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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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6.奇妙な集まり

 ソフィアとアリアの仲間達

6.奇妙な集まり

 ギルドの食堂で長テーブルの端に着いているのは……紫銀の鎖を巻き付けた剣を持っているネメシアさん。その隣にアタシ。アタシの隣はソフィアの人形達、ただし予備の袋鞄の中。ネメシアさんの向こう側にソフィア。ソフィアの隣にヴィオラさん。……で、ヴィオラさんの隣に美人剣術師。その隣というかネメシアさんの反対側の席で小さくなっている薄汚れた感じの青白い男。青白い男とアタシの間にはまだ数人座れるぐらいの席は空いて居るんだけど……まぁ、誰も座りには来ないよねぇ。

 ネメシアさんは半透明の幽霊だし。ヴィオラさんはぐちゃぐちゃに泣いているし、ソフィアはヴィオラさんを宥めるのに手一杯だし、ヴィオラさんの隣の美人剣術師は『殺すぞ』オーラを目一杯放っているし、青白い男は『私に話しかけると不幸になりますよ〜』オーラをソレなりに放っているし、人形達と見ればなんか袋鞄の中で身構えて、青白い男を警戒しているし……

 アタシはアタシで『何がどうしてどうなったらこうなるの?』オーラを自分で放っているのがよく判るし……

 実際、何故にこうなって居るんだろ?

「なんで……ぐし……アンタが……死んじゃうんだよぉ……ネメシアぁ……アンタ……あんなに強かったじゃない……三大尼僧って呼ばれてたけど……アンタは別格で……ぐし……抜群で……ぐし……ワタシが足元にも及ばないぐらい……ぐし……強かったのに……ぐし……」

 泣かれている本人のネメシア(幽霊)さんは……見るからにのほほんとしている。『そうは言っても死んじゃったんだから仕方ないじゃないの』みたいな感じで。

「ネメシアさん……なにか、ヴィオラさんに応えてあげて下さいま……きゃあっ!」

 ソフィアの奇声に何事かと見れば、ネメシアさんが二人を見ている。……だけだよね?

「ネメシアっ! わ、判ったから。目を閉じてっ!」

 ヴィオラさんとソフィアが怯えているというか怖がっている? 何故に? どんな目で睨んでいるんだろと廻り見ようとしたら……コッチを振り返ってにっこりと笑っている。『二人とも失礼よね〜?』と言わんばかりの笑顔なんだけど……そういえばいつも目を閉じている……というか長い睫毛プラス常にニコ目なんで瞳は見ていないな。

 どんな瞳なんだろ?

 しかし……除霊を仕事の一つとしている白魔導師の前でこんなに平然としている幽霊って……史上初なんじゃないの? ……しかも除霊の効果があるという浄化の法力を帯びている光の杖の横で……ね。

 浄化の法力を帯びている杖の横でも平気なのは……ネメシアさんの生前の法力振動数が1で尚かつ基本魔法が浄化だったからだそうな。よく判らんけど。

 まぁ、そんなことは置いておいてだ。美人剣術師と青白い男はなんなんだろう?

「……えーと。すいませんけど……取り敢えず、御名前を教えていただけます?」

 誰も尋ねる雰囲気がないので、アタシが美人剣術師に話しかけてみた。

「アタシは……エァリエス。ギルドじゃ双鋼玉眼のエァリエスで通っている。コッチの青白いのはグレイ。アタシの命の恩人の……人形遣いさ」

 ざわっと……全員が毛羽立った。いや、食堂にいた全員がざわついて……そそくさと距離を置いて座り直している。……んだけど、アタシ達は席を立つわけにもテーブルを移るわけにもいかずに……そのまま座っているしかなかった。

 人形遣い? 初めて見た。

 確かに……ソフィアが人形遣いと間違われるのがもの凄く嫌なのがよく判るくらい闇っぽいオーラを放っている……んだけど、なんか戸惑っている感じはなんだろう? 自分が何者かを理解できずに……いきなり陸に上がったのに呼吸できて大丈夫なことに戸惑っている魚みたいな感じ……の様な表情をしているような気がするんだけど……気のせいかな?

 兎に角、この世で嫌われ者の人形遣いが命の恩人? 随分と波瀾万丈な人生のようだ。

 しかも、さっきは蹴飛ばしていたし。

 それにしても命の恩人を蹴飛ばすというのは……どゆこと?

「で、アンタ達は? その幽霊の知合いなんだろ?」

 美人剣士のエァリエスさんが睨んでいるのは……幽霊のネメシアさん。

 ん〜まるっきり知らないと言うことではないんだけど……知合いというのもちょっと違う気がする。とはいえ、説明はしておこう。

「アタシはアリア。遺跡探検家。この町には近くにあるという遺跡を捜しに……で、アタシと一緒に旅しているのが……杖を持っている白魔導師のソフィア。ソフィアの知合いで昨日から同行しているのが……貴女とソフィアの間にいるヴィオラさん。そして、ソフィアとヴィオラさんの……え〜と。同じ寺院で修行していた……らしい人の幽霊が……ネメシアさん……でいいんだよね?」

 ネメシアさんは剣を抱え持ったまま、アタシに向き直って『よく判っているわね〜』みたいな感じで小さく拍手している。随分と呑気な幽霊だ。

 ソフィアが持っている杖が伝説の『光の杖』というのも、ソフィアとヴィオラさんとネメシアさんが誰も見たことがないという伝説の聖アィルコンティヌ寺院出身というのも、袋鞄の中の人形達が四力の精霊の……ミダルだっけ? とにかく、動くというのも……面倒くさいから説明省略。タダでさえ、そういうことを言ったら落ち着くまで時間が掛かるんだから。こんなややこしい状況でもっとややこしくする必要もないでしょ? だよね?

「それで……ネメシアさんとそちらの関係は?」

 と、問うアタシに……眦をキッと上げて……序でに腰に下げている2本の剣の内の一本をすらっと抜き、その切っ先でネメシアさんを指して言い放った。

「その幽霊が持っているのがアタシの剣っ! そして、その剣はコイツが死ぬ間際に封印呪をかけてあるっ! そのコイツを生き返らせたのがその幽霊なんだってさっ!」

 はひ?

 えーと。ちょっと待って。整理するから。

 それにしてもやたらにギザギザがついた剣だな。いや、それはどうでもいいや。



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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