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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第35章 人形墓標
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第3話 遺跡依頼再び

 冒険者ギルドからの呼び出し。

 ランクを上げてギルドから頼られるようになると避けては通れない。指名依頼と同様にギルドが特定の冒険者を指名して依頼を受けてもらう。

 指名しているため報酬は破格になるのだが、誰もが受けたがらない面倒な依頼だったり、手に負えない魔物を討伐しなければならなかったりするため本音を言えば避けたい。まあ、高ランクでいる為の義務とも言えるので拒否は諦めている。


「ようこそマルス君、それにイリスさんも」


 冒険者ギルドへ入るとルーティさんが迎えてくれる。

 朝の忙しい時間が落ち着いた暇な昼前の時間を狙って訪れたので彼女も手が空いていてすんなりと迎えてくれた。


 最近では付き添いがイリスの担当になっている。冒険者ギルドへ行くなら俺よりも適任だし、それぞれ自分の子供の面倒を見ているだけで本当に忙しい。先日のメンフィス王国のように遠出をしなければならない時もあるので屋敷にいる時ぐらいは子供を優先させてあげたい。


「何か依頼したいことがあるって伺いましたよ」


 屋敷を訪れたギルドの職員からは、頼みたい依頼があり詳しい内容は担当であるルーティさんから説明があるとだけ聞いていた。


「はい。こちらが今取り組んでいる依頼になります」


 出された依頼票に描かれていたのは、遺跡の探索。


「懐かしい」

「そういえばイリスと最初に会ったのは遺跡探索の時だな」


 あの時は同業者のまま別れた。

 それが、こんな長い付き合いになるなんて思いもしなかった。


「もしかして、俺たちに遺跡探索へ参加するのが依頼ですか?」


 遺跡探索は儲かる。

 それと言うのも、探索する遺跡は他に誰も探索されていない手付かずな宝物庫と言ってもいいぐらいに多くの宝がある。

 そのため発見後は、冒険者同士の無用な衝突を避ける為に冒険者ギルドが攻略の指揮を執る。


 攻略は必要だ。

 発見されてから数日は問題ないらしいが、一定期間が経過すると遺跡から魔物が排出されて近隣にある村や町を襲うようになる。普段は魔物への警戒など最低限にしかしていない場所に出現することもあるため早急な対応が望まれている。


「そう、とも言えますし違うとも言えますね」

「どっちですか」

「既にアリスターからも5組のパーティが派遣されています」


 攻略は確実に行われなければならない。

 そのため十分な実力を備えていると思われるパーティにのみ斡旋される。


「俺たちは外されていますよ」


 もう20日ぐらいはアリスターでのんびりと暮らしている。

 その間にも情報収集の為にギルドを訪れているが、遺跡探索の話なんて聞いていなかった。


「マルス君たちは儲ける必要がないでしょう」


 ルーティさんは俺たちが冒険者では考えられないほどの資産を保有していることを知っている。

 たしかに迷宮のことを考えれば儲けは必要だ。

 しかし、普通の冒険者が言う『儲かる』程度では不足しているのも事実だ。


「遺跡で得られる儲けを必要として、実力があると判断したパーティに声を掛けました」


 昇格したばかりのBランク冒険者や昇格を目指しているCランク冒険者。

 Bランク冒険者となる為には所属する冒険者ギルドのギルドマスターに実力と功績を認められる必要がある。そのためBランク冒険者に憧れる者は多く、昇格を目前にした冒険者は無茶をする傾向がある。

 俺たちはアレコレしている内にギルドマスターが勝手に認めてくれたようなものだし、イリスはフィリップさんが傍にいたから無茶なんてせず着実に功績を積み上げていった。


「彼らが失敗した時の保険が俺たちですか?」


 俺の質問に再度ルーティが首を振った。


「既に失敗しています」

「は?」

「今回発見された遺跡も5階層から構成されると思われる場所です。これまでの事から問題ないと判断したパーティが挑みましたが……全員が1階層目をクリアすることなく撤退を余儀なくされました」


