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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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14.夜の旅 3

 ソフィアとアリアの仲間達

 ちらりと老執事さんを見る。『その申し入れ。感謝の念に堪えません』みたいな視線でアタシを見ているのは……なんかこそばゆい。

「そう? まぁ、中を検めるだけであれば……」

 ソフィアは箱を受け取り……蓋に手をかけると……蓋は指先が触れただけで開き……中の品を見せてくれた。

「え? これは……?」

 ソフィアが驚くのは無理はない。その箱の中に入っていたのは……

「槍とかの石突きだ……ね」

 アタシも古道具屋の娘だ。こういう品は見慣れている。でも、ただの石突きではない。金と銀を溶かし合わせたような……全体としては白銀色なんだけど、表面に金で象眼が刻まれていて……その象眼も聖紋……神具とか寺院の奥の宝物殿の扉とかにありそうな聖なる紋様に見える。更には側面に三つ? 見ようによっては、六つか七つの何かを差込むような溝があるのが不思議。でも……そんな構造の石突きなんて見たことはない。

 ……それにしても神々しいというか、あんまりじいっと見ていられない輝きだ。

「これって何か伝説の?」

 アタシが尋ねると老執事さんは微笑みながら頷いた。

「確かに。この城に伝わる聖宝、光の鎖剣は……今はギザキ殿が所持しておりますが、これは光の杖を持つ尼僧が顕れたときにお渡しするように伝えられ、代々、引き継いで来た結界書簡。コレが何かは……私めにも判りませんし、伝わってはおりませぬが……この書簡箱は確かにお渡しするように伝えられたモノ。どうかお納めを……」

 結果書簡? え〜と……

「結界書簡って……エァリエスさんが持っていたあの呪紋様の箱みたいなモノ?」

 尋ねるアタシにソフィアは微笑みながら応えてくれた。

「相手を限定した……法術効果を籠めた書簡のことよ。予め決めた相手しか開けることはできないのよ」

 ふぅん。世の中には便利な……いや、あんまり便利じゃないか。中が判らないんじゃ、どういうモノかが判らなくなるし……

 ソフィアは箱の蓋を閉め、老執事に手渡した。

「残念ですが……どう使って良いのかが判りません。私がこの品の使い方が判るときまでお預かり願えませんか」

「そうですか……そういうことならば、このトワザ・ノ・トザ、一命に変えましても御護りいたします。いゃあ、修復された身で言うのも何ですが、聖宝もない今、少し手持ち無沙汰でして。何か用事というか役目がないかと少しばかり心寂しいところでありました。では確かに」

 なんか急に砕けたぞ。この老執事さん。

 それは兎も角、まぁ、無事に事が済んだな。ふう。面倒くさくなりそうだったのが、収まって良かったなとアタシはふぅと息を吐いたとき……足元で何かが小さく鳴いた。

「ん? な、何コレ?」

 見れば……跳栗鼠? 後ろ足が長くて、前足と後ろ足の間に皮膜がある栗鼠の団体が……紫色の林檎とかを持ってアタシ達を見上げている。

「おぉ、これはお嬢様が手懐けておられた跳栗鼠達ですな。お嬢様達と何処かでお逢いに?」

 え〜と。この話の流れからして……

「お嬢様って……ノィエさんのこと?」

「おぉ。そうです。名を知っておられると言うことはすれ違っただけということではありますまい? 居場所を御存知ならば、跳栗鼠たちの願いを聞き届けてはくれませぬか。序でながらこの爺の願いをも……」



 既に夜明け近く。夜の闇が深い紫を経て明るい朱に変わりかけていた。

 その朱の中をアタシはソフィアに抱きかかえられ、そしてアタシは袋鞄の中の人形達と……跳栗鼠達の届け物である紫林檎とか棘葡萄とかの実を山ほど入った袋鞄を抱えて……ノギの町へと急いでいた。

「ソフィ姉ぇ……まだ? もう腕が……」

「もう少しよ。頑張って」

 心配してくれるのは……跳栗鼠たちの土産物が重い所為だ。最初は苦にならなかったけど……時間と共に石を抱えているのかと思えるほどに重く感じるようになっていた。

「着いたわよ」

「あ〜もうダメぇっ!」

 ソフィアが町はずれにふわりと降りたと同時にアタシは袋鞄をどさっと地面に投げてしまった。あ〜もっと、ゆっくりと下ろしたかったけど腕の力が保たなかった。

「……潰れてないよね」

 と、ソフィアを振り返るけど……苦笑いが返ってくるだけ。投げたのはアタシなんだから仕方ない。

 ま、そんなこんなでソフィアとの一夜の旅は終わった。

 アタシはなんだか……安心した所為か、急に睡魔が襲ってきた。


「おはよう」

 ノィエさん達の部屋をノックして……ショボショボの眼で挨拶する。

「何よっ! こんなに朝早く……げっ」

 ノィエさんが引いたのは……まぁ仕方ない。ショボ眼で睡魔と格闘中の顔なんてゾンビと良い勝負だろう。

「はい。跳栗鼠達からの差し入れ。あと老執事……ノトザさんだっけ? ……からの手紙。ちゃんと渡したわよ。んじゃ、おやすみ〜」

 予備の袋鞄ごと果物と手紙を渡して、アタシは背を向けた。後ろでなんかノィエさんとギザキさんが騒いでいたけど、役目は終了〜 さっさと部屋に戻って寝直そう。

 部屋に戻ると……ソフィアが欠伸を噛み締めながらネメシアさんに霊精を振る舞っていた。

 ヴィオラさんはなんだかにやにや笑ってるし……

「おはよう。ネメシアさん。ヴィオラさん。ソフィアは……寝るの?」

「ん。ちょっと疲れたから……私も昼まで……ギザキさんの復活戦が昼から始まるからそれまでには起きないとね」

「だよね〜 んじゃネメシアさん。ヴィオラさん。おやすみ〜」

 なんかネメシアさんは呆れているような顔していたけど、いいでしょ。たまには、こんな事も。

 アタシとソフィアはそのまま、ベッドに潜り込んで布団を被った。

 ん〜なんか心地よい疲れ。久しぶりだな。


 こんなに寝るのが心地良いのは……



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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