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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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15.その朝の夢と…… 2

 ソフィアとアリアの仲間達

 闘技場に辿り着くと丁度ギザキさんが呼ばれて登場した所。運が良いぞ。

「はぁはぁはぁ……間に合った……はぁはぁ……はあ?」

 息を整えながら闘技場を見ると……全員、ギザキさんを睨んでいる。え〜と、……ざっと数えて7、8人? 随分と……詰め込んだモノだな。斜向いのの闘技場でも7、8人が居るから……別にこっちに多く詰めこんだという訳では無さそうだな……

「あら? 起きたの?」

 振り向かなくてもその声はソフィアだ。アタシは視線を闘技場に向けたまま尋ねた。

「ソフィ姉ぇ……ギザキさん……勝てるかな?」 まだ息が切れているから途切れがちになる。

「大丈夫。傭兵として幾つもの戦場で戦い生き延びてきましたからって……さっき言ってたから……」

 ソフィアもちょっと心配なんだろう。言葉の端にそんな感じが顕れている。

「大丈夫さ。さっき、軽く手合わせしたけど、昨日アタシが相手したヤツより数段上だね。心配には及ばないって」

 ヴィオラさんの声が後ろで響く。見れば……真剣な面持ちだ。ヴィオラさんも判っているんだな。多勢に無勢というのが如何に不利かということが……

 改めて見渡せば……エァリエスさんは闘技場の横で腕を組んで鋭い視線のまま、闘技場の様子を監視している。場外審判という所かな? たった一人が勝ち残る方式だから……場内審判は要らないのだろう。エァリエスさんの近くにノィエさん。ノィエさんは両手を握りしめて祈るように見つめている。……やっぱり心配なんだろうな。ギザキさんの実力を一番知っているのはノィエさん……じゃなくてグレイさん? かな? さて、グレイさんは? と捜してみると……

「あ……あんな所に」

 札売り屋の横で腕を組んで立っている。

 さては……ギザキさんの札でも買ったのかな? う〜む。抜け目がないというか……なんというか……

「始めっ!」

 合図と共に全員が一斉に……なんて事には流石にならない。全員がそれなりに戦場なんかで戦い慣れしているんだろう。こういうのは最初に戦いだしたのが不利。戦っている間に死角から襲われるし、体力も削られる。一番有利なのは、最後まで戦いに加わらなかった時宜に恵まれた人。その幸運を掴むために誰もが様子見になる。そして……誰かが我慢できずに闘いだしたときに一気に形勢が流れていく。予測不可能な結果に向かって……

 ……などと考えていたら、斜向いの闘技場で戦いが始まりだした。一気に乱闘になって……数人が闘技場から落とされ、残るは……3人。あ〜長引くぞ。三竦み状態ってのは、実力が伯仲していると特に長引く。

 で、視線を元に戻すと……こっちではまだ何も始まっては居ない。全員がギザキさんを睨んで、動かない。つまり……全員がギザキさんが実力で一番だと考えているということだ。最初にギザキさんを落としたいんだけど、先頭に立つ気はない。だからといって、ギザキさん以外のを落としたら、対ギザキさんとの戦闘時に援軍が少なくなり、落とされる可能性が高くなる……そんな思いが逡巡しているんだろう。

「さて……そっちから来ないならこっちから行くぞ」

 ギザキさんは腕組みをしたまま闘技場への中央へと進んでいく。

 あの〜 本当に余裕在りすぎて嫌みなんですけど……

 でも、中央に進むのは定跡だな。何より全員から同じ方向から攻められることが無くなる。一番つまらない押し出し負けという結果にはなりにくい。けど死角から攻められやすくなったんだけど……

「はっ」 と、やや斜め後ろの死角に入ったばかりのが長大剣を振り翳して襲ってきた。

「遅い」と言わんかのように、盾でも受けずにくるりと体を入れ替えて避けると背後になった輩が突きかかってくる。その突きを舞うように躱すと肩の盾で身を当てる。と……一瞬にして場外まで吹き飛んだ。

「野郎っ!」

 直後に2、3人が背後から襲ってくる。が、腕の盾で横殴りに刃物を殴り躱して、更に後ろから最初の輩が突き刺してくるのもくるりと躱して盾で殴る……のを相手も盾で受けたけど、威力が違う。盾ごと吹き飛んで、闘技場の床に転がった。その間にギザキさんは先に飛びかかってきた3人の真横に回り込み、腕の盾で殴る……というか身を当てる。拳術家が使う発勁とかいう技に近い殴り方。速度で殴るんじゃなくて近距離から相手を吹き飛ばすような殴り方だ。3人まとめて吹き飛んで……一番外の1人が場外に転げ落ちた。残る二人も床に転がり……直撃を受けたのが腕か胸を痛めたようでそのまま転げ回っている。

 あっという間に……ギザキさんの優勢だ。残るのは5人。今、手合わせして闘技場に残っている3人は次の手に躊躇するだろう。もう敵ではない。

 様子を見ていた2人が……にやりと笑う。

「ふうむ。少しはできそうだな?」

「弱虫が何か言ったか?」

 すかさずギザキさんが気勢を挫く言い返し……いや、攻撃を煽っているんだな。案の定、怒りを速度に変えるかのように大男が両腕の太剣を振り回しながら襲い来る。そして、その大男の背後に隠れたもう一人が細長い剣で突き掛からんと狙いを定めながら冷静にギザキさんを睨み……襲ってきた。無駄の無さそうな戦法。仲間だろうか? でも……そんなのもギザキさんには児戯に等しいのだろう。慌てずにすすっとステップを踏んで大男の両剣を躱し、飛び込むと胴体に一発……いや、瞬時に数発。後ろの男は大男が邪魔で突きかかれずに……最後にギザキさんが肩の盾で当てた発勁で……大男ごと床へと吹き飛ばされた。

 数息の間に……闘技場に立っているのはギザキさんだけ。

 床に転がっているのが5人、既に落とされたのは2人。そして立ち上がった一人……さっき3人かがりで襲ってきたうちの一人が立ち上がり襲い来ようとしたところに瞬時に進み寄ると……数発の拳と肩の盾での発勁で瞬時に外へと弾かれた。

 残るは4人。


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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