表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖霊の街  作者: 葛城 炯
32/56

16.混迷と困惑と 2

 ソフィアとアリアの仲間達


「ソフィア。いいのかい? 疑われたままで……」

 部屋に戻ってからヴィオラさんがソフィアに確認した。

「昨夜のノェアさんとのことで信じて貰っていたとばかり……でも、疑われるのは……確かにそうですね。寺院の知識が在れば、私がここにいる筈がないというのは正論ですから」

 ソフィアは家族を捜すために寺院を出てきたんだ。試練を乗り越えて、周囲を納得させて……でも、それが寺院の規範と違うということだけはアタシにも判る。

「ノィエが正論と事実の差異に納得できないお嬢様という事だけでしょ? 気にしなくてもいいわよ。きっと……あまり甘やかしても仕方ないと思う」

 アタシのフォローは……あんまり効いてないな。エァリエスさんの言葉の方がソフィアの心を落ち着かせているはずだ。

 ……結構、長く旅しているのに。情けないな。アタシは……

 ネメシアさんもアタシの言葉に頷いてくれたけど……ソフィアの方を心配げに見ている。

 そうなんだよね。ソフィア自身は何も疑われるようなことはしていないんだ。

 していないのに疑われる事への対処なんて……


 その時、ドアを誰かがノックした。

「はい。すみませんよ」

 と、入り口に立っていたのは……珍しい。グレイさんだ。

「あれ? グレイさん。どうしたの?」と応えながら、視界の端でソフィアの様子を確認すると……さっきまでの思案投首状態からジト眼睨み迎撃態勢へと瞬時に変更していた。

「用があるのは私ではありません。こちらのお二人です」

 部屋に入らず、ひらりと手を向けるのは……ギザキさんとノィエお嬢様。

「……百聞は一見にしかず。また、体験に勝る説明はありません」

 ん? 何を言おうとしているのさ?

「お二人がソフィアさんの杖を……触ってみたいそうなのでお連れいたしました」

 あ……なるほどね。

 ソフィアの杖は……ドアの反対側の壁に立てかけてある。

「そういうことならどうぞ……でも、ギザキさん。火傷しても明日の戦いは……大丈夫?」

「ん? まぁ、掌ならば使わないから……大丈夫だと思うが……」

 ソフィアに眼で合図し、二人をどうぞと中に入れて、杖の前へと促した。グレイさんは……やっぱり中に入らず、入り口の……陰で見守っている。

 ソフィアは杖を持ち上げ、ゆったりと両手で水平に捧げ持った。

「どうぞ。確かめてくださいな」

 ギザキさんとノィエは銀白色に輝く細長い光の杖を目の当たりにして……杖が漂わせている雰囲気にちょっと飲まれたように二人で目で合図してから同時に指先を伸ばして……触れた。

「きゃあっっ!」 「ぅおわちっ!」

 まるで弾かれたかのように慌てて指先を引っ込める。というか床にへたり込んだ。

「……少なくともソフィ姉ぇの杖は本物だと認めてくれますよね?」

 アタシはニヤリ笑いを封じ込めずに、表に出しながら二人の顔を覗き込むようにして確認した。

「あ、あぁ。剣の類ならばノィエが持てないのは当然としても……オレが持てないというのは有り得ない……凄まじい法力が封じ込められている杖としか……」

 そうそう。ノィエさんは選礼式で白の札を引いた以上は白魔導師。若しくはそれに準ずる職業。白魔導師は剣というか刃物は一切持てない。無剣だけど剣術師であろうギザキさんがノィエさんが持てないモノを持つことが出来ないという事は……

「……凄い法力。聖紋が刻まれているのに……表面に凹凸がない」

 そう。光の杖って凹凸がないのに聖紋が表面に浮かんでいるんだよね。

「で? その前に言うべきコトがあると思うんだけど?」

 あ〜 我ながらアタシって結構、意地悪だなと思う。

 ……あのね。アタシの言葉にすぐ同意しないように。

「判ったわよ。……先程はすみませんでした」

 ペコリと頭を下げるノィエ。ん〜素直だな。まるでアタシのようだ。

 ……疑った目で見ない。ソコ。

「いえ。確かに寺院の規範では……」と言い訳しかけたソフィアの前に意味ありげに笑いながらヴィオラさんが割って入ってきて誤魔化した。

「色々と世間にも寺院が極秘に介入しなきゃならないコトがあるって……ノェアから聞いてなかった?」

 あらら。悪い大猫娘だな。ヴィオラさんは。

 「あ……」っと小さな声を手で押さえて……改めてアタシとかネメシアさんを見て納得したように頷いた。

「……判りました。そうでなければ幽霊を成仏させていないとか、人形を操る黒魔法使いとかと一緒にいるとかしませんよね」

 お〜い。何を勘違いしてアタシを怪しい黒魔法使いだなんて失礼なことをあっさりと……

 ま、いいや。人形達がソフィアの持ち物というかソフィア関係精霊の分身であるミダルとかを説明し直したりしたら無意味に混乱しそうだ。でも、アタシが操っている訳じゃないんだけどな……

「ま、そういうことで。んじゃ、宜しくね」

 勘違いは後で、追々訂正するとして、今晩はコレで終わらせときましょ。勘違いであることだけは確認させることができたし……

 二人はソフィアに改めて謝罪して、自分たちの部屋へと帰っていった。

 ドアを閉めるときのギザキさんとグレイさんの様子からして……グレイさんの発案なんだろうな。二人の訪問は。

 兎に角、これで今夜はぐっすり眠れそうだ。


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