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聖霊の街  作者: 葛城 炯
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5.遭遇

 ソフィアとアリアの仲間達

5.遭遇

 ノギの町は川を遙か下に見る断崖の上に在った。崖自体は段丘で一番上の段は砂だらけだけどその下は畑とか森らしく緑に覆われている。町へと続く道の両側も乾燥地帯の割には森なんだけど……森の中から町が段丘の上に突き出しているような……そんな町。町に着いてみると……流石に武術大会だっけ? ……が在るらしく、人が多くて賑わっている。聞けば、3年ぶりだそうな。以前は毎年開催していたんだけど、段々と廃れていたのが、近頃、軍事国家オーヴェマの版図が近くに来たんで慌てて開催……みたいな感じらしい。

 まぁ、こんなのは傭兵とかの実力診断みたいなモノだし。

 オーヴェマもこの地方の攻略には手間取っているみたいで、近くのレガス国なんか一度は政略したのはいいけど、その後は傀儡政権が実効支配に失敗して、古の都市国家の復活〜っ! という感じで、アチコチの町が独立宣言しているし。んで、オーヴェマの主力軍勢自体は別の地方の軍事政略に躍起でコッチには『いつでも戦略出来るから勝手にしていいぞ〜』てな感じで高見を決め込んでいる……らしい。

 まぁ戦乱の中の平和みたいな……単にお祭りっぽい雰囲気の町。そんな喧噪の中、ヴィオラさんはアッチコッチの出店やら何やらを忙しく覗いている。アタシとソフィアはそんなヴィオラさんとはぐれないようにギルドのある宿に向かって3人で歩いていると……

 ふと、ソフィアが立ち止まった。

「どしたの?」

 はぐれないように手を繋いでいるアタシも立ち止まらざるを得ない。……ので、ソフィアの視線の先を探ってみると……

 人が忙しそうに通り過ぎていく大通りの中に……1人の少女が微笑みながら立っていた。

 金髪で白い服……フォーマルドレスというか礼式服みたいな簡素ながらも仕立ての良さそうな服を着て……そういう服には全く似合わない、ひねた十字架みたいな杖? ……いや、鞘に収まっている歪んだ剣みたいなのを持って……コッチに向かって小さく手を振っている。

 で……だ……

 アタシもソフィアが立ち止まった理由の一つはすぐに判った。

 身体が半透明……つまりは単純に言って……幽霊。少なくとも霊体に間違いないっ!

 ……同じ?

 いや。なんとも、昨日といい、今日といい、精神的に衝撃的なことが多すぎるんで……昨日の暑さボケかな? いや、そんなことは関係ないっ!

 兎に角、真っ昼間の街角のしかも大勢の人がいる大通りに……幽霊?

 随分と大胆な幽霊さんだ。

 向こうがゆっくり近付いてくると……何故か、ソフィアは後ずさりし始めた。

「え……なんで? そんな……ダメ。近付いちゃ……消えてしまう……」

 なんのことだろ? と、悩むアタシを余所にソフィアの後ろから不意にちょっとだけ見慣れた顔がひょこりんと出てきた。

「ソフィア、見つけたよ。上質な紫銀の鎖。コレで魔石をちゃんとしたネックレスに……って、どしたの?」

 ヴィオラさんはすぐにソフィアの異変に気づき……その視線を追って……幽霊さんに気がついた。

「え……ネメシア……なんで?」

 驚いたあまり……紫銀の鎖を落としているし。

 とはいえ……ネメシア? ……え〜と。何処かで聞いたな。……ん〜と。

(……清き光の浄化のネメシア。解毒と施術の鋭きラディア……)

 そうだ。昨夜聞いた聖アィルコンティヌ寺院の三大修行尼僧……って、おい。その……

「ネメシア? さん?」

 既にアタシのすぐ横まで近付いた幽霊さんに声をかけてしまった。 

 幽霊はアタシの方を見て、微笑みが満面の笑みと変わって、小首を傾げた。そして唇が小さく動いた。アタシの読唇術が確かならばその動きは……『久しぶりね』……なんだけど?

「何処かでお逢いしましたっけ?」

 と思わず問い掛けてしまったアタシに、幽霊さんはちょっとだけ、戸惑った表情になって……困った顔のまま微笑んでいる。……のかな?

「アリア……逢ったこと在るの? あ、ダメ。近付いちゃ。浄化してしまいますっ!」

 幽霊さんはソフィアの方へと近付いていくんだけどソフィアは片手で杖を背に隠し、ヴィオラさんをもう一方の手で制止しながらまだ後ずさりしている。

 そか。

 ソフィアの基本魔法は浄化。浄化の魔法は除霊とかの時に使う魔法。ソフィアとしては幽霊さんに近付きたいんだけど、近付くと……除霊してしまうから近付けない。……そういうことだな。

 なんか……幽霊に気圧されている白魔導師って感じで……間抜けっぽい光景だ。

 超強力な白魔導師二人を気圧している幽霊のネメシアさんは腰に手を当てて立ち止まり……『何言ってんよ、貴女達』みたいなゼスチャーをして……ふと、気づいた感じでヴィオラさんが落とした紫銀の鎖を拾い上げ……振り返ってにっこりと笑いながら、手に持っていた剣みたいなのに巻き付けていった。

 『良いモノ拾った〜』みたいな感じで……

 ん〜。ここで気にする必要はないんだろうけど……なんで幽霊なのにモノが持てるんだろ?

 巻き付け終わって……アタシを見て……『私の基本魔法を思い出すようにあの二人に言ってくれる?』と唇が動いた時……不意に後ろで大きな音がした。

「馬鹿野郎っ! なんにもアタシのことを思い出せないなんてどういうつもりだいっ!」

 罵声と共に通りに転げ出てきたのは……薄汚れた僧服を身に纏った青白い男。

 そして、その男を蹴飛ばしたらしいのは……ギルドの入り口に仁王立ちしている……金髪で右が紅鋼玉、左が碧鋼玉みたいな綺麗な瞳の剣術師。中に鎖を仕込んでいるらしいそれなりに重そうな樹綿のローブに傭兵の様な肩鎧と腰鎧、腰に2本の幅の広い剣を下げて、腕組みして……左の顔にギザギザの三条の傷が額から頬にかけてあるけどかなりの美女だった。序でに言えば……腕組みしているから判ったんだけど引き締まっているけどかなりのプロポーションだな。どうでも良いか、これは。



 読んで頂きありがとうございます。

 これはアコライト・ソフィア、アリアとソフィア、闇の剣、岬岩城の姫の後編に当たります。

 感想などいただけると有り難いです。

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