7.魔剣と人形遣い 3
ソフィアとアリアの仲間達
「元々は魂を吸い取るという魔剣。だけど封印呪の効果としては……あの剣で斬った人は光を浴びると必ず生き返って……ついでにアタシに対して恐怖を抱くらしい。斬られる前の数日ぐらいの記憶を失ってね。実際……その効果は確認している。いつまで封印呪の効果が続くか判らなかったから……ここ暫くは抜いてもいなかったからどうなっているのか判らないけどね」
ソフィアは難しい顔をして考え込んでいる。複雑な法術なのかな?
「光の術……治癒の術が基本のようですけど……かなり複雑に変形させた術ですね。変形方式が人形遣い特有なモノなのかも……」
ソフィアははっきりとは言わないけど……多分、封印呪は斬られた相手の魂を糧としているような……そんな感じなんだろうな。
「でも確かなのは……」
訴える様な目でエァリエスさんを見てからソフィアが言った。
「……魔剣であるならば所有者に対しても封印呪の効果が何かしらあるはずです。そして封印呪を解除したときも……」
ソフィアが気にしているのは……エァリエスさんの事なんだろうな。悪い人じゃ無さそうだし、実際、魔剣とかの事を話してくれたから素直な人なんだろう。つまり善人だよね。……そういう人が何で魔剣なんかを持っているのかは……疑問だけど。
「……破壊するという行為がエァリエスさんにどういう結果をもたらすのか……予想できません。何処かに隠したとしても誰かがその魔剣を見つけないとも限りません。そして見つけられて使ったときにも……」
う〜ん。封印するというのは難儀なこと……なんだな。
「……すみません。どうしたらいいのか、暫く考えさせてください」
ぺこりと頭を下げるソフィアをエァリエスさんは「しかたないね」みたいな感じて静かに見ていた。
「ん。白魔導師になったアンタがそういうんじゃ、アタシに出来ることは何もないね。頼んだよ」
ん? なんか変な言い回しだな。いや、言い回しは変じゃないのか?
けど、何か引っかかるな……。いや、何が引っかかるんだ? アタシは?
「じゃ、明日から武術大会だ。その警護とかで忙しいから……ヒマになるのは10日後ぐらい。だから……それまでは頼むよ」
「宿代の方は安くするようにしておくから」と言い残し、箱を担いでエァリエスさんは出て行った。まぁ、それまではここにいてくれという意味なんだろうな。
「ふぅ」と深く息を吐いてソフィアは考えていた。
「難しいよね? 人が掛けた封印呪なんて」とアタシの問い掛けにソフィアは小さく首を振って否定した。
「難しいのは封印呪自体じゃなくて魔剣の破壊。あの人に影響のない破壊の方法なんて……それに……」
戸惑いが隠せないような目でアタシを見て聞いてきた。
「どうしてエァリエスさんは……あんな人形遣いなんかと……」
なんか悔しそうだ。そして……悲しそうだ。
「人形遣いだけど……エァリエスさんを助けたりしてるんだから悪い人では無さそうだよ?」
「……そうじゃなくて」
なんか凄く苦しげな表情だ。
「……そうじゃなくて、なにか……理由は判らないけど……あの人が……あの人の何かが嫌な感じがする……できれば……」
口の中で『近くにいて欲しくない』というような言葉を呑み込んだ感じでソフィアは両手で頭を抱えた。
「……いけない。白魔導師なんだから、誰かを嫌っていたりしたら……ダメなんだ」
ソフィアは白魔導師であり続けようとしている。
それは本当の家族にあったときに判って貰うための唯一のサインだから。でも、白魔導師であること自体は家族と別れる原因でもある。その辺の矛盾と……いや、それ以上の何かがソフィアに嫌悪感を抱かせているんだろうか。
「仕方ないよ。誰でも虫の好かないというか……波長の合わない人はいるって」
アタシの言葉に少しだけ楽になったような感じで、ソフィアは顔を上げた。
「でも、白魔導師は……万人を受け入れないと……法力を失ってしまう」
戒律かなんかなんだろうね。その理屈の根拠は。
「関係ないって。だって、ソフィアは……アコライト、修行中の見習い僧なんだから。完全じゃなくても誰も責めたりしないよ。それに法力は……少しぐらい無くなっても『超絶法力』には違いないよ」
アタシの言葉に……やっと安心したようににっこりと笑った。
「ありがとう。アリア。本当にありがとう」
むぎゅっと抱きしめられた。……えぇいっ。また呼吸困難になってしまった。……けど、まぁいいや。暫く見ていなかったような飛びきりの笑顔だったし。
……でも、ちょいと力が強すぎるぞ。マジに呼吸ができな……
「ソフィア。帰ったよ〜 ……って、何してんの?」
と、ドアを勢いよく開けてヴィオラさん達が帰ってきた。
助かった〜 もう少しで気絶するところだった。
読んで頂きありがとうございます。
これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。
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