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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第35章 人形墓標
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第14話 ゴーレム生産工場

 遺跡の第二階層。

 円形の台がいくつもあり、台の上には造り掛けと思われるゴーレムが鎮座していて、台を取り囲んだ魔法道具が金属の塊としか思えない物の形を整えていく。


 一番近くにあった台の様子を眺めていると鋼の猟犬の胴体へと形が変えられて別の台へと運ばれて行く。そこには脚や銃弾を吐き出していた銃が既に準備されており、組み立てる為の作業へと移っていた。


『そちらへ喚んでいただけますか?』


 メリッサからの要請。

 俺たちの方が先へ到着したのなら【召喚】で喚び寄せた方がいい。

 スキルを使用するとラチェットさんと手を繋いだアイラ、メリッサとノエルの姿が近くに現れる。


「今のは……」


 【召喚】に慣れていないラチェットさんが呻く。

 いきなり目の前の光景が変われば普通の人間は戸惑う。


「移動系スキルの一つです。それよりも、ここが第二階層ですけど、どう思いますか?」


 【召喚】から意識を逸らす為に尋ねる。

 ラチェットさんの感想も俺たちと同じだった。


「どこからどう見てもゴーレムを製造する為の工場だろ」

「ですよね」


 全員で第二階層を奥へ進む。

 奥へ行けば行くほどゴーレムは完成しており、武装まで完全に備えた鋼の猟犬の姿があった。


 ただ動く様子がない。

 要の動力である魔石が備わっていないからだ。

 完成した鋼の猟犬は、先ほどのエレベーターと同様に上昇した床に運ばれて上の階層へと移動していった。

 第三階層への入口は簡単に見つかった。


「ダメだ。人間が乗れるようには造られていない」


 元々あった台が上の階層へ移動したことで新たに下から現れた台座にも古代文字が刻まれていた。動かす為の方法を求めて読み取ったブライアンさんだったが、描いてあった文字は絶望的だった。


『運搬専用』

『移動使用禁止』


 あくまでも完成したゴーレムを運搬する為の装置。


「ここにある機械は使えないか」

「機械?」

「ああ。昔は科学って呼ばれる文明の方が発達していたぐらいで、魔法は補助程度に使われていたんだ。で、魔力を必要としない道具のことを機械って呼んでいた」


 ゴーレムを製造しているのは、その機械らしい。

 機械でゴーレムの体を造り、魔石を動力にして動かす。


「古代文明時代には大量にあったらしいが、文明が失われた際には最低限の道具ぐらいしか持ち出すことができなかった。文明が失われたことで大規模な機械の造り方も失われてしまい、今では用意することができない」

「それはいい事を聞いた!」


 ブライアンさんの言葉を聞いてラチェットさんが拳を握りしめる。

 ……ん、何をするつもりだ?


「もちろん破壊するんだよ」

「破壊!? 正気か?」

「当然だろ。さっき鋼の猟犬が造られるところを見ただろ」


 一体が完成させられるまでに数分といったところ。

 しかも、作業の途中で次の個体を造り始めているため十分もあれば数体のゴーレムが完成されることになる。

 道理で無限にも思えるほど鋼の猟犬を投入することができたわけだ。


「この工場がある限り、敵の戦力が尽きることはない」

「絶対に止めろ」


 ラチェットさんは思い付いたのが良案だと思っているから止めるブライアンさんが気に入らない。

 けど、俺もブライアンに賛同する。


「敵も工場である第二階層を破壊したくないのか動けるゴーレムを投入してくることはないみたいだ。上の階層がどうなっているのか知らないが、無尽蔵に追加されるゴーレムの相手をすることになるかもしれない。けど、機械を破壊することで上へ行けなくなるかもしれないんだぞ」

「うっ……」


 俺たちは最奥へ到達しなければならない。

 その手段を自分から失うような真似をする訳にはいかない。


「わぁったよ」


 結局はラチェットさんが折れた。


「だったら先へ行こうぜ」

「待ってくれ。アレだけは調べさせてほしい」


 ブライアンさんが近付いたのは工場の中心にある胸の高さほどの柱。

 柱の上部にはボタンが取り付けられており、ブライアンさんがボタンを押して操作をすると柱の上に半透明な板が現れる。


「やはり、ここはゴーレムを製造する為の施設だったらしい」


 半透明な板にはゴーレムの姿が表示されて、詳細な説明が文字で記されていた。ただ、古代文字で説明が書かれているため俺たちには読めない。


「上から手当たり次第に読んでもらえますか?」

「どうしてだい?」


 メリッサの質問にブライアンさんが首を傾げる。


「一人で把握するよりも全員で情報を共有した方が何か気付けることがあるかもしれません」

「そういうことなら」


 文字を一つずつ読み上げながら施設について説明される。


 第二階層でゴーレムの体が造られる。

 そして、第三階層でゴーレムの体に命が与えられる。ゴーレムにとっての命、というのは魔石のことであるため保管庫でもあるのだろう。


「そして、第一階層は製造・保管しておいたゴーレムを発送させる為の施設らしい」

「保管庫はありますか?」

「ああ、ある」


 半透明な板を下へスライドさせると第一階層の下に第零階層が存在していたことが表示される。


「私たちは気付かなかったが、第一階層にあった大部屋全体が地下で保管されていたゴーレムを出す為の装置になっていたらしい。先ほど利用したエレベーターと同じ代物だ」


 大部屋の壁の一部には空間魔法による仕掛けが施されており、決められた場所のみであるが転移することが可能らしい。

 そうして色々な場所へゴーレムを派遣していたのがこの遺跡の役割。


「ここは完全なゴーレムの製造工場らしい」

「でも、それだと遺跡とは違いますよね」


 これまでに見つかった遺跡は、形こそ違うものの財宝のある施設だと記録されている。

 だが、ここには魔石やゴーレムの素材はあるものの財宝の類はないように見える。


 遺跡のある場所と空間が繋がってしまう理由は判明していない。しかし、魔力の濃い場所で空間が繋がってしまうことが多いことと魔物が棲み処にしていて最奥にある財宝を手にすることで崩壊することから、二つの空間にある魔力が共鳴しているからだと考えられている。

 遺跡だと考えていたから最奥にある財宝を入手すれば消失させることができると考えていた。


「果たして単純にクリアすることができるんでしょうか?」

「それは……」


 その答えは今のところ出せない。


「いえ、この場で考えても仕方ないことですね」

「ああ、上の階層に関する情報も全て開示されている訳ではない。何かしらの手掛かりがあるはずだ。問題は上へ行く方法だけど――」

「失礼します」


 機械の前へ割り込むメリッサ。慣れた手付きでボタンを押して行く。すると、妙な駆動音が聞こえてきて攻撃が止められる。


「あれは……」


 離れた場所に上の階層から台座が降りてくるのが見える。


「アレが上の階層へ行く為の移動手段です」

「まさか、君は……」

「簡単な言葉だけですけど、古代文字が読めるようになりました」


 画面に表示される単語だけでもかなりの量があった。

 それらをブライアンさんが読み上げてくれたおかげでメリッサは単語の中にある規則性を読み取り、朧気ながらも翻訳ができるようになった。それも、ブライアンさんよりもスムーズっぽい。


「そんな……私は冒険の片手間とはいえ、習得するのに数年もの月日を要したというのに……」


 その辺は得手不得手があるから仕方ない。

 単純にメリッサの学習能力が高かっただけだ。

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