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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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10.とある諍い

 ソフィアとアリアの仲間達

10.とある諍い

 翌朝、目覚めるとネメシアさんはちゃんと椅子に腰掛けて剣を持っていた。なんか……疲れているような感じだっだけどソフィアがつくった霊精を7杯ほど飲んでからは元の『のほほょん』とした感じの笑顔に戻った。しかし……なんで剣を持っていても何ともないんだろう? 白魔導師だったら食事用のナイフだって持てなくて難儀するというのに。実際、ソフィアだってヴィオラさんだってなるべくナイフを使わずにフォークとか……東の方の国で使っているという『ハシ』とかいう道具で食事している。ソフィアなんか最近はフォークだって使うのに躊躇っていて、聖絹布の手袋越しで無いと掴めなくなっている。……これは『法力酔い』とかいう病気のせいかも知れないけど……

 幽霊になると白魔導師の戒律とかは関係なくなるのかな?

 でだ、ヴィオラさんは武術大会に申請しに行って……ソフィアはこの町の武器屋捜し。ソフィアが別れさせられた家族って武器屋をしているらしい。顔も思い出せないけど、姉と妹がいるのは確か。そして姉は史上最年少で武術大会に優勝。妹は黒魔術が得意……で、周り近所に迷惑をかけていたのも確からしいので、家族構成とかから判るんじゃないとたどり着く街々で尋ね歩いている。ちなみにソフィア自身も姉が史上最年少で優勝した時に子供の部で優勝していたらしいけど……そういうことなら、顔が思い出せなくてもすぐに判るだろう。ソフィアが判らなくても相手は判るはずだからね。

 さて……アタシは留守番していても仕方ないので……護衛のソフィアの人形を頭とかにひっつけて、この町の近くにあるという遺跡の手がかり捜し。序でに次の遺跡の手がかり捜し。ここで遺跡が見つからなかったり、大したお宝がなければ次の遺跡のお宝に頼るしかないからね。この頃、大した収穫がないのでソフィアの財布に頼りっきりだし。ちっとはいい宝を見つけないとね。

 ……で、骨董の目利きが期待できそうなネメシアさんにも同行願っている。

 最初は、戸惑っていたけど今は嬉しそうにアチコチの店を覗いては品定め。昨日の店のは……ちょっと高いので、この町を出るときに財布と相談して買えばいいだろうと考えて違う店を回っている。

「へんだなぁ」

 何が変かというとだ。誰も遺跡の事なんて知らないというのだ。まぁ、気づかれない遺跡というのは結構あるけど、入り口とかの手がかりはそれなりにある筈なんだけど……

「精霊の門なんて誰も知らないというのは変だよね。ネメシアさん」

 問い掛けられたネメシアさんも戸惑っている感じだ。

 前に見つけた絵地図に書かれている古文字によるとだ、この町の近くに『精霊の門』という洞窟があるらしい。この地図に記述されているムーマ文明儀礼文様とかいう文字をソフィアに教わっているだけど……まだ単語しかわからない。ともあれ、地図に書いてあるのは……

「……『幻は古の岩』『鍵を紋様へ』『新しき光へ』『古き光より』『3つの試練』『重なる響』『沈黙か契約』『黒き水晶の矢、忌々しき矢を……』なんだけどなぁ……文章になりそうでならないし……画の方しかあてにならないんだよね」

 『幻は古の岩』と『水晶の矢、云々』いう文だけ付け足しで書かれているようにも見えるんだけど……元の画としては洞窟の入り口に浮彫りの柱が左右に建っている。ということは遺跡ということは知らなくても洞窟とか、壊れた石柱とかの話はそれなりにある筈なんだけど……

「武術大会で余所者が多いしなぁ」

 尋ねた相手がこの町の人だという確率自体が半分以下じゃ効率が悪すぎる。店の人達もかき入れ時とばかりにアタシの話には乗ってもくれないし……

「う〜ん。武術大会が終わるまで待った方が良いかな」

 『そうね。その方が良いかもね』と仕方なさ気な笑顔でネメシアさんが応えてくれた時……人集りの向こうがなんか騒がしい。

「なんだろね?」 尋ねてみたってネメシアさんに判るはずもない。

 人を掻き分け、騒ぎの中へと入っていくと……何のことは無い。ぶつかったとか足を踏んだとかで喧嘩になりかけているだけ。そんなのは良くある話なのだが……なんか一方が変な格好。

 厳つい大男が千斤斧を二つ鎖で繋いだのを首から提げているのは……まぁ良くある格好だとしてもだ、もう一方は……盾を両肩と二の腕に付けている。つまり4つ。そんな格好の人は今まで見たこともない。その人の横にいた関係者らしき女の人が心配げな顔で離れていった。

 さて……確認したからさっさと退散。

 ネメシアさんが何か言いたげだったけど、諍いに巻き込まれるのはまっぴらゴメンだ。それに勝敗なんて見た目で判る。

 どっちが勝つかって?

 決まっている。余裕がある方。つまりは盾の人。離れて見守っている女の人は盾の人の連れだろうけど、巫女さんみたいな格好しているって事は白魔導師かその類だろうし。サポートがあるということはそれだけで負ける確率は低くなる。それを置いておいたとしても盾の人の表情には余裕がある。厳つい方の顔には相手の実力を探っているような心許なさが有り有りと浮かんでいたし。

 で……アタシ達が人集りを離れたら後ろで鈍い音。ちらっと振り返ると厳つい方が空中に浮かんでいた。瞬後に地面に落ちる音。ふぅん。殴り飛ばすというか殴り上げるなんてやっぱりかなりの実力だな。その後は人々のざわめきしか聞こえてこないから、一発で終わり。実力者同士の戦いなんて一瞬で終わるもんだなと改めて感心してしまった。


 宿に戻ると……何故かソフィアがヴィオラさんを怒っていた。

「どうしてそんなことになったんですっ!」

「ゴメンよ。ワタシも知らなくてさ。ちょっとした間違いだよ。ゴメン。ホント。ワタシが何とか勝ち続けるから棄権して……」

「どしたの?」

 割って入ったアタシの顔をソフィアは『ちょっと黙ってて』みたいな怒った顔から『絶対に乗ってこないでよ』みたいな顔を経て『……無理かな』となり『怪我だけはしないでよね』みたいな心配顔になっていた。

 ヴィオラさんはと見てみれば『案外、いけそうだね』みたいな悪戯っ子みたいな顔でアタシを見ていたけど、ソフィアのジト目睨み攻撃に気づいて小さくなっていく。

 アタシとネメシアさんは顔を見合わせて『きょとのん』とした顔のまま。

「……で。何がどうしたの?」



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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