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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第35章 人形墓標
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第17話 鋼と剣・氷

 飛び交うミサイル。

 回避しながらミサイルを斬り捨てたアイラが撃ち続けるゴーレムへと近付く。


 爆発がすぐ背後で起こっていることにも構わず刃が届く距離まで近付くとゴーレムへ剣を振るう。アイラが持つスキル【明鏡止水】は、落ち着いている状態で斬れば相手の防御力に関係なく切断が可能になる。

 そのために絶対必要となるのが斬れる、という明確なイメージ。

 そして、なによりも触れる必要がある。


「やっぱり、あたしたちの能力に対処しているよね」


 ゴーレムの寸前。

 あと数センチで触れられるという所で見えない壁によって剣が押し返される。見えず、認識することができないものが相手では【明鏡止水】も力を発揮しない。


「強力な盾を持っているだけの相手ならよかったんだけどね」


 シールドの向こう。

 ゴーレムの両腰に取り付けられた砲身がアイラへと向けられ、ミサイルが放たれる。


 体のすぐ近くを覆うように展開されているシールド。

 ミサイルもシールドに触れるが、阻まれることなくシールドを飛び越えてアイラへと襲い掛かる。


 飛んできた1発目を剣で斬りながら爆風を利用してゴーレムから離れる。

 その途中、飛んできた2発目を飛ばした斬撃で完全に破壊する。


「さて、どうしようか……って、イリス?」


 後ろを見ずに離れることを優先させていたため同じように走り回っていたイリスが近付いていたことに気付けなかった。


「交代」

「はぁ……了解」


 背中合わせにぶつかったアイラとイリス。

 二人は互いの位置を交換すると遠距離から浴びせられる互いの攻撃を防ぐために動く。


 イリスへ迫っていたのは無数とも思える数の銃弾。アイラが意識を集中させると飛び交っていた大量の銃弾が動きを止めたようにゆっくりと見えるようになる。剣を振るうことで飛び交う銃弾を叩き落とす。

 飛ばされたミサイルもイリスの放つ冷気によって凍らされ、爆発することもなく床へ落とされる。


「【氷壁(アイスウォール)】」


 二人の周囲に高さ3メートルの氷の壁が出現する。


 防御の為だろうと判断した二体のゴーレムがミサイルと銃弾を飛ばす。

 所詮は氷の壁。簡単に砕けるだろうと思われた壁だったが、ゴーレムの猛攻を受けてもビクともしない。

 単純な攻撃を得意としているゴーレムたちはさらに同じ攻撃を浴びせる。だが、同時に氷の壁が耐えられている原因を探ろうと探知システムをフル稼働させる。


 ただし、ゴーレムたちが原因を探れることはない。


「氷の壁に【迷宮結界】も一緒に展開させた。ゴーレムの攻撃で壊せるようなものでもないし、氷の壁が隠してくれているから見つけられることもない」


 問題は隠れているだけでは倒せないことだ。


「ありがとう」


 だが、アイラにとっては敵から姿を隠せる瞬間。それに、敵の姿が見えない瞬間が必要だった。


 再び互いの位置を変えて相手を元に戻す。

 ゴーレムがいるはずの場所は、真っ直ぐに撃たれるミサイルが氷の壁に着弾する場所から割り出すことができる。腰に差し、鞘に納まったままの剣に手を添えると力を研ぎ澄ませる。


「気にしないで。私も時間が必要だった」


 イリスも魔力を練り上げる。


『お、使うのですね』

「喜んでいる暇があったら維持に力を注いで」

『は~い』


 自らの内でのみ対話が可能な存在――氷神。

 彼女との間にある繋がりを強化させ、自分を依り代にして顕現させる。ただし、顕現させても自分の意思を奥底へ沈み込ませるような真似はせず、纏うように顕現させる。


 イメージするのはノエルとティシュアの関係。

 幻術によって憑依させた姿を見たことでイリスにも目指すべき姿が見えた。


「『5秒後に氷の壁を解除する。大丈夫?』」

「誰に聞いているの? 解除した瞬間に真っ二つにしてやるわ」

「『じゃあ、よろしく』」


 魔法で作られた氷の壁が一瞬で消える。

 氷の壁が消えたことでアイラが見た光景は、手を伸ばせば届く位置にまで迫ったミサイルと今まさに砲身から出ようとしていた1発のミサイル。何よりもミサイルを撃とうとしているゴーレム。

 アイラの手がブレたと思った瞬間、彼女の眼前からは全てがなくなっていた。


「ありゃ、ちょっと強過ぎたかな?」


 アイラの右手には、鞘から抜き放たれた剣がしっかりと握られていた。

 その代わりに眼前まで迫っていたミサイルは跡形もなく消失し、放たれようとしていたミサイルもゴーレムの胴体と合わせて消失していた。残っているのはゴーレムの頭部と足のみ。

 ゴーレムの9割近くが剣の一振りによって消失していた。


「眼前にある物全てを斬り飛ばす。けっこうな量の魔力を持って行かれるし、直前に意識を研ぎ澄ませる必要があるから使い勝手が悪いのよね」


 今のアイラのレベルでも『何かを斬る』という想いすら邪魔となる。

 視界を閉ざして『全てを斬る』ことだけに集中することによって初めて成し得ることのできる技。


「それに何も手に入らないし」


 残されたのは残骸と言っていいゴーレムの一部のみ。

 魔石も胴体にあったため一緒に消滅させられていた。


「さすがはパワーアップしてくれた甲斐あったわね」


 オーガが強化してくれたからこそアイラの全力に耐えられる一撃を放つことができた。


「そのうち、シエラを連れて行ってあげようかな」



 ☆ ☆ ☆



 氷の壁の内側で蒼い輝きに包まれるイリス。

 高密度の魔力は形を得て、羽衣へと姿を変える。


「『今の状態なら10秒が限界。それでも十分』」


 銃弾が放たれる中を真っ直ぐに進む。

 正面から雨のように降り注ぐ銃弾。しかし、全身から強烈な冷気を放つイリスへと到達した瞬間に弾丸が氷の礫へと姿を変える。冷気によって氷に覆われるのではなく、イリスから放たれる凍結空間へと到達した瞬間に氷と化す。

 そして、あらゆる氷は氷神へダメージを与えることができない。


 銃弾に対して正面から突撃しているにもかかわらず、ただの一発たりともイリスに届くことはない。

 不可解な状況にゴーレムが仰け反る。

 その瞬間には、ゴーレムを凍結空間へと捉えていた。


「凍結完了」


 瞬きするよりも短い時間で氷に鎖される。

 次いで振るわれたイリスの二本の剣がゴーレムの体を粉々に砕く。


 床に転がっているのは氷の破片としか思えない物体。


『また【加護】を使ってね』


 イリスから【氷神の加護】が剥がされる。

 普通よりも負荷の掛かる使用方法。魔力の消耗も大きければ、頭に激痛を伴っていた。


「無理をしなくても勝つことはできた。けど、消耗よりも肉体的なダメージを気にする主だから。多少の無茶をしてでも確実に勝たないと」

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― 新着の感想 ―
[一言] 氷神様は名前呼びしてないんでしたっけ? 活躍してる氷神様、なんか新鮮です。 モミモミしてるイメージが強くて(笑)
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