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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第34章 鬼人慟哭
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第3話 神様の隠し事

「聞いてしまった手前、『行った方がいいかな?』っていう選択肢が生まれてしまうんだよな」


 そう思ったのは俺たちだけではない。すぐに、教えてしまったミシュリナさんも「ハッ……!」となっていた。

 こればかりは不可抗力。

 それにノエルだって自分から望んで知ったのだから教えてくれた相手に対して自分の気持ちを悟られない努力をするべきだった。


「知っていましたね」

「ええ、知っていましたよ」


 俺の問いに対する答えはリビングにあるソファの上でリエルを抱いたティシュア様のものだ。

 リエルが生まれてからは完全にベッタリだ。


 ティシュア様が顕現することができるのは、ノエルの傍と自らを信仰していた人々が多くいるメンフィス王国。

 もちろんメンフィス王国の情報はリアルタイムで得ることができる。

 しかし、彼女の方から俺たちに情報を提供したことはない。


「問題が起きていることを知らなければ、このようなくだらない問題で悩むこともなかったはずです」


 知ればノエルが責任を感じてしまうような情報ばかり。

 責任を感じさせない為に全ての情報を遮断する選択をした。


「それに、貴方たちも問題が起きていることを知っても放置していたでしょう」


 メンフィス王国で起きている問題を知ったのは年末のこと。

 それから年が明け、1カ月近くが経過しようとしている。

 その間、俺たちは問題を聞かなかったものとしていた。


「ノエルの気持ちを思えば、あの国を再び訪れることはないですね」


 メンフィス王国の向こう側へ行く時に立ち寄るぐらいのことはしても通り道以上の用を見出すつもりはない。

 それは、ノエルがメンフィス王国を離れた時に決めたこと。


「俺たちもメンフィス王国に関わるつもりがありませんでした」


 ところが、氷神との騒動を経て無視できなくなってしまった。


「メンフィス王国で起こっている異常。はっきり言って異常すぎる」


 人が突如として鬼に変化する。

 しかも、鬼に変化させられた人は自我が乏しく、知り合いだろうと手当たり次第に襲い掛かる。


 この問題で最も恐いのは突発性。

 今のところ原因が全く分かっていない。


「ここまで異常だと神様の関与を疑わざるを得ないんだよな」


 可能性の一つとして話を聞いた時に思い浮かんだ。

 しかし、その時は『あり得ない事』として切り捨てた。


「神が人の営みに干渉するなど稀ですからね」


 メリッサが言うようにこれまで観測されていた神が関与した出来事で最も知られているのは【加護】という形で神の力を与えることだ。

 鬼の出現は【加護】と言うには異質すぎる。

 だから、神は関係ないと思った。


「けど、ピクシーのように神の力を取り込んだ奴がいるかもしれない」


 それが懸念している理由。

 相手が神となれば普通の人間に対処できるはずがない。


「あたしたちには助けられる力がある。で、あたしたちでないと助けられない困っている人がいるなら助けてあげるべきだもんね」

「違うぞ」

「え……」


 アイラの意見をバッサリと切り捨てる。

 たしかに俺たちみたいな強者の力を必要としている人たちを見捨てるのは忍びない。けど、忍びないだけでノエルの気持ちを無視してまで助けに行こうという考えにはならない。


「神様が関与しているっていうことは、そこに神気の塊が残されている可能性があるだろ」


 氷神が暴走した後には、神気によって氷の華が残されていた。

 同様に人を鬼に変える“何か”が残した物があるかもしれない。


「可能なら回収したい」

「え~」


 それが俺の目的。

 ただ、アイラとしては少し不満があるようだ。


「回収には私も賛成です」

「メリッサ」

「ですが、リスクも承知ですね」


 人を鬼へ変える。

 これまでに聞いたことのない未知の力が関与している。


「もちろん、少しでも手に負えない、と判断したなら退却する」


 今のところは原因を探り、様子を見るだけに留める。


「なら、構いません」


 メリッサの賛同をきっかけにシルビア、アイラ、イリスも賛同してくれるようになる。

 そして、最も問題な人物が残される。


「どうする、ノエル?」


 ノエルの扱いが最も難しい。


「子供たちだっているんだから留守番していてもいいぞ」


 既に俺たちが行くことは決定している。

 後は、ノエルが同行するかどうかだ。


「……行く」

「いいんだな?」

「メンフィス王国へ行くって言っても地方でしょ」


 『巫女』として有名だったノエル。

 しかし、ノエルがどういった人物だったのか顔まで知っているのは中央にいるごく一部の人間のみ。

 というのも、ノエルが生活していたのは王都にある神殿ばかりで、偶に神託で人前に姿を晒すことがあるものの彼女の前にいるのは神殿の関係者ばかり。ずっと同じような人たちと接していた。そして、そういった人たちほど騒動で排除されてしまっている。


 中央にさえ寄らなければ安全。


「たしかに、その通りだけど……」

「それに、あの国がどうなったのか地方だけでも自分の目で確かめたい」


 狐耳をピンと立てて決意を露わにするノエル。

 そんな姿を見せられては俺たちがすることは一つだけ。


「同行するのは構わない。何があろうと俺たちが必ず全てから守る」


 俺の言葉に仲間である眷属4人も頷く。


「みんな……」


 自分を守ってくれる。

 その姿を決意が現れていたノエルの狐耳がへにょんと垂れる。


「その代わり一つだけ条件がある」

「条件?」

「リエルのことはノンさんに任せることになるだろ」


 ノナちゃんが生まれたことで育児に専念しているノンさん。

 リエルもノナちゃんのことを妹のように思っている節がある。リエルのことを任せるならノナちゃんの母親であるノンさんが適任だろう。


「メンフィス王国へ行くことを両親に自分の口から伝えるんだ」

「でも……」


 一緒に逃げてきた両親。

 当然、彼らはノエルのメンフィス王国行きを反対するだろう。


「もちろん俺たちからも口添えをする」


 ノエルがしっかりと自分の意思で決めたこと。

 なによりも俺たちが支えることを伝える。


「両親の了解を得てから向かうこと」

「む、う……」


 説得の難易度を考えてノエルが頭を悩ませる。


 だが、結論から言わせてもらえば説得はほとんど必要なかった。二人とも、あの騒動から2年近い時間が経過していたことが大きい。今だからこそ色々なことに踏ん切りをつけさせる為に向かわせることを了承しれくれた。


「その代わり絶対にノエルをここへ連れ帰ってくれ。もう二度と会えないようなことにはなりたくない」

「もちろん、分かっています」


 父親であるバルトさんの言葉。

 すやすやと眠っているリエルをノンさんに預ける。ノンさんの腕に抱かれたリエルは母親の腕に抱かれているように安心し切っていた。


「必ずノエルをリエルの元へ送り届けますよ」

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