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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第6章 没落貴族
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第7話 盗賊捕縛

『……ということが見張り中にあったんだ』


 メリッサさんに色々とバレた後で詰め寄られていたテックさんだが、やんわりとやり過ごすと馬車の方に戻ってしまった。

 さすがに親代わり同然の人物に対して失礼な態度を取るわけにもいかず、すぐにテントの方へ戻って行った。


 夜が明けると朝食や撤収の準備を終え、王都へ向けて再び出発した。

 この調子なら、10日掛からずに着けそうである。


 護衛の間は暇だから、ということで見張り中にあった出来事を念話で仲間内に知らせていた。配置は昨日と同じなので、言葉にして会話をするとなると大声を出す必要があったが、念話に距離は関係ない。こういう時には便利な能力だ。


『ご主人様、それはちょっと……』

『迂闊』

『見張りなんだから近付く人の気配には気付けないと』


 シルビア、アイラ、迷宮核が思ったことを口にする。

 おい、寝ていた2人はともかく、寝る必要がないどころか俺を介して一緒に話を聞いていたお前に何かを言う資格はないからな。


『それで、今日は護衛に立たれないんですね』


 そう、護衛として馬車の傍に立っているのは俺たちパーティメンバーだけ。

 メリッサさんは馬車の中で膝を抱えて座っている。

 彼女は依頼を受けた護衛、というわけではないので依頼主と一緒に馬車の中にいても問題ない。


『ま、昨日あんなことがあったんだから落ち込むのも仕方ない』


 故郷を買い取ることを目標に生きてきたというのに自分では無理だった。

 テックさんも王都に戻ったらそれとなく伝えて、せっかくある魔法使いの才を生かせる仕事に就いてほしかったらしい。


『それで、どうするんですか?』

『え、どうにかするのか?』


 正直言って俺にどうにかできるような問題とは思えない。

 父親を追い詰めた犯人を捜す手伝いをしてほしい、魔剣の破壊を手伝ってほしいなどという話とは次元が違う。


『そうね。あたしたち全員、商売とか行政には疎いからアドバイスができるわけでもないし、眷属にしたところでステータスが上昇してスキルを手に入れられるぐらいで今回の話に役立つとは思えないし』


 アイラが言うように何か力に成れるとは思えない。


『とにかく俺たちにできるのは彼らをしっかりと王都まで安全に連れて行くことだけだ』

『そういうことですので、わたしは馬車の方に伝えてきますね』

『ああ、頼む』

『え、何があったの?』


 アイラは分かっていないようだったが、シルビアは初日にあった失態からしっかりと気を引き締め直して警戒していたので気付くことができたようだ。


 このまま馬車が進むと正面に6人の人が待ち構えている。


 俺の場合は飛ばしている鷲が気付いてくれた。

 上から見下ろす限りでは盗賊のように見えるが、人を見た目だけで判断してはいけない。もしかしたら馬車が通り掛かるのを待っている手助けが必要な人かもしれない。


「すみません。このまま数分ほど進むと盗賊が待ち構えているようなんですけど、どうしますか?」

「盗賊、ですか!?」

「人数は分かるのですか?」


 さすがに馬車の中に居続けるわけにはいかないと思ったのかメリッサさんも杖を持って立ち上がった。


「はい。正面に6人、左右に7人ずつです」


 あれ、正面だけじゃないのか?

