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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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16.混迷と困惑と 1

 ソフィアとアリアの仲間達

16.混迷と困惑と

 その夜は皆でギザキさんの敗者復活戦生き残りと続けて行われた二回戦勝ち上がり、ヴィオラさんの順当な二回戦突破祝賀食事会。

 因みにだ。昼にグレイさんが賭けていたのは当然ながらギザキさん。但し、その資金は……昔、ギザキさんに借りていた借金相当分とのこと。従って、配当金の金貨15枚はギザキさんのモノ。150倍だったというのに札一枚、つまりは銀貨4枚しか賭けていないなんてね。欲が無さ過ぎるな。

 席に着いてから、ギザキさんが「果物を届けてくれてありがとう。ところで、あの手紙は何処で預かった?」とか聞いてきたけど、ソフィアがちょっと意味在りげな目配せしたので適当に誤魔化しておいた。旅の途中でとある小さな宿のギルドで「盾4つの人を見たら渡してくれ」と頼まれたとか何とか。ノィエさんが怪しげな感じで睨んできたけど……まぁ、ソフィアが隠したいのであれば、アタシも知らんフリするだけだ。「結界処理してあるからアタシ達も中を見ていないし、もし、複数の書簡をいろんな人に渡していたとしても中を読めるのは貴方達だけでしょ?」とかね。

 なんでソフィアが城を直したこととかを隠したいのかは……よく判らないけど、たぶん直しに行くのをアタシに隠しておきたかったのと同じ理由だろう……って、何だろうね?

「でも……なんですぐに渡してくれなかったの? アナタと闘ったときの……その直後でも良かったんじゃない? それに跳栗鼠達から……とか言ってなかった?」

 うぐっ。鋭いな。ノィエさんは……。いや、今晩の確認でアタシと同い歳と判ったから、今からは呼び捨て〜 で、ノィエは鋭い。流石に独学だけで呪符師となっただけはある。正式には選礼式で白の石……じゃなくて『白魔導師』の札を引いたから白魔導師になりたかったみたいだけど、白魔術を教えてくれる人も書物もなかったので、独学でなれた呪符師になったということらしい。

 選礼式というのはこの世界で職業を決める儀式のこと。大抵は7つの色違いの石を袋に入れて引き当てた石の色で決めるんだけどね。

 札を引いて決めるなんて……ノ・トワ城の因習なのかな。

 でも……城が全壊するような戦いがあったとはいえ、城に住んでいたのなら白魔術を教えてくれる白魔導師の一人や百人ぐらいは良そうなモノだが……なんかその辺は言いたく無さそうな雰囲気を撒き散らしていたので聞かずにおこう。

「まぁ……ね。その時は忘れたから、果物とかをお詫びの印に……朝市の行商人から手に入れて持って行ったんじゃないの。跳栗鼠達とかから果物を届けられたりしていたんでしょ? 届ける相手がどんな人なのかを情報として聞いていただけよ。まぁ、あんまり追求しないで赦してよ。忘れていたのを思い出したんだから」

 赦せ。跳栗鼠達。貴方達の好意の品を誤魔化しの材料にしてしまった。

「まぁまぁ。もう終わりにしよう。城が直ったという知らせは悪い知らせじゃないんだし」

 流石にギザキさんは物わかりが良い。城が直ったなんて良いことでしょ。直したのはソフィアだけど。

 そのソフィアをノィエはジトっと睨んでいる。何が気に入らないんだか。もう一つ、ジトっとした視線が飛び交っているのが何とも……ねぇ。

 もう一つのジト眼はエァリエスさん。やっぱり、ネメシアさんが剣を奪い取られたのが気に入らないようで、ちらちらとジト目で見ている。そしてネメシアさんもジトっとした眼……は開けていないけど、「何よ。抜かれなかったんだから良いんじゃないっ!」みたいな雰囲気でエァリエスさんのジト眼を反射している。

 う〜む。なんか御飯が美味しくないぞ。

「確認したいんだけど」

 不意に……且つ徐ろにノィエが声を出した。何事? と全員が顔を向ける。

「その杖って……光の杖?」

 ノィエが指さしたのはソフィアの杖。確かにそれは光の杖なんだけど……今居るのは食堂。

 他の人もいるし……なんと説明しようかと考えていると……ノィエが誰も応えないので一人で先を続けてしまった。

「信じられない。光の杖を持っている尼僧を気取っているなんて……寺院出身というのも怪しいわ。何処で私の姉様の話を聞いたの?」

 え〜と。ちょっと待て。何が信じられないんだ?

「杖がどうしたのさ? なんでそんなに怒っているの?」

 アタシの問い掛けにノィエはギト眼睨みで返してくれた。

「知らないの? 光の杖の尼僧は聖アィルコンテイヌ寺院で修行中……魔王が復活したときに寺院と共に私の城、ノ・トワ城に訪れる筈。旅をしているなんて信じられない。しかもこんな所で闘技に出たなんて……」

 そこで言葉を句切って……アタシを改めて睨み直した。

「そういえばアナタはあの人の連れだったわね? 何を企んでいるの? 光の杖の尼僧を気取って誰を騙そうとしているのよっ?」

 あ〜。なるほど。自分の知識と現実との差異に対応することができなくて……戸惑っているのを誤魔化して……アタシ達にぶつけてきたと。そんな所だな。これだから世間知らずのお嬢様というヤツは……と、嘆いても進まないから嘆きは脇に置いておこう。

 しかし……ん〜。説明する事自体は簡単だけど、どう説明しても納得しそうにもないな……

 ちらっとギザキさんを見ると慌てているけどノィエが言い出したことへの知識は……皆無のようだし……説得は出来そうにもないな。同じ寺院出身のネメシアさんは……もの凄く不愉快そうなんだけど、幽霊だから声は出ないし。ヴィオラさんはと見ればどうやって説明しようかと考えているような「そんなレベルの疑問って今更どうして?」と戸惑っているような。ソフィアはと見ても疑われている当事者なのだからソフィアが何をどう説明しても信じてくれそうにもない。説明して信じて貰えなくても別に何かを失う訳でも得する訳でもないから……今までは「では、さようなら」で済ませていたんだろうけど……一応、魔王出現時の対策関係者だから疑われたままでは良くは無さそうだ。と考えているような。

「じゃ、アンタはソフィアが光の杖の尼僧を語って何していると思うのさ?」

 と割って入って返したのはエァリエスさん。世間を一人で渡りきってきただけはあるな。

「そ……それは」と口籠もるノィエ。そりゃそうだ。疑問を口に出しても先の事は考えていなかっただろうからね。口籠もるしかないな。

「だったら、無闇に人を疑わない事だね。信じろと言っているんじゃない。疑う必要はないと言っているんだ。少なくとも形になっていないのならば心に仕舞って、形になるまで言葉にしない事。不必要に敵を作りたくなければね」

 口に料理を運びながら、最後はギロリとノィエを睨んで会話を締めた。

 流石、言葉に重みがある。根拠不明だったけど。

「さて、白けてしまった。アタシはコレで退散するよ。ソフィア、気にする事はない。アタシはアンタを信じているから。ね?」

 にっこりと笑う。

 値千金だな。場の仕切と切り上げ方とフォローは。

 そして、夕食会はそれでお仕舞。三々五々に部屋へと戻って休む事にした。


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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