表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第33章 氷結群雄
913/1458

第14話 VS氷神 ②

 小柄な氷の兵士の両手には氷の短剣が握られている。

 直前まで気配を感じなかったことから暗殺者のような役割をしている氷の兵士なのだろうと予想できる。


 ……そんなことを考えている間に氷の短剣が腹に突き刺さる。


 メチャクチャ痛い!

 けど、痛みによる怒りは全て攻撃に乗せる。至近距離まで接近されたことで足を振り上げるだけで蹴り飛ばせる。蹴りを受けた氷の兵士が粉々になって砕ける。


「……【要塞城壁(フォートレスランパード)】!」


 苦痛に表情を歪ませながら魔法を使用する。

 今度は人を隠せるような小さな壁ではなく、大通りを覆えるような巨大な壁を出現させる。


 今度は氷神の攻撃を受け止める為の壁。

 そして、逃げる為の壁でもある。


 手近な場所にあった倉庫へと避難する。中は、避難する時に持ち出されたのか荷物が何もなくガランとしていた。


「……っ!」


 腰を落ち着かせると痛みを承知の上で腹から氷柱を引き抜く。

 どうやら致命傷は避けていたおかげで回復魔法を掛けておけば傷を塞ぐことができる。


 淡い光を纏った手を傷口へ押し当てる。

 少しずつ体が回復してくれているものの俺の回復魔法の力はそこまで強くない。


「代わって」


 声が聞こえて見上げればイリスが目の前にいた。

 イリスの後ろでは不安そうにしているシルビアもいる。


「二人とも無事だったか」

「無事じゃないのはご主人様の方です」


 涙を堪えているシルビア。

 致命傷ではないとはいえ、血を流している姿を見せるのは彼女を苦しませる。


 ある程度回復させてもらうと立ち上がる。


「あの巨兵はどうした?」

「私たちだと倒すのは難しそうだからシルビアに運んでもらって回避した」


 道の真ん中で待ち伏せていた巨兵。

 左右は建物に挟まれているし、吹雪いている状況では建物を跳び越えるような跳躍は危険を伴う。だが、建物を無視できるシルビアにとって迂回するのは難しくなかった。そのままイリスを回収すると二人で氷神へ接近し、負傷する俺の姿を見てしまったため接近を止めて俺を助けにきた。


「状況は分かった。まずは、どうにかして――」

「伏せてください!」


 シルビアが倉庫の壁の向こうから感じる気配に気付いて叫ぶ。

 シルビアの感覚を信じて身を屈めると青い光が一直線に飛んで行く。倉庫へ侵入した穴、それに青い光が当たった壁。二つの場所から氷に覆われていき、倉庫全体へと広がっていく。


 このまま倉庫内にいるのはマズい。

 急いで倉庫から出ると上空に五角形の物体が浮かんでいるのが見える。吹雪の中にあって白く輝いているのが分かるほど美しい物体。ゆっくりと回転しながら中央部分をこちらへ向けている。


 そんな怪しい物体が10個。

 飛び交いながら中心から青い光を俺たちへ向かって放つ。

 後ろや横へ跳んで回避すると光の当たった場所に人ぐらいの大きさがある氷柱が生み出される。


 俺には6つ、シルビアとイリスには2つずつ。

 俺にだけ多いことから敵が俺を警戒していることが窺える。


 通りを飛び回りながら移動すると魔法を使用して高さが30メートルある氷の壁を生み出す。

 6つの浮遊物体が光を撃って凍らせようとしてくるが、氷を凍らせることはできないのか氷の壁に弾かれている。

 仕方なく迂回しようとする浮遊物体だったが、後ろにもイリスが出した氷の壁が生み出されたことで迂回することができなくなってしまった。イリスとシルビアへ攻撃していた4つも閉じ込められた。

 そのまま上から氷の壁で蓋をすると閉じ込めてしまう。


「気付いてくれて助かったよ」


 敵の攻撃を氷の壁を生み出すことで防御している内にイリスが凍らされないことに気付いた。


「それよりも随分と時間を稼がれたみたい」


 町の中央から大きな音が聞こえる。


「うそ……」


 音のする方を見たシルビアの表情が凍り付く。

 町を埋め尽くすほどギッシリと整列させられて行進する氷の兵士。千体を遥かに超える数万の軍勢だ。


『さて、このまま圧し潰してやろう』


 どこからともなく氷神の声が聞こえる。

 圧倒的な物量を以て潰す。これ以上に確実な方法はない。


「なあ、イリス。やっぱり、カンザスを壊すのはマズいかな?」

「……この状況を明確に説明して納得してもらうしかない、かな」


 答えてくれるイリスの表情が硬い。

 もちろん復興が必要なら手を貸すのは吝かではない。なにせ、これから俺の手によって壊されるのだから。


「俺、魔法はそんなに得意じゃないんだよな」


 迷宮主になる前は簡単な【土属性】魔法しか使用することができなかった。

 複数の属性、攻撃に使えるような魔法が使用できるようになったのは迷宮主になってから。この数年間で熟練度がそれなりに上昇したものの大雑把な使い方が目立つ。それも強力な魔法ほど荒くなる。