 完全に見落としていた。


「全部で20人ですか、ここは迂回してでも逃げた方がよろしいでしょう」

「そうですね」


 さすがに20人もの盗賊に囲まれてしまっては強力な魔法があっても守り切るのは難しいらしい。

 だが、そこに待ったを掛けたのがシルビアだ。


「いえ、盗賊に道を譲るなんて許せません。せっかくだから殲滅してしまいましょう」

「殲滅!?」

「相手は20人もいるのよ!」


 20人か。

 一般人からすれば20人()いるように思えるのだろうが、俺たちには20人しか(・・)いないように思える。


「大丈夫ですよね、マルスさん」

「ええ、大丈夫ですよ」


 全く問題ない。



 ☆ ☆ ☆



「おい、命が惜しかったら馬車を置いてどっかに行きな」


 数分ほど馬車を走らせると街道の正面を6人の男たちが塞いできた。

 男たちは盗賊のように汚れた服を着ており、手には剣が握られており、腰にはナイフを差していた。

 見た目は完全に盗賊。だけど、なんか違和感があるんだよな。


「お断りします。わたしたちは護衛として雇われています。盗賊のような卑劣な方々から逃げるわけにはいきません」

「どうやら、状況が分かっていないようだな」


 先頭にいた男が笑みを浮かべると馬車を取り囲むように左右から7人ずつ男たちが現れる。

 すっかり20人の盗賊に囲まれてしまった。


「へへっ、女の方が多いじゃねぇか」

「おい、荷物だけと言わずに女を摘まみ食いしてもいいんじゃねぇか」

「そうだよな。いっつも上の連中ばかり良い想いをしやがって」


 盗賊たちがニヤニヤした表情で俺たち……シルビアたちを見ている。

 眷属だからと言って自分の所有物だと主張するつもりはないが、仲間にこんな視線を向けられるとムカつくな。


「最後に確認です。あなたたちは盗賊ですね?」

「ああ、そうだぜ」

「では、言質は頂きましたので殲滅させていただきます」

「え……?」


 シルビアと会話していた1番近くにいた盗賊の首が飛ぶ。

 ここからは問答無用だ。


『というわけでシルビアは正面にいる6人……いや、もう5人か』

『はい』

『アイラは右側にいる奴を倒せ。2人とも全力で、殺すつもりで倒せ』

『りょーかい』

『彼らの視線が気持ち悪かったので合法的に殺せるというのはいいですね』


 シルビアはそのまま駆け抜けると盗賊たちの首を次から次へと斬り飛ばしていく。


 アイラは、防御しようとした盗賊の剣ごと盗賊の体を両断していく。


「うん、こんな感じかな」


 どうやら『明鏡止水』を使用していたらしく、剣や胸当てが全く意味を成していない。それにスキルの使用にも慣れてきたらしく、7人に対して3人にしか成功していないが、失敗した4人についてはステータス任せに斬っている。

 相手が弱いからスキルを使っても使っていなくても変わらないな。


 一方、俺は7人の盗賊に近付き,手で軽く触れると『パラライズ』を発動させて盗賊たちを次々と麻痺させていく。

 いくら相手が殺しても問題のない盗賊だとしても本拠地を聞き出したりする必要があるため生かす必要が何人かにある。

 ただ、手加減した状態での無力化というのにシルビアとアイラでは不安があったので2人には手加減なしで盗賊を倒してもらった。危険な役回りは俺が引き受ければ十分である。


 そうして、20人の盗賊を倒すのに1分も掛からなかった。

 ただし、問題はある。


「あ~、これはダメだな」


 俺が使用した『迷宮魔法:麻痺(パラライズ)』だが、人間相手に使うには強力過ぎたらしく体が全く動かせない状態になっていた。そんな状態でも意識はあるので視線だけで睨み付けてくる。全く怖くない。


 けど、これは困った。


「尋問しようにも麻痺していて喋れないんじゃ意味ないな」

「では、近くにある街で犯罪奴隷として売り飛ばすのがいいのではないですか?」

「そういえばハーフェルが近くにありましたね」


 俺が前に護衛依頼を受けた時はハーフェルの街までだった。


「問題は、どうやって彼らを連れて行くかですね」


 麻痺していては歩かせることもできない。


「それなら大丈夫ですよ」


 収納リングから長いロープを取り出すと盗賊たちの体を縛り上げる。


「では、行きましょうか」


 そのままロープの先端を持って歩き出すと盗賊たちがズルズルと引き摺られていく。

 7人もの人間を引っ張るなど相当な力がいるはずだが、俺のステータスなら問題ない。引き摺られることによって彼らの体が傷つくことになるだろうが、盗賊行為まで働いておいてシルビアたちが相手にした盗賊たちとは違い、命があるだけでも感謝してほしいところである。

 犯罪者の状態を気遣う気など全くない。


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