 幸いにして死者はいない。しかし、これ以上の探索を断念せざるを得ないほどの傷を負っている者の姿まであった。

 これでは失敗と判断してもおかしくない。


「遺跡内にはゴーレムが配置されていました」


 以前に俺たちが挑んだ遺跡にもゴーレムがいた。


「とにかく数が異常です。遺跡の外へ出てきたゴーレムだけでも100体を超えます」

「なっ……!? まさか、出てきたんですか」


 最悪の事態とも言える。


「出てきたと言っても遺跡の外へ出てきたのが約100体。様子見なのかこちらの世界にまで出てきたのは5体だけです。そして、出てきたところへ集中砲火を浴びせることで倒しました」


 この世界と遺跡のある世界を繋ぐ次元の裂け目。

 その出入口は一つしかないため、出てきたところを狙って攻撃すれば集中砲火を浴びせることも可能だ。

 そうして同じ方法で5体のゴーレムを倒した。


 だが、ゴーレムの侵入はそこで止まった。


「今は遺跡探索を依頼した冒険者たちにこれ以上被害が拡大しないよう次元の裂け目を監視してもらっているところです」


 向こう側から出てくるようなら即座に攻撃。

 硬いゴーレムを相手にするのは非常に危険なのだが、本来ならば儲かるはずの遺跡探索の依頼を失敗してしまっているので冒険者ギルドの指示に従ってゴーレムと戦わなければならない。


 同時に遺跡を攻略する手段も考えなくてはならない。

 最も確実な手段はSランク冒険者に攻略してもらう……という方法だった。


「王都で起こった騒動のせいでSランク冒険者の負った傷が癒えていません。どうにか二人には出てもらうようお願いすることができましたが、彼らから依頼を受ける為の条件が提示されました」


 それが、俺たちの協力だった。

 Sランク冒険者としては恥ずかしい話だが、終焉の獣に敗れてしまったのが相当ショックだったらしく俺たちとの共闘を望んだ。

 実力のある冒険者でも死ぬのは恐い。


「場所はどこですか?」


 次元の裂け目が現れたのは、以前の遺跡探索と同じ場所。

 向こう側から出てきた時は全員が南を向いており、真っ直ぐに進もうとしていたらしい。たまたま次元の裂け目の開いている方向が南側だっただけであり、出てきた方向へ真っ直ぐに進もうとしていただけの可能性を否定できない。

 それでも偶然でなかった場合、最終的にはアリスターへ辿り着く可能性がある。


「危機はあるんですね」


 アリスターを危険に晒される可能性がある、というのなら受けない訳にはいかない。


「引き受けますよ」

「ありがとうございます」

「ただ、全員が参加するかどうかは帰って了承を得ないと分からないですね」


 ちなみに隣で話を聞いていたイリスは既に了承済み。

 以前はできなかった遺跡攻略に向けてやる気に満ちていた。


「では、他の方も参加しやすくなるように報酬をもう一つ提示することにしましょう」


 追加で出された報酬はノエルの功績を認める、というものだった。

 今のノエルは大きな功績が認められていない為にCランクのままだった。いや、功績自体はかなり残しているのだが、このままノエルまで昇格させてしまうとAランク冒険者5人にBランク冒険者1人という戦力の集まり過ぎたパーティになってしまう。

 そのことを危惧して上げられずにいた。


 さすがに冒険者ギルドから斡旋された依頼を成功させたとなればギルドもノエルの功績を認めない訳にはいかない。


「頼りにしていますよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 「では、他の方も参加しやすくなるように報酬をもう一つ提示することにしましょう」 っていうから、てっきり 「報酬は、ワ・タ・シ♪」っていって抱きつこうとして、イリスに氷棺直葬されるものとばか…
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