一章【帰還】 #1故郷へ
そんなこんなで月日が経ち、学園の修復は終わったが、兎陽と亜莉亜との亀裂は戻らないままだった。
「マスター。」
「ん?どうしたんだメル。」
「言わなくて良いのですか?『焔の戦姫』がマスターだということを。」
「いや、今は言いたくない。いずれ話すべき時が来ると思う。俺はその時まで待つつもりでいる。」
「そうですか、分かりました。マスターがそう思うなら私もそうします。」
亜莉亜は焔の戦姫に憧れてる為、メルが喋ってしまって、その憧れを壊すわけにはいかないから、喋ってもらわない方が自分にも亜莉亜のためでもあるはずだ。
少なくとも、俺はそう思う。
「おい、トハル。」
「どうしたんですか?スターシャ先生。」
スターシャ先生が、手紙を持ったまま話しかけてきた。
「これお前に向けて届いたんだ。安心しろ、中身は見てない。」
「別に見られてもいいですけど。まあ、ありがとうございます。」
そう言い、兎陽は寮の自室に戻った。
「これ誰から来たんかなっと・・・てあの人かよ。」
差出人は【グラステーナ】と書いてあった。
彼女は、兎陽の師匠であり、家を追われた身の兎陽の親のような人だった。
『兎陽へ 今こっちは【禁忌の魔獣】の封印が解けかけている。誰が解こうとしてるのは分からないが、少なくとも危険ではある、私が行きたいところだが、祠までかなり遠い。だから戻ってくるついでに再封印してくれないか?手順は簡単だからお前でもできるはずだ。 グラステーナ』
「あっちなんかあったみたいだな。」
「だなー。」
「ギルス、お前除き見んなよ。」
「いいだろ別に、死ぬわけじゃないし。」
「で、お前行くのか?」
「まあ、近いし俺が行った方がいいんだろうな。」
「そういやお前の故郷ってどれ位なん?」
「大体1500キナくらいかな。」
「割と遠いじゃん。」
「そうか?」
短いと思うんだけどな。
「よし!心配だからお前の親友である俺も行ってやる。」
「いやいらん。」
「ヒドイ!!」
「だから付いてくんなよ。」
「りょーかい。」
なんか素直だな。明日槍でも降るのか?
こうして兎陽は故郷に帰ることになった。