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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第32章 逃亡王族
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第36話 レジナルド王子-処罰-

「残念ながら生かしておくことはできない」


 新たな王族として前の王族には消えてもらわなければならない。


「ただし、問題がある」

「問題?」

「大きくは二つだな」


 一つは公にはレジナルド王子が既に処刑されていること。今さら本物のレジナルド王子が見つかったので処刑します、では王家の恥になる。

 そして、もう一つの方が厄介だった。


「クーデターを成功させた直後は、世間体を優先させて処刑を決行したが、この子には確かめなければならないことがある」


 消えた金の在り処。

 不正に関与していた者。

 他にも確認しなければならないことはたくさんある。


「レジナルド王子」

「……」

「あなたも王族だったなら、最期ぐらい潔く話してください」


 カーティスがゆっくりと諭すように言う。

 だが、その上から目線がレジナルドは気に入らなかった。


「悪いが、私は侯爵も、お前みたいな子供も王として認めるつもりはない。私が、私だけが王位継承者の中で上手く国を治めることができたんだ。私以外の者が王になることなど絶対に認めない!」


 目の前にいる10歳の子供を睨み付けるレジナルド。

 大人から睨み付けられているが、カーティスに退く様子は見られない。


「どんな手段を用いることになろうと絶対に口を割らせてもらう」

「無駄なことを……」


 これから拷問が行われることになるだろう。

 そして、必要な情報を引き出すことに成功した暁には処分されることとなる。処刑ではなく処分。処刑することができない存在であるため内々に処分することとなる。


「あの、結局最後には殺すことになるんですよね」

「そうだな」

「なら、尋問も俺に任せてみませんか?」

「いいのか?」

「もちろんです。報酬が貰えるなら許容範囲内で何でもやりますよ」


 依頼されていたのはレジナルド王子を捕えるところまで。

 尋問まで行うなら別料金が発生することになる。


「白金貨を50枚用意しよう」

「随分と奮発されますね」

「こいつから必要な情報が得られれば、その程度の金なら回収することができる」


 金貨の10倍の価値がある白金貨。

 金貨500枚分の報酬を出して貰えるなら十分だ。


「頼む」

「任せてください。確実に必要な情報を手に入れます」


 床に座ったレジナルドの前に立つ。


「なん……」


 自分に影が差したことを不審に思うレジナルド。

 その視線が俺の姿を全て捉える前に振り下ろされた斧によってレジナルドの首が斬り飛ばされる。


『こんなものでよろしいかな』

「ご苦労さん」


 【召喚(サモン)】によって喚び出された不死帝王(アンデッドエンペラー)

 アンデッドエンペラーの力がレジナルドだった死体を包み込む。すると、アンデッドへと成り果てるレジナルド。アンデッドになってしまえば、アンデッドエンペラーを介して俺の命令に従わなくてはならなくなる。


 あまり人が死ぬような結果は望んでいない。しかし、レジナルドはどれだけ足掻いたところで死を免れることができない存在。尋問に無駄な時間を費やすより効果的な方法だ。


「……」


 おっと、アンデッドエンペラーの放つ存在感に口をパクパクさせている少年がいる。


『少々、子供にはキツイ光景だったかな』

「仕方ない。人の首が撥ね飛ばされるところなんてそうそう見ないからな」

『では、さっさと帰らせてもらうことにしよう』


 レジナルドには既に人からの質問には全て正直に答えるよう命令を下している。

 その際、俺たちに関することは絶対に口外しないよう命令されているため、どれだけの拷問を受けてもレジナルドから漏れることはない。


「わ、私は……」


 もう拘束しておく必要もない。

 拘束を解くと両手を首元へと運んでいく。


「首が繋がっている? いや、でも……」

「あんたは死んださ」

「……!?」


 その証拠に腕を斬り飛ばしても血が流れることはない。メリッサに回復魔法を掛けてもらって斬り飛ばされた腕を接合すると先ほどまでと同じように動かすことができた。


「状況は理解できたな」

「このような状態にして……! 私には、王としてメティス王国の民を導く、という重大な責務がある。それを、このような……!」

「悪いけど、あんたにそんなことを望んでいない」

「な、に?」

「人は環境さえ整えてやれば、勝手に繁栄するし、今の状況を作ってくれた王に感謝して忠誠を誓うようになる」


 だが、レジナルドには己が王となる為に様々なものを犠牲にしてきた。

 それで被害に遭うのは無辜の民だ。


「そうだな。若い頃は、王になることに対して躍起になっていた私に言えた義理ではないが、民は王にそこまでのことを求めていない。人々が平和に暮らせる環境を作る、それが王の役割だ」

「クーデターを起こした人がよく言う……」

「それは私なりのケジメだ。お前たちは、私にとって孫も同然。ペッシュがラグウェイ家を始めとした多くの貴族にしてきたことを考えると胸が痛い。それに後から調べて分かったことだが、レジナルドも裏では色々とやっていたらしいな」

「そんなの王族なら……いや、貴族なら誰もがやっていることだ!」


 実際、ファールシーズ公爵も贔屓にしている商会があった。

 その商会は侯爵と親戚関係にある商会で無碍にできるような要請ではなかったため受け入れるしかなかった。


「私も似たようなことはしてきた。だが、お前たちは自分の『王になりたい』という欲望を叶える為にどれだけの人の人生を犠牲にしてきた? 切り捨てるのも為政者としては仕方ない。だが、切り捨てる時にお前たちは迷ったか?」


 公爵が言うように第2王子も第3王子も『必要なことだから』という理由だけで切り捨てることに対して何の躊躇いも見せていなかった。


「私たちは重要な事を決める立場にある。それは、多くの人の人生を左右することもある。だからこそ、私たちは行動の一つ一つに色々な人のことを考えて行動しなければならない。だが、お前は野心だけで動いていた。行動力だけは素晴らしいところがあるが、それでは王として認められない」


 王になることばかりに固執していた第2王子と第3王子。

 しかし、最も大切なことは王になって『何を成し遂げたいのか?』ということだ。

 最初から王族という立場を得ていた彼らには下々のことが何も分かっていないどころか、自分の野望を叶える為の駒程度にしか考えられていなかった。


「今さら、そんなことを言われたところで……」

「そうだな。もっと早い段階で言えばよかった」


 カーティスぐらい幼い年齢で諭すことができていればよかった。

 そういった事情を迷宮核も分かっていたからこそカーティスを新たな王に選ぶことにした。


「さて、捕えてくれたことは嬉しいところだが、レジナルドを人目に触れさせる訳にはいかない。かと言って、誰の目にも触れない場所など……」

「ちょうどいい場所がありますよ」


 レジナルド、さらに侯爵とカーティスを連れて転移する。

 行き先は――王都の地下にある迷宮の最下層。ここなら誰かが来ることはない。


『どうやら私の依頼は達成されたようですね』


 迷宮核の少女が姿を現す。


「ただ、生き延びた後でも色々なことをやっていた。捕えても騒ぎが起こるのは間違いないぞ」

『それはこちらで対処します。面倒な者を捕えてくれただけで感謝します』


 カーティスは現迷宮主。

 公爵も孫が不幸になるようなことはしない。

 そして、レジナルドに至っては俺の支配下にあるため迷宮核に触れたところで新たな迷宮主になることはない。

 何よりも、迷宮核が攻略を認めないだろう。


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