表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第35章 人形墓標
986/1458

第13話 エレベーター

後半は第三者視点です。

 回転する刃を装着したゴーレムが刃を前へ突き出しながら突っ込んでくる。

 シルビアと念話で打ち合わせをすると左右へ分かれて壁沿いに走る。


 ゴーレムも突き出していた刃を動かして俺たちを斬り裂こうとするが届かない。いや、届かないのではなく届かせることができない。

 強力な力を持つ回転する刃であっても壁を破壊することができないのは既に見ている。ずっと追い掛けていて対策している様子もなかったはずだ。弾かれることを恐れて壁に対して余裕を持った攻撃をすることに賭けて壁に沿って走ることで回避させてもらった。

 結果、俺とシルビアの間を素通りさせることに成功した。


 ただし、トラップは仕掛けさせてもらった。

 タイヤからけたたましい音を立ててゴーレムが前へ進めなくなる。


「【蜘蛛糸網(スパイダーネット)】」


 迷宮にいる蜘蛛型の魔物が吐く糸を利用した攻撃。

 粘つく糸がタイヤに絡まって身動きが取れなくなる。さらに全身へと飛ばして絡め取る。

 ゴーレムの持つ刃なら【蜘蛛糸網(スパイダーネット)】も切断することができる。

 けれども、斬れる刃が糸に届かないのでは意味がない。


「シルビア、魔石の位置は分かるな」

「はい。胸の中心です」


 シルビアが駆け、背面から胸へ向かって跳び上がる。

 迎撃しようとゴーレムが足掻いているけれど、単純な力で解けるほど簡単な糸ではない。


「取った! ……え?」


 魔石があると思われる場所の背面が開いて通常サイズの剣に金属の棒が取り付けられた新たな手が8本飛び出してくる。

 8本の剣が飛び交ってシルビアへ襲い掛かる。


「ちょ、えぇ……ま、待って!」


 全ての手がそれぞれ意思を持っているかのように縦横無尽に動き回る。

 8本の手から繰り出される攻撃をシルビアは空中にいながら全て捌いていく。


「戻って来い」

「きゃっ!」


 道具箱から出した鎖をシルビアの腕に巻き付けて手元へと手繰り寄せる。

 引き戻されたシルビアをキャッチするとゴーレムから離れる。

 腕に装着されていた回転する刃や胴体から飛び出してきた剣はゴーレムの手が伸ばせる範囲までしか届かない。その範囲よりも外側へ移動すれば攻撃が届くこともない。


「動きを一時的に止めることには成功したけど……」


 胴体から飛び出してきた剣で絡め取っている糸を斬ろうとしている。

 その手も糸で絡め取ることは可能だが、熱によってプスプスと煙を上げ始めた糸の状態を見ると効果的とは思えない。


「ゴーレムの動きを無理矢理止めているから負荷が掛かっているんだ」

「その負荷が熱を生み出して糸を焼こうとしているんですね」


 どの道、糸での拘束は持続しない。

 他の方法による拘束も考えられなくもないが、回転する刃の威力を思うといつまでも持続させられるとは思えない。

 それよりも先へ進むことを優先させたい。


『ビンゴ! 二人とも戻ってきて』


 イリスから念話が届く。

 ゴーレムの横を駆け抜けて大部屋へと戻る。迎撃しようとゴーレムも剣で攻撃してくるけど、回避に専念して【壁抜け】を使用する俺たちへ攻撃が当てられるはずもなく床に弾かれる。



