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おめでとうございます。
アナタは人間代表日本選抜に選ばれました!
そういって俺の目の前のリクルートスーツの女は両手をパチパチさせて、キラキラと輝くビー玉のような大きは瞳をクリンとさせながら俺を見ていた。
ベットでケータイをいじっていたおれは突如、机の上に背筋をしゃんと伸ばしたリクルートスーツ姿の黒髪ポニーテールの若い女性を前に脳内の思考回路は停止し
ぁうぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!
何秒か遅れて絶叫というリアクションが取れました。
ひとしきりパニックし、テンプレートの質問を終えた俺はとりあえず一週間前に買い換えたパソコンが乗っている机の上から女性に降りるように頼み、履いたまの靴を玄関に置かせ、彼女が踏み潰したであろうタバコの生存を確認しながら1k、8畳程の部屋の隅に座らせた。
「あのー……」
「ちょっと黙ってて!!!!」
机を挟んで座りあった2人
1人はリクルートスーツのおんなに、もう1人は部屋着の男
女は正座で俺はあぐらをかき腕を組んで眉間にシワを寄せ、女を睨む。
ただじっと、
不機嫌を装いつつ、
パッパラパーになった脳内が落ち着くのを待っていた
とりあえずパニックの最中、彼女から得られた情報は
1・俺が人間代表?日本選抜?に選ばれたこと
2・こいつがなぜ、瞬時に俺の部屋の机に現れ、俺のタバコを踏みにじったのかは機密事項とかで不明
3・本当かはさておき、こいつは日本政府の外務省官僚であるということ
4・名前は鷹生雀26歳
以上だ。
俺と同い年の女
これ以外は全く信じられん。
1億万歩譲って、俺の机にどこからとも無く、イリュージョニストよろしく現れたとしよう。
ワーすごーい
いきなりぼくのへやの
つくえのうえに
おんなのひとがー
これはラノベてきてんかいかなー?
となれ!!!!
あいててて、
ここは……きゃ!
とパンツを見せろ!
それがなんだ!
服装はかっちりスーツに漆黒の黒髪。
ポニーテールはポニーテールでもぴっちり頭皮の宝塚ポニーテール!? 宝塚ポニーテールってなんだよ!
顔は可愛いけど人の家の机に土足で上がって、人の机の上にお家置いたタバコを踏むな!
嫌いだよ!
なんか嫌だよおういう女!!!!
ハチャメチャ展開なのにどきどきしねぇーよ!!
訳わかんねぇ状態でいきなり登場して
なにペラペラ説明してんだよ!!
頭に入ってこねぇよー!
「えーそれで?外務官僚のスズメちゃんがなんで俺の部屋のニトリで三万で買ったイカしたおれの机の上に立っていたんですか?って言うかいつの間に侵入したんですか?警察呼びますよ?」
「驚かせてしまい大変申し訳ございませんでした!」
俺が嫌味たっぷりにリクルートスーツの女を問いただすと、2人の間にある机に隠れるかのように彼女は土下座をした。
一般的なこたつテーブルに隠れるほどの土下座だ、さぞのこの人はツンデレヒロインのお胸ぐらい平らになっていることだろう。
「詳細はさきほど申し上げた通り機密事項に抵触するするためお教えすることは出来ませんが、本来あの様な場所に現れる予定ではありませんでした!」
「は?じゃぁ本当はどこに現れようとしたんですか?引き出しの中から出ようとしたんですか?それとも入浴中のバスタブの中からですか?ごめんなさいね!うちユニットバスだからさ!お湯浸からないからそれだったら無理なんですけどね!」
普段こんなに意地悪なことも、愛想の悪い態度も取らない俺だが何だか今は無理だ。こうやって悪態でも付いていなければ会話が成立しない。
虚勢をはらなければ飲まれてしまう!この現実に!!!!
「もちろん、玄関前に……」
「はぁ?」
彼女は少し頭を上げて申し訳なさそうに結わえきれない前髪から僕の顔を除いた。
ちなみに今は水曜夜の10時だ
玄関前であろうとこんな時間の来訪は非常識だ。
「夜分遅くに失礼かと思いましたが、日中は平日休日共にお部屋にいらっしゃられないようでしたので……その、」
「だからってなんで玄関前が机の上に土足で突然現れるなんてことになるんだよ」
俺が問いただすと外交官僚スズメちゃんはゴニョゴニョとバツの悪そうに言いよどむ。
しかし気が立っている俺がうっかり舌打ちをしてしまうと恐る恐る弁明した。
「それはその、座標の入力を間違えてしまい、」
入力?転送装置みたいなもんか?
それでいきなり机の上に現れた?
それなら部屋に侵入してきた気配を察知できなかったもの理由がつく。
いや待てよ。
「なんで車でこない?」
「え?」
「いや、もう転送装置がなんで現代に?とか、なんで官僚さんが使ってるの?とか、しかも外務省が?とか疑問は尽きないんだけどさ、そもそもアパートの玄関前に突如スーツ姿の女性が現れた姿をアパートの他の住人なり、配達業者なりに見られたらまずくね?さっきみたいにシュバンっと現れるんだろ?そんなの見つかっていいの?だめじゃね?」
「それは、あの、えー……」
外務省官僚スズメちゃんはかなり戸惑っている。
なにか確信を付いてしまったのか?
「……機密事項です。お答えできません。」
ん?
「まさかその事はかんがえてなかったとか?」
まさかそんなことはないだろ?
「……機密事項です。」
あれ?
「車で来るのがだるかったからか?」
「機密事項です。」
「面倒臭いから転送装置つかっちゃえってか?んで慣れないから座標の入力間違っちゃいました!テへ♪ってか!?」
「ごめんなさい!機密事項です!」
いや、お前は憂鬱なアニメの天然巨乳タイムスリーパーか!
そんなんでごまかせられるかァァ!
俺はイラついて頭でこの外交官僚スズメちゃんを勉強は出来るけどダメな女認定してしまった。
官僚なのだから頭脳明晰で有能な女性なのだろうが、この人には何がこう、常識的なものが、何かが欠落しているようだ。
なまじ学歴が優秀なもんだから気が付かれなかったようだ。
いや、そもそもこいつが外交官僚というのも怪しい。
一体何をしに来た?
さっきこの女言っていた「人間代表日本選抜」?
あれはなんだ?
「それで、あんたは何のためにここに来たんだ?」
それを聞いた自称外交官僚スズメちゃんは土下座をしていた頭を上げて、真剣な眼差しで今までのオドオドした態度を一変させ、俺の質問に答えた。
「はい。最初にお伝えした通り。我々、外務省国際協力局地球規模課題総括課2係は望月兎さんを地球外生命体との特別外交官に任命いたします」