「【隕石落とし(メテオフォール)】」


 上空より落下する隕石。

 大きさは大きな屋敷程度しかないが、上空から落下した時の威力は凄まじく町を吹き飛ばせるぐらいの威力はある。


「……って、あんなの落ちてきたらわたしたちも無事では済まされませんよ!」

「大丈夫。私たちは【転移】で戻ればいいだけ」

「俺も、その方法を考えていたけど、そんなことをする必要はないみたいだ」


 下から何千個という人ほどの大きさがある氷柱が打ち上げられる。

 向かう先は隕石。隕石に比べれば氷柱の大きさは微々たるもの。両者を衝突させたところで破壊できる訳がない。


 だが、氷神の狙いは隕石の破壊ではない。

 微妙に角度を調整されて撃たれた氷柱。

 衝突した瞬間に砕け散ってしまうものの少しずつ外へとずらされて行っている。


『おそろしく強力な魔法ではある。じゃが、妾を怯えさせるほどの魔法では……』


 これでいい。

 相手は氷の神。何らかの方法で対処する可能性は最初から予想できた。けれども、最初から予想できたように隕石への対処に掛かり切りになっている。


「【炎竜の息吹(フレイムドラゴンブレス)】」


 手から炎を一直線に放つ。

 氷神から明確な命令を与えられていなかった氷の兵士たちは溶かされ、吹き飛ばされることで道を開けるしかなかった。


「行くぞ」


 二人を連れて一直線に駆け抜ける。

 途中に建物が障害物となっていたが、全て【炎竜の息吹(フレイムドラゴンブレス)】が吹き飛ばしている。


「邪魔だ」


 立ちはだかろうとした氷の兵士へ火球を投げる。

 炎に包まれた兵士は燃えていることも気にすることなく俺たちへと向かおうとしてきたが、一歩足を踏み進めた直後に爆発され、周囲にいた氷の兵士も巻き込んで粉々になる。


 氷の兵士には意思がない。

 さらに痛みや恐怖を感じる心もないから危険な場所へも突っ込んで行くことができる。

 今は『俺たちを圧し潰す』という氷神の命令に逃げることもなく従っている。


「そんな密集していていいのかな?」


 火球が有効なのは証明された。

 あとは規模を大きくして使用するだけ。


 30個の火球を氷の兵士が密集している場所へと投げる。兵士の形をした氷が一瞬にして爆発して溶かされることによって水蒸気が発生する。

 さらに俺自身も【スモーク】の魔法を発動させて体を覆い隠せるほどの濃い煙を生み出す。


『むぅ』


 氷神も状況に気付いた。

 だが、タイミングの悪いことにちょうど外へ弾き飛ばしていた隕石が町の外へ落ちる。その衝撃によって煙が巻き上げられて何も見えなくなる。


 ――さて、そっちは俺たちの位置が分かるかな。


 倉庫に隠れている俺たちへ攻撃してきた。しかし、死角からの攻撃だったにもかかわらず、見当違いな場所へ攻撃してしまっていた。おかげで狙われていることを知らせることになってしまった。

 そのことから氷神には、倉庫内にいることまでは分かっていても、倉庫内のどこにいるのかまでは分からない、と予想した。


 氷神は視覚に頼っている。

 ただし、離れた場所の状況を把握することができることから氷を利用して生み出した物に視覚のようなものが宿っていて状況を把握することができる、そういった能力があるのは間違いない。

 無数に目を持っているのと同じようなものだ。

 しかし、こうして視覚を潰されてしまっては何も知ることができない。


 タタッ、タタッ――!


『そこか!』


 足音が聞こえた方へと指を向けて青い光を放つ。

 だが、残念ながら地面に当たって氷柱を生み出すだけに留まる。

 足音は、シルビアとイリスがわざと出している。目を奪われてしまった氷神は、慣れない耳に頼って相手の位置を探るしかない。


 対して俺たちには氷神の位置が丸分かり。

 今の攻撃で攻撃の起点を探ることができるし、気配を読み取って何も見えない状況でもシルビアが正確な位置を把握してくれているおかげで特定することができる。


 タン!

 態とイリスが音を立てる。

 その音を狙っていたように氷神が光を放つものの、放たれることを狙っていたイリスが光を剣で斬る。


 絶好の位置だ。

 イリスが注意を向けてくれたおかげで氷神の背後へ易々と移動することができた。


「【爆発(エクスプロージョン)】」


 後ろから氷神の頭部を掴むと手の中にあるものを爆発させる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