 ☆ ☆ ☆



 足止めを引き受けたマルスたち。

 大部屋に残されたイリスは意識を集中させると冷気を部屋全体へと行き渡らせる。特殊な金属による壁によって囲まれた大部屋で冷気を放っても壁を凍て付かせることはない。

 今のイリスが知りたいのは風の流れ。


「こっちです」


 明確に風の流れが違う場所を発見する。


「ここが上の階層へ行く為の装置」

「ここ?」


 イリスに続いて移動したブライアンは首を傾げた。

 そこには本当に何もなかったからだ。そもそも大部屋には何もない。


「この施設の壁や床は全て魔法による効果を弾くようになっていて物理攻撃による耐性もある。なら、上の階層へ行く為の装置も魔法は使われていないと考えた方がいい」


 移動装置だけは魔法が有効になるように設定すればいい。

 そういった手段も存在しているが、非常に開発が難しい上に回転する刃にも耐えられる力を考えれば魔法に頼らない手段を用意した方が手っ取り早い。

 何よりも遺跡を動き回っているのはゴーレム。動力に魔石を利用しているようだが、この遺跡は魔法的な力に頼っていないことが窺える。


「さっき部屋全体へ冷気を走らせた。壁や床が凍るようなことはなかったけど、隙間は別」


 注意深く床を見てみると隙間ができていて凍っていた。


「正確に言うと目視できないほどピッタリくっついた床の間に冷気を流して隙間を広くした」


 それによって正方形のタイルが出来上がっていた。

 さらにイリスの感覚が床の下には何もないことを捉えていた。


「おそらく、床が上へ動いて上へ行けるようになっている」


 天井を見上げてみる。

 ただし、今は天井があるだけで第二階層の入口らしい物は何も見えない。


「手掛かりは見つけている」


 冷気が走ったことで床の表面に窪みがあることを見つけた。


「これは……」


 窪みには、5個のボタンが2列並んでおり、上の方にイリスが見慣れない文字が彫られていた。


「上の階層へ行く為のコマンドを正確に入力することで行ける仕組みになっているんだと思う」


 それが上に書かれている。


「けど、私には読めない」


 正確なコマンドが分からなければ装置を起動させることはできない。


「――上へ移動させる場合には『2116』を押せ」

「ブライアンさん?」


 呟くようにしながら3つのボタンを4回押す。

 すると、イリスとブライアンの立っている床が揺れ、上昇を始める。天井がスライドして上昇する床を受け入れる準備も整う。


『ビンゴ! 二人とも戻ってきて』


 マルスとシルビアへ戻ってくるよう言うとすぐに二人とも飛び乗る。

 糸を斬り裂いたゴーレムも追ってくるが、自身よりも高い位置へ既に移動してしまっていることを確認すると諦めて後退して行く。


「助かったよ」

「お礼ならブライアンに言って」

「よしてくれ。私は上昇させる為に必要なスイッチを押しただけに過ぎない」

「それでもブライアンさんが分からなかったら、私たちは大部屋で立ち往生……ううん、ゴーレムが追ってくることを考えたら逃げ回ることになっていたかもしれない」


 上の階層への行き方が分からずに右往左往していれば探索も諦めざるを得なかった。


「で、何をしたんです?」

「どうやら、この装置は『エレベーター』と呼ばれていた装置らしく、ボタンを操作することで指示を出すことができるらしい」


 ブライアンが決められたコマンドを入力することによってエレベーターは上昇を始めた。


「それにしてもよく読めましたね」

「ここに書かれているのは古代文字だ」


 古代文明時代に使われていた文字。

 大災害によって文明が崩壊して以降は廃れて現代の言語へと緩やかに変化していった。


「古代文字が読めるんですか?」

「私は魔法使いだ。魔法を極める為に古い文献も読み漁ることもある。特別なスキルでも持っていないのなら古代文字の習得は必須だ」


 魔法も昔の方が強かった。

 そのため古代文字で綴られた魔法書が見つかった時なんかは高値で取引される。


「けっこう便利かもしれないですね」


 時間があるなら習得してみるのも一つの手かもしれない。


「それにしても、古代文字で綴られた装置の動かし方か……ん?」


 動いていた床が止まる。

 いつの間にか第二階層へと到達しており、見える景色が変わっていた。


「どうして、あれだけのゴーレムがいたのか気になっていたんだ」


 補充されていたのは間違いない。

 問題は、それだけ大量のゴーレムがどのように用意されていたのか、ということ。


「ここで造っていたんだ」


 腕のような形をした魔法道具が金属を加工し、ゴーレムの体を造っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