17.夢の中で 1
ソフィアとアリアの仲間達
17.夢の中で
その夜の夢。
金色の花が虹色に輝く草原で、大の字に寝そべっていると。ネメシアさんが覗き込んできた。
『随分、寛いでいるわね』
(そりゃそうだよ。なんか……やっと落ち着いた感じだから)
『そう。あのね……今度ね、人形達も連れてきてくれない?』
(んん? そりゃ構わないけど……連れてこれるの?)
『さぁ? でもアナタにとっては夢の中なんだから出来るんじゃない?』
(そか。あれ? 前に『夢じゃない』って言ってなかった?)
『そう? でも、気にしないで良いわよ』
(ん? そんなモノなのかな?)
『そう。ここはアナタの夢。そういうことで良いじゃない』
屈託無く笑う。その笑顔が……なんか幼く感じられて……儚い感じで、アタシは起きあがると……ぎゅっと抱きしめてしまった。
『どしたの?』
(何処かに行かないでね)
『行かないよ。だって……ここはアナタの夢なんでしょ? いつでも逢えるわよ。きっと……』
意味深だな……
『そうそう。ノーラの腕の生地が薄くなっているから、そろそろ直してね。アェリィはお腹の辺り。ウェンディは……まぁ、まだ大丈夫かな。おしゃまさんだから。でも、サーラはおきゃんさんだから……全体的に危ないわよ』
(そなの?)
『そう。ソフィアったら他のことは一生懸命だけど、自分のコトとかになるとずぼらだから……ね。気をつけないとすぐにどっかに飛んで行っちゃうから……』
(寺院でもそうだったの?)
『そうよ。他の子が炎の精霊の召還に失敗して……精霊の炎の宝珠に包まれそうになったときも……宝珠を杖で叩き落としてね。「ちょっと失敗したからってそこまで苛めることはないでしょ? 文句があるなら私にかかってきなさいっ!」ってね。本体の精霊を叩きのめしてしまったのよね。そしたら……部下を攻撃されたんで上役の精霊が出てきて……ま、喧嘩して勝ったから良いようなモノで……負けていたらどうなっていたやら』
(ひぇえぇ……怒らせたら怖いんだね。なんか……想像つくけど……想像以上だな)
『じゃなかったら、その喧嘩した相手……精霊の上役が炎の精霊王の怒りに触れて……原初の精霊炎に呑み込まれそうになったのを助けたりしないって』
(あれ? ひょっとして……それって)
『そう。それがサーラ。当時は精鋭の突撃隊長だったかな? 今は炎の精霊界の突撃軍司令官……平たく言って将軍のハズよ』
(つまり……炎の精霊の将軍に勝ったの?)
『違うわよ。ソフィアが勝ったのは炎の精霊王。だからサーラが命を救われたんじゃない』
(あ……そうか。え? つまり、精霊の将軍クラスに勝って、さらに精霊王にも勝った?)
『そ。人のことになると手がつけられないぐらいに強くなるんだから』
はぁ……やっぱり、史上最強の御節介焼きだな。
『それからは……試練とかで一人で他の精霊王の所にも出かけて……難題やら揉め事やら……御節介焼いては闘う羽目になって、尽く勝ち続けてきたはずだけどね……』
(凄い……) 改めて感じるけど凄すぎる。
『各精霊界から「あの者を寄越すときは事前に連絡するように。さもなくば人間界から精霊界への攻撃とみなす」ってね。『歩く最終兵器』という渾名も……使いの精霊が漏らしていたわ』
(はははは……) 笑うしかないな。それ。
『まぁ、そうじゃなきゃ、そんなこんなで助けられた精霊が自主的にミダルとなってソフィアの人形に宿ったりしないわ。宿っているのは総て各精霊界の実力者。並みの召還術師が召還できる精霊達なんて、サーラ達を見ただけで途端に平伏すわよ』
……ソフィア一人で魔王にも軽く勝てそうな気がしてきた。
(凄いね。「凄すぎる」という言葉が軽く感じるぐらい……)
『そうね。史上最強の光の杖の継承者ね。間違いなく』
(ネメシアさん達も……光の杖の継承者候補として寺院に行ったんだよね? 確か……)
『そ。ヴィオラは8歳過ぎから、ノィエのお姉さんのノェアは12歳だったかな……私なんか4歳の時から寺院に入れられたのよ。酷いと思わない? まだ遊びたい盛りだったのに……』
(え? そんなに早くに?)
『そうよ。4歳の時に……誕生日に四力の精霊の人形が貰えるって聞いていたから……楽しみにしていたのに……寺院に入れられちゃった……』
(どうして?)
『この眼の所為よ』
改めて見てみるけど……綺麗な金色というだけだ。……そういや、ソフィアとヴィオラさんは……怯えていたけど。
(その眼がどうしたの?)
『御先祖さん……私とヴィオラの共通の先祖様なんだけど、その御先祖さんの「生まれ変わりに間違いない。その眼が証拠だっ!」なんて親戚中から……生まれたときから騒がれていたらしいんだけど……私の知らないところでね。それで寺院に入れられるのが決まったらしいわ。まったく……せめて誕生日の祝いを済ませてからにして欲しかったわよ』
あれ? ひょっとして……
(……ということは、人形は?)
『貰ってないわ。だからソフィアが羨ましくて……』
(そうなんだ……)
『ソフィアは……あの人形は育ててくれた家族じゃなくて……ソフィアを捨てたお母さんの形見らしいけど……大事な人形を黙って貸してくれた。それで私もなんか……ソフィアを妹みたいに感じてね。私が知ってることは全部教えたわよ。』
あれ? ネメシアさんって……今は私よりも小さいぐらいの少女みたいなんだけど……幽霊の時でも、ソフィアよりは若く見えるんだけどな。
(ネメシアさんの方が歳上だったんだ?)
『そうよ? これでもヴィオラよりも歳上よ。ま、ヴィオラとは半年ぐらいしか違わないけどね』
読んで頂きありがとうございます。
これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。
感想などいただけると有り難いです。