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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第6章 没落貴族
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第13話 再びの王都

「みなさん本当にありがとうございました」


 盗賊たちから色々と情報を聞き出してから3日。

 俺たちは無事に王都へと着き、現在は門で身分確認などが行われた後で王都の中へと入ってすぐのところだった。


 これで俺たちの護衛依頼は表向き完了したことになる。

 ギルドで受け取った依頼票を収納リングから取り出すと依頼人であるテックさんのサインをもらい、依頼は完了された。


 さて、ここからはメリッサの番だ。


「メリッサはこれからどうするつもりだい?」

「まずは、ラグウェイを買う為に色々と協力してくれた人たちに挨拶をして、お話を断るようにしてきます」

「そうか」


 自分が領主になれないのでは意味がない。

 1度盗賊に襲われて逃げ出してしまったラグウェイ家の人間を町民は歓迎してくれないだろう。だからこそ自分たちでも住めるよう手を尽くせる領主という立場に拘っていた。


 だが、目先の目標に囚われていたせいで国という立場まで考えが及んでいなかった。

 それだけでなく兵士たちから得た情報のせいで、本当にお金を渡していた場合にはもっと酷いことになることが予想できた。


「今までお世話になりました」

「パトロンを見つけられたことなどから君には商才もあるんじゃないかと考えていたのだが、やはり追い出された領主の娘という立場は信用問題において不利になる可能性がある。それなら、それまでの功績など関係ない冒険者の方がいいのかもしれないと考えたんだ」


 実際、メリッサには魔法の才能があった。

 俺の眷属になったことで既に人類が到達できる最高レベルの魔法使いになっている。


「ありがとうございます。私には私のやるべきことが見つかったので心配しないで下さい」

「それでも心配ぐらいはさせてくれ。それに以前から君の両親も探していたんだ。これについては続けさせて――」

「その心配には及びません」

「と、言うと?」


 メリッサの目的である『両親の帰って来る場所』を得る、ということを考えれば両親の行方については最も知りたい情報のはずだ。


 話に聞いたところ俺と同じように冒険者ギルドに情報を募ったり、付き合いのある商人から目撃情報を集めたりしていたようだが、結果も俺と同じように芳しくなかった。だから、解決方法も俺と同じ方法を提示してあげた。


「彼から人探しに便利な魔法道具(マジックアイテム)を貸してもらったんです」


 メリッサに振り子(ダウジング・ペンデュラム)を使用させ、家族の位置を確認させた。

 父親を捜す為に使用した振り子は、生きていることを示すように小刻みに動いており、母親と妹の位置も近くにいることが確認できた。どうやら離れ離れになってしまったのはメリッサだけのようだ。


 ただ、今は家族が生きていたことを確認しただけだ。

 これから別れることになるもう1つの家族の為にやらなければならないことがある。もっとも、そのことについてはテックさんに知らせていない。


「そういうわけで近々会いに行くつもりです」

「分かった。メリッサの目的を考えれば家族の下で暮らすのが一番だ。幸せになってくれ」

「はい」


 メリッサとテックさんが抱き合って涙を流していた。

 王都にいることは分かっているから会おうと思えばいつでも会いに来られることは分かっているのだが、やはり離れ離れになってしまうのは寂しい。


「娘をお願いします」

「分かりました」


 その後、奥さんや娘さんとも挨拶をして別れる。


 メリッサは事情説明の為にパトロンとなってくれる人の下へ挨拶に向かった。まだ、出資してもらっていたわけではないが、話を頓挫させてしまった以上は自分の手で筋を通さなければならないとのことだ。


 というわけで俺たちには時間ができた。


「合流はメリッサの用事が済んでからでいいんだよな」

「はい。そう伺っております」


 メリッサの用事も3時間ほどで終わると聞いている。

 その頃にはちょうど昼食の時間なのでどこかのお店で合流しようという話になっていた。


 合流時間まで時間があるのだし、王都の観光でもしてみよう。


 問題は、王都について俺たちが全く知らないところにあった。


「どこか行きたいところでもないか?」

「だったら路地裏にあたしは行ってみたい」

「路地裏?」


 何でそんなところに行きたいのか分からず思わず聞き返してしまった。

 だが、シルビアはアイラの意図に気付いたのか否定し始めた。


「ダメダメ、絶対にダメ!」

「せっかくだから2人が出会った路地裏を見てみたいな」

「絶対にダメ!」


 俺の従者然とあろうとするシルビアにとっては、あの頃の俺に対する態度は忘れ去りたい過去らしく黒歴史らしい。


「なにか掘り出し物でもあるかもしれませんから魔法道具屋にでも行きましょう」

「どうしようか……」


 結局、アイラを路地裏に案内した後で以前に来た時にも利用した魔法道具屋を覗くことになった。


 路地裏に入った瞬間から俯いてしまったシルビアは魔法道具屋では全く役に立たなくなってしまった。迷宮から得られた魔法道具なら俺たちの鑑定が使えるから掘り出し物を見つけることができるのだが、それ以外の場所から出土した掘り出し物には使えない。そのためシルビアの目利きに期待していたのだが、路地裏へ連れて行ってしまったのは失敗だったかもしれない。


 そのまま色々と物色している内に約束の時間がやって来たのでメリッサが待っている喫茶店へとやって来た。

 迷宮同調があるおかげで迷宮核が全員の位置を把握しているので待ち合わせ場所を決めていなくても合流することができる。


「待たせたかな?」

「いいえ、こちらも少し前に来たところです」


 少し前、と言っても10分も前の話だ。

 迷宮核によって把握されている以上、嘘を吐くことにあまり意味はないのだが無暗に突っ込むような真似はしない。


 その後、少し待っていると海鮮風のパスタが運ばれてきた。


「アリスターは辺境で海なんてないから海産物は珍しいはずです」

「そうだな」


 海はメティス王国の南東にあり、南側の中心には険しい山が聳え立っているため海産物を入手するためには王都を経由して運ぶ必要があるため、どうしても割高になってしまう。


 だが、全くないというわけでもない。

 海産物を得られる理由は、迷宮の地下36階~40階が海に覆われたフィールドで海産物を得ることができるためだ。ただ、地下36階まで到達できるだけの実力を持った冒険者が少ないため収穫量は少ない。


「いや、凄く美味しいよ」

「さすがは王都」

「これは……」


 ちょっとした贅沢で大きな魚を購入してオリビアさんに調理してもらったことがあるが、このお店で出してくれたパスタの美味しさは段違いだ。


「そう。それでこそこのお店に案内した甲斐があるというものです」


 俺たちの評価にメリッサも上機嫌になってパスタを食べる。

 このお店はメリッサがパトロンになってくれる人と食事をする時によく利用していたお店で、利用客の中には貴族もいるらしく高級料理店だった。


 ちなみに値段を聞いてみたところ4人で大銀貨を1枚請求された。

 村にいた頃の俺なら思わず逃げ出してしまいそうな値段だったが、幸いにも金貨で十分な余裕があった。


 料理の質もそうだが、それ以上に店は大事な話などをするときに使われることがある。

 そのため客のプライバシーには配慮がされており、聞き耳でも立てたりしない限り話し声が聞こえないようになっていた。もちろんこんな店で盗み聞きのような真似をすれば通報される。

 これから作戦会議を行ううえでもこの店は打って付けだった。


 食後に運ばれてきたコーヒーを飲んでから始める。


「さて、盗賊殲滅作戦の打ち合わせを始めようか」


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