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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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14.夜の旅 1

 ソフィアとアリアの仲間達

14.夜の旅

 その夜。

 寝る前のソフィアの様子がちょっと変だったので……アタシは構えながら寝たふりをしていた。

 案の定、夜更け過ぎ……二つ月が満月となって天頂に懸りかけ、窓からの月明かりが入らなくなった頃。ソフィアが起きて……アタシとヴィオラさんを起こさないようにベッドを抜けて……杖を持ち部屋の外へと出て行った。

 今までも出逢ってからこの町に来る旅の途中でソフィアは時々、夜中に起き出して何処かに行っている。朝までには戻ってくるんだけど……何処で何をしているのかが判らなくて……不安なんだ。うん。多分、不安なだけなんだ。

 アタシはそそくさとベッドを出て、着替えて袋鞄を担いでソフィアの後を追う。

 通りの先……町はずれ近くに辿り着くとソフィアは小さく呪紋を唱え……手に小さな光の珠を作った。

(なんだろね?)

 袋鞄の中の人形達に話しかける。

(○ウィスプやないかな?)

(なにそれ?)

(★何かを捜すときに使うヤツや。道先案内人みたいなヤツ)

(ふぅん。何かを捜すの?)

(☆なんやろね?)

(◎……今は捜すモノなんて無いと思う)

「聞こえているわよ。隠れてないで出てらっしゃい」

 不意にソフィアに声をかけられてアタシは物陰から出て、照れ隠しに頭を掻いた。

「……何処へ行くの?」 不安を声にして尋ねる。

「隠すつもりはなかったんだけど……」

 ソフィアは杖を見つめて……目を閉じてから、呟く。

 声は聞こえなかったけど……唇は『あまり見せたくはなかったの』と動いていた。

「ソフィ姉ぇ……あのね」

 アタシはちょっとだけ……怒ったような悲しいような声で……ソフィアを睨んだ。

「アタシの心配してくれるのは良いんだけど、アタシにもソフィ姉ぇの心配させてよね。時々、夜中にいなくなるのって……もの凄く不安なんだから。荷物があるから帰ってくるんだと判っているけど……それでも、一声ぐらいかけてくれても良いんじゃない?」

 ソフィアはアタシが怒り声で言い始めたことに吃驚したみたいで……目を丸くしてじっと見ている。

「兎に角ね。勝手にどっか行かないでよ。約束したじゃないっ。一緒に旅するってっ!」

 それにしても……どうしてアタシは怒っているんだろう?

 ソフィアは吃驚した顔から……何かが……何か心の閊えが一つ消えたような安心したような戸惑ったままの微笑みでアタシに謝ってくれた。

「ゴメンね。じゃ、一緒に行こう」

 ソフィアは片手に持っていた光の珠を空中に放り投げた。


「ひゃあぁぁぁぁ」

 思わず声を出さずにはいられなかった。ソフィアに抱きかかえられて空を飛んでいる。高い山を越えて、草原を越えて、湖を越えて飛んでいく。

 アタシ達の前に飛んでいく光る珠、ウィスプを追いかけて飛んでいく。アタシが抱える袋鞄の中の人形達もなんか驚いている。

『○こんなに長く飛ぶんは初めてや〜』

「長く?」

『☆いつもは……って以前はすぐにどっかに頭をぶつけて終わってたからなぁ』

「アェリィ? あんまり昔のことを……」

『★んでも、竜髭靴を貰ってからは大丈夫。んでもこないに飛ぶのは初めてやね』

「まぁね……ノェアの城が壊れたって事は……一大事だからね」

「そうなの?」 ちょっとだけ振り返ってみると……いつになく真剣な表情だった。

「そう。あの城は……魔王との戦いの時に重要な場所……になるはずだから」

 よくは判らないけど……ソフィアは魔王との戦いに真剣なんだなと改めて思った。

「着いたわ。あれが城……」

 先を飛んでいたウィスプが……くるりと周りながら降りていったのは岩山に囲まれた森の中の巨岩だった。

 ソフィアはその岩には降りずに、周りの岩山のちょっとだけ広い平場に降りた。

「ふぅん。なんか盛大に壊れているわね」

 平場から見下ろすと……二つ月の満月に照らされて。眼下の深い森に岩の固まりが壊れたままに浮かび上がっている。

「さてと……」

 ソフィアは何か呪文を口の中で唱え……もう一度、光の珠を作った。


 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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