岩人形を千体を一人で? よく判らんけど、凄いことだけは確かなんだろうな。

「まぁ起こってしまったことは仕方ないさ。ソフィア、気合い付けに1杯頂戴な」

 ヴィオラさんはテーブルのコップを取ってソフィアに差し出した。

 「やれやれ」という感じでソフィアはコップを手に取り、2度3度と振って……忽ちのうちにコップを霊精で満たした。

「なんだそれ?」と驚くエァリエスさん。あ、そうか。エァリエスさんの前では初めて……かな? いや、一昨日の晩餐会で見ていたはずだけど?

「ソフィ姉ぇがいつもネメシアさんに飲ませている……霊精っていうのだけど……見てなかったっけ?」

「なんか飲ませていたのは判っていたけど……何処から出したんだ?」

 不思議がるエァリエスさんにアタシが説明した。

「これはソフィ姉ぇの法力を液体化したモノ。ソフィアの法力が有り余っているから出来る……まぁ汗みたいなモノかな?」

 言い終わってから廻りの様子を窺うと……ヴィオラさんは笑いを堪えている。ソフィアには「何よ、それ。もう少し言い方ってモノが……」みたいな感じで軽く睨まれてしまった。ネメシアさんは「なるほどね」という感じで軽く頷いている。んで、説明した相手のエァリエスさんは……「そんなことが……あるのか?」という感じで納得していない感じだ。

 つまり、説明失敗っ! もう少し言い方を考えておこう。

「そうだ。エァリエスさんの法力振動数は?」 唐突だけど場の雰囲気を強制変更〜

「法力振動数?」 怪訝な顔とはこういう顔だと言わんばかりに疑問符を頭に生やしたような顔をするエァリエスさんに……ちょっとアタシを軽く睨みながらソフィアがコップを渡した。

「そうですね。エァリエスさんの法力振動数と法力量を知っておきませんと……御依頼の件も巧くできないかも知れませんので……コップを両手でもって暫く瞑想していただけませんか?」

 依頼の内容をハッキリと言わないのは……ネメシアさんへの配慮かな?

 ともあれ、エァリエスさんはコップを手にとってソフィアに言われるままに両手で包み、ゆったりと瞑想した。

「もう良いですよ」というソフィアの声に覗き込む一同。(当然、含むアタシ)

「……綺麗」 思わず声に出る。

「本当に綺麗な……重複正四角形だ」とヴィオラさん。

 重複正四角形? なにそれと疑問を視線に変えてソフィアを見るのはアタシとエァリエスさん。

「エァリエスさんの基本振動数は4。しかもこんなに綺麗に出るのは珍しいですね。さらに、倍数振動もこんなに……全体としては八芒星。法術も修行されたら……一角の召還術師になれますね」

「よしとくれ。アタシは剣術師だ。今更、法術の修行なんて……」

「剣術師のままだとしても……精霊の力をある程度には使えるようになりますよ。剣を振るうように……」

 にっこりと笑うソフィア。自分の手のコップの中の波とソフィアを困惑というか混迷というか所在なさ気というか、兎に角、複雑な顔で何度も見直すエァリエスさん。ヴィオラさんとネメシアさんは……なんかニヤけた顔で意味在りげに見ている。アタシは……ソフィアが言った意味が判らずに困惑さというか混迷さをエァリエスさんと競った顔できょろきょろするしかできない。

「ま、まぁ。これでアタシの法術振動数とやらが判ったんだろ? コレで失敬するよ」とコップをヴィオラさんに渡し、踵を返して部屋を出ようとするエァリエスさんを……ヴィオラさんが呼び止めた。

「ちょい待ち。姉妹」 「姉妹っ? 誰と誰がだ?」

 ちょっと怒ったエァリエスさんにヴィオラさんがコップをずいっと差し出した。

「試合が終わって倒れたワタシを助け起こしてくれたじゃないか。因ってあの時からワタシとアンタは義姉妹。ということで、固めの杯といかないかい?」

 ……なんか、盗賊というか、無法者っぽくなってきたぞ。大丈夫か? この集まり。と、エァリエスさんを見ると……なんか、苦笑いしてソフィアをちらりと見ている? なんで?

「あのぐらいで、義姉妹とは軽いね。ま、いいさ。んじゃ、今後宜しく」とコップを取り、一口……霊精を含んだところで動作が止まってしまった。が、なんか気合いと共に呑み込んだ。

……そんなに不味いのかな?

「かはははは。んじゃ、宜しくね。義姉妹」と残った霊精を一気に飲み乾して……ヴィオラさんは盛大に声を上げた。

「くかぁ〜っ! 今日は一段とキツく感じるよ。やっぱ、なんか疲れとかが溜っていたのかね。でも、これで午後は大丈夫だ」

 ……ソフィアの霊精って凄まじく効き目のある薬草茶の煮凝りみたいだな。


 ソフィアと昼食を済ませ、(エァリエスさんは自室で取ったみたいだけど)午後の戦いへとヴィオラさんとエァリエスさんとソフィアの3人は連れだって出かけていった。残ったのはアタシとネメシアさん。

 テーブルの上を片付けて……手に入れた古文書を広げた段階で気がついた。

「しまった……ソフィアに読んで貰っておけば良かった」

 仕方がない。教わった知識で判るところだけでも読んでおこう。



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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